一般医の診断により一過性脳虚血(TIA)や軽度脳卒中が疑われた場合、専門医による治療が即刻開始されれば、受診待ちをするよりも80%、その後の脳卒中発症を抑制しうることが明らかになった。EXPRESS(Early use of Existing Preventive Strategies for Stroke)研究グループを代表してPeter M Rothwell氏らが、Lancet誌10月20日号で報告した。
TIA・軽度脳卒中に対する早期介入の有用性を検討
EXPRESS研究は、TIAもしくは軽度脳卒中に対する異なる治療方針を、二期に分けて比較した前向き研究である。
まず第一期(2002年4月より2004年9月)は、一般医でTIA・軽度脳卒中と診断された患者は、即刻入院の必要がない場合、本研究のために立ち上げられた専門クリニックに紹介されるが、予約制のため診察まで3日間(中央値)の待機が必要となった。第二期(2004年10月より2007年3月)では、専門クリニックを予約なしで即日受診できるようにした(週末休診)。その結果、待機期間は1日未満(中央値)となった(p<0.0001)。
薬物治療の内容は両期とも同一だが、第二期のみ、専門クリニックにおいてTIA・軽度脳卒中と診断された患者は、その場でアスピリン300mgを服用した。またクロピドグレルを既に服用している患者では用量を300mgに引き上げた(TIA・軽度脳卒中直後で高リスクなため)。
第一期(310例)と第二期(281例)の患者背景は、第二期でスタチン服用例の若干の増加(20% vs 32%、p=0.002)以外、有意差はなかった。
脳卒中発症が80%減少
脳卒中発症率を比較すると、第二期では第一期に比べ著明な減少が認められた。すなわち、TIA・軽度脳卒中が疑われてから90日以内の脳卒中発症率は、第一期の10.3%に対し第二期では2.1%、相対的に80%の有意(p=0.0001)な減少となった。
脳卒中発生率曲線を見ると、第一期の脳卒中発症は一般医受診後5日前後に集中しており、早期治療の重要性は明らかだった。著者らは、早期のアスピリン300mg服用が脳卒中減少の大きな要因ではないかと推論している。
(宇津貴史:医学レポーター)