2型糖尿病に対する標準的な血糖降下薬治療にrosiglitazoneを追加する方法は、全体として心血管リスクを増大させないものの、心不全および女性の骨折のリスクを有意に増大させることが、イギリスNewcastle糖尿病センターのPhilip D Home氏らが実施した無作為化試験(RECORD)で明らかとなった。2型糖尿病の治療における経口血糖降下薬の効果には限界があるため、一般に併用療法が行われる。インスリン抵抗性改善薬であるrosiglitazone は、ヨーロッパでは2000年に同じチアゾリジンジオン系薬剤であるピオグリタゾン(商品名:アクトス)とともにメトホルミンやスルホニル尿素薬との併用投与が承認されている。Lancet誌2009年6月20日号(オンライン版2009年6月5日号)掲載の報告。
rosiglitazone追加による心血管リスクを評価
RECORDの研究グループは、rosiglitazoneとメトホルミンあるいはスルホニル尿素薬を併用する治療法と、メトホルミン+スルホニル尿素薬併用療法の心血管リスクを比較する非盲検の無作為化非劣性試験を実施した。フォローアップ期間は5~7年であった。
メトホルミンあるいはスルホニル尿素薬の投与を受けている2型糖尿病患者4,447例(平均HbA1c:7.9%)が登録され、rosiglitazoneを追加投与する群(2,220例、メトホルミン+rosiglitazone:1,117例、スルホニル尿素薬+rosiglitazone:1,103例)あるいはメトホルミンとスルホニル尿素薬を併用投与する群(対照群:2,227例)に無作為に割り付けられた。
主要評価項目は心血管疾患による入院あるいは心血管死、ハザード比の非劣性限界値は1.20とした。
心血管リスクの非劣性を確認、心不全と女性の骨折が増加、心筋梗塞は非決定的
フォローアップ期間平均5.5年の時点でエンドポイントを発現した症例は、rosiglitazone追加群が321例、対照群は323例であり、ハザード比は0.99(95%信頼区間:0.85~1.16)と非劣性の基準を満たした。
心血管死のハザード比は0.84(95%信頼区間:0.59~1.18)、脳卒中は0.72(同:0.49~1.06)といずれもrosiglitazone追加群の非劣性を示したが、心筋梗塞は1.14(同:0.80~1.63)と非劣性の基準に達しなかった。
入院あるいは死亡の原因となった心不全は、rosiglitazone追加群の61例、対照群の29例が発症し、ハザード比は2.10(同:1.35~3.27)、1,000人年当たりのリスク差は2.6(同:1.1~4.1)であり、rosiglitazone追加群でリスクが有意に増大した。
上肢および下肢遠位部骨折が、おもにrosiglitazone追加群の女性で増加していた。5年経過時の平均HbA1cは、対照群よりもrosiglitazone追加群で低下していた。
著者は、「2型糖尿病の治療として、血糖降下薬にrosiglitazoneを追加する方法は、心不全および女性の骨折のリスクを増大させることが確認された。心筋梗塞に及ぼす影響は決定的ではないが、全体としてrosiglitazoneは標準的な血糖降下薬に比べて心血管疾患や心血管死の発症リスクを増大させないことが明らかとなった」と結論している。
(菅野守:医学ライター)