米国ワシントン大学のWilliam J. Ehlenbach氏らが、1992年から2005年にかけて、米国の病院内で院内心肺蘇生法(CPR)を行った65歳以上の人約43万4,000人について調査を行った結果、退院時生存率は改善していないことが明らかになった。なかでも、黒人は白人に比べ、院内CPR後の同生存率が23.6%も低率だった。院内CPR後の生存率の傾向についての研究結果は珍しいという。NEJM誌2009年7月1日号掲載より。
CPR後の退院時生存率は18.3%、14年間で有意な変化なし
Ehlenbach氏らは、米国高齢者向け公的医療保険であるメディケア出来高払い制プランへの加入者データを元に、1992~2005年に院内CPRを行った43万3,985人について調べた。
そのうち、生存して退院したのは18.3%(95%信頼区間:18.2~18.5)だった。この値は1992~2005年にかけて、有意な変化はしていなかった(p=0.57)。
人種別で見ると、黒人の退院時生存率は白人よりも低く、退院時生存に関する補正後オッズ比は白人よりも23.6%(95%信頼区間:21.2~25.9)低かった。また、男性、高齢者、合併症の多い人、高度介護施設(skilled-nursing facility)に入所していて入院した人の同生存率が低かった。
CPR実施率は、1,000入院患者当たり2.73件、人種別では黒人とその他の非白人の実施率が、白人よりも有意に高率だった。
院内死亡に占める院内CPR後の死亡割合は37%増加
また病院内で死亡した人のうち院内CPRを受けた人の割合は、1992年の3.8%から、2005年の5.2%へと、約37%増加していた(p<0.001)。
なお研究グループは、黒人のCPR後生存率が低い理由の一つとして、黒人が入院する病院の院内CPR後生存率が低い傾向にあることが関係しているのではないかと考察している。
(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)