2型糖尿病発病前の、糖代謝変化のタイミングについては、ほとんどわかっていない。ロンドン大学の疫学・公衆衛生部門のAdam G Tabak氏らは、イギリスでのWhitehall IIスタディ参加者のデータから、2型糖尿病を発病した人の空腹時・食後血糖、インスリン抵抗性、インスリン分泌に関する変化を追跡した結果、発症前3-6年に特徴的な変化が表れていることをつかんだと報告した。Lancet誌2009年6月27日号(オンライン版2009年6月8日号)掲載より。
イギリス人約6千人の、発病前13年間の糖代謝の軌跡を調査
Whitehall IIスタディは、1985年に始まった、イギリス人の健康と疾患の社会経済的傾向を探る経時的研究。Tabak氏らは、その参加者(イギリス公務員から成る職業コホート)で、基線で真性糖尿病ではなかった6,538例(男性71%、91%が白人)のデータを分析した。
追跡調査期間中央値9.7年の間に、糖尿病と診断されたのは505例(経口ブドウ糖負荷試験ベースで49.1%)だった。これら糖尿病患者群と非糖尿病患者群の、診断前13年間、もしくは追跡調査終了時点までの、空腹時および食後2時間の血糖値、インスリン抵抗性指数(HOMA-R)、HOMAβ細胞機能指数を調べた。
急激な値の変化が
年齢、性、民族性を補正した解析モデルで、非患者群は追跡調査の間、インスリン分泌を除きすべての代謝値がほぼ横ばいに直線的に変動していた。
一方、患者群は、空腹時血糖値が直線的に診断3年前まで上昇し(3年前:5.79mmol/L)、その後急激に診断時まで上昇が続いていた(診断時:7.40mmol/L)。
食後2時間血糖値も、診断3年前(7.60mmol/L)から急激に上昇(診断時:11.90mmol/L)していた。
インスリン感受性は、診断5年前から急激な低下が始まっていた(診断時86.7%まで減少)。
HOMAβ細胞機能指数は、診断4年前(85.0%)と3年前(92.6%)にいったん増加し、その後は一転して診断時(62.4%)まで減少していた。