イギリスの女性医師、キャリアアップの実態

提供元:ケアネット

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公開日:2009/06/26

 



イギリスの女性医師は男性医師に比べて、キャリアアップに時間がかかっている実態が報告された。オックスフォード大学公衆衛生部門UK Medical Careers Research GroupのKathryn S Taylor氏らによる調査で明らかになったもので、この状況は、女性だからという直接的な「性差別」によるものではなく、「休職期間がある」ことの反映であることも明らかにされた。これまで、女性医師キャリアに関する報告はアメリカ発のものばかりで、イギリスでは「女性医師が少ないからだ」と言われていたにすぎず、実態とキャリア障壁のエビデンスを求めることを目的に行ったという。詳細は、BMJ誌2009年6月13日号(オンライン版2009年6月3日号)で発表されている。

51歳、40歳、35歳の開業医・勤務医にアンケート




Taylor氏らは、医師のキャリアップについて、NHS下の一般開業医および病院勤務医での、男性医師と女性医師の比較を試みた。調査は、イギリス全国のメディカルスクールを対象に、1977年、1988年、1993年の卒業生(調査時51歳、40歳、35歳)に郵送アンケート方式で行われた。内容は、これまでに獲得したキャリアステータス(一般開業医はprincipal、病院勤務医は医長クラスのconsultant)に関することや、医師になって以来ずっと働き続けているか(フルタイム勤務)、また1988年と1993年卒業生については16歳未満の子どもが何人いるか、といった質問も行われた。

回答率は、68%(7,012/10,344人)。男女の回答率の内訳は、男性医師86.7%(3,359/3,876人)、女性医師84.8%(2,660/3,136人)だった。

女性医師のキャリアステータス獲得は、働き続けてきたか否かで異なる




一般開業医でprincipalを獲得した人(1977、1988年卒業者)の割合は、男性医師97%(1,208/1,243人)、女性医師87%(1,083/1,248人)だった。しかしフルタイム勤務principalの人だけを見ると、男女とも割合は同等で99%(男:1,023/1,038人、女:264/267人)だった。

また、principal獲得までに要した卒後研修期間(中央値)は、男性医師5.8年、女性医師6.8年だったが、こちらもフルタイム勤務者だけの回答では、男女差はなく、ともに5.6年となっている。

勤務医(1977、1988年卒業者)では、consultantを獲得した男性医師の割合は96%(1,293/1347人)、これに対して女性医師は75%(559/748人)だった。しかし、女性医師でも、フルタイム勤務者は92%(276/299人)であり、非フルタイム勤務者の場合は67%(277/416人)にとどまっていた。

また、同ポストに初めて就くまでに要した期間は、男性医師11.7年、女性医師12.3年だったが、フルタイム勤務者だけを見ると、男性医師11.7年、女性医師11.3年となっていた。

柔軟なキャリア環境の整備が目下の課題




そのほか分析から、女性医師に関して、一般開業医に休職経験のある人が多く、フルタイム勤務者で一般開業医になった人は少ない傾向がうかがえた。また、休職経験がある人は、外科や麻酔科には少ないこともうかがえた。しかし一方では、フルタイム勤務者でも、外科で働いている人は少なかった。

Taylor氏は「現在最も重要なのは、休職しながらも働くことを望む女性医師が、柔軟にキャリアを積める環境を整備することだ」と結論している。