米国心胸外科医に対する最近の調査で、手術中に偶然発見された卵円孔開存(PFO)を治療するために、手術予定を変更する可能性があることが示されている。これを受け、米国クリーブランドクリニック心血管部門循環器科のRichard A. Krasuski氏らは、術中にPFOが発見される頻度はどれくらいなのか、また転帰について調査を行った。JAMA誌2009年7月15日号より。
術中PFOが診断されたケースは17%
Krasuski氏らは、1995~2006年の間に、クリーブランドクリニック、クリーブランド、またはオハイオで、術前の診断なくPFOか心房中隔欠損症の治療を受けた患者1万3,092例の、手術時の経食道心エコー、および退院時まで前向きに集められた手術後のアウトカムを検討した。
主要転帰は、全原因院内死亡率と脳卒中の発生率。副次転帰は、入院期間、ICUにいた期間、人工心肺装置の装着期間だった。
術中PFOが診断されたケースは、スタディ集団のうち2,277例(17%)だった。脳卒中リスクは、術中PFO有無にかかわらず同等だった。
PFO有り群vs. 無し群(傾向補正後)の比較で、患者の院内死亡率は3.4% vs 2.6%(P=0.11)、術後脳卒中発生率は2.3% vs 2.3%(P=0.84)だった。
PFOの治療が行われたのは、639例(28%)だった。医師は、患者が若いほど治療を行う傾向が見られ、治療 vs. 未治療患者の年齢比は、61.1歳(SD:14) vs. 64.4歳(同13)だった(P<0.001)。手術手技の傾向については、僧帽弁手術が51%、これに対して三尖弁手術は32%だった(P<0.001)。患者の病歴に関する違いの傾向については、一過性脳虚血発作(TIA)vs. 脳卒中が、16% vs 10%だった(P<0.001)。
PFO治療を受けた患者の術後脳卒中発生は、受けなかった患者の2.47倍
術後脳卒中発生率は、PFOの治療を受けた患者(2.8%)が、受けなかった患者(1.2%)の2.47倍(95%信頼区間:1.02~6.00)に上った。
長期転帰の解析で、PFO治療を受けることと生存率とに関連は認められないことが確認された。
Krasuski氏は、「術中のPFOが診断されるケースはごく一般的なことである。そしてPFOが見つかったからといって、術後のリスクの高まりおよび術中死亡率を増大することは関連しないことが明らかになった。術中PFO処置は、長期生存とは関連がなく、むしろ術後脳卒中を増大する可能性がある」と結論している。
(朝田哲明:医療ライター)