閉経後女性に対するホルモン療法は、剤型、レジメン、投与方法にかかわらず、卵巣がんリスクが増大することが、デンマーク、コペンハーゲン大学婦人科クリニックのLina Steinrud Morch氏らによって明らかにされた。これまでも同関係性は言われていたが、異なるホルモン療法間でのリスク評価は行われていなかった。JAMA誌2009年7月15日号より。
1995~2005年にわたり、50~79歳デンマーク女性91万人を前向きに追跡評価
Morch氏らは、1995~2005年にわたって、50~79歳のデンマークの全女性を対象とする、前向きコホート研究で評価を行った。
評価対象となったのは、ホルモン感受性が高いがんの病歴、あるいは両側卵巣摘出歴のない女性90万9,946例。
処方データは、National Register of Medicinal Product Statisticsから最新情報を集め、卵巣がん発生率データは、National Cancer Register and Pathology Registerを参照した。交絡因子と効果修飾因子に関する情報は、他のレジスター情報を参照。被験者がホルモン療法を受けた、時間依存的な量は、5年単位でポアソン回帰分析を用いて解析された。
現在受けている人の卵巣がんリスク、受けていない人の1.38倍
平均8.0年の追跡期間に、女性730万人・年のうち、卵巣がんが見つかった人は3,068例、上皮がんは2,681例だった。
ホルモン療法をまったく受けたことのない女性との比較で、現在ホルモン療法の投与を受けている人の卵巣がん発生率は、1.38倍(95%信頼区間:1.26~1.51)、上皮がんは1.44倍(同:1.30~1.58)だった。
発生リスクは、ホルモン療法の投与を中止してから時間が経っている人ほど低下した。中止後0~2年:1.22倍(同:1.02~1.46)、2年超~4年:0.98倍(同:0.75~1.28)、4年超~6年:0.72倍(同:0.50~1.05)、6年超~:0.63倍(同:0.41~0.96)。
なお、現在もホルモン療法を受けている人の卵巣がんリスクは、ホルモン療法の違いや、期間の違いでの有意差は見られなかった。
1,000例年当たりの発生率は、現在服用中の人は0.52例、まったく受けていない人は0.40例、絶対差は0.12(95%信頼区間:0.01~0.17)だった。このことは、ホルモン療法を受けることで年間約8,300人に1人の割合で、卵巣がん発生が増えることを示す。
Morch氏は、「服用期間、剤型、エストロゲン投与量、レジメン、プロゲスチンのタイプ、投与ルートにかかわらず、ホルモン療法を受けることは、卵巣がんリスクの増大と関連していた」と報告をまとめている。
(朝田哲明:医療ライター)