イギリスで近年開発された心血管疾患リスク予測アルゴリズム「QRISK」のパフォーマンス評価が、Framinghamとの比較で行われた。QRISKの独立したパフォーマンス評価はこれまで行われていなかったという。オックスフォード大学医学統計センターのGary S Collins氏らが、イギリス保健省からの依頼で行ったもので、一般開業医(GP)の患者コホートを対象に、前向きオープンコホート研究にて、心血管疾患の10年リスクについて検討した。結果は「QRISKはFraminghamと比べて、心血管疾患10年予測リスクのパフォーマンスを改善した」と報告している。BMJ誌2009年7月18日号(オンライン版2009年7月7日号)掲載より。
35~74歳の540万人・年、心血管イベント43,990件を評価
本研究は、イングランドとウェールズの一般開業医診療所274施設から、患者107万人が参加し行われた。被験者は、1995年1月1日~2006年4月1日の間に登録された、35~74歳の540万人・年で、心血管イベントは43,990件だった。
主要評価項目は、カルテの記録から、最初に診断された心血管疾患(心筋梗塞、虚血性心疾患、脳卒中、一過性脳虚血発作)。
ハイリスク患者同定で、QRISKのほうが優れる
結果、判別と検定統計は、QRISKがより良好だった。QRISKでは、男性では偏差が32%、女性では37%を示した。Framinghamでは、それぞれ27%、31%だった。
QRISKは、男性で13%、女性で10%、予測リスクを過小したが、一方Framinghamでは、男性で32%、女性で10%、予測リスクが過大であった。
全体で患者85,010例(8%)が、Framinghamでのハイリスク分類から、QRISKでは低リスクに再分類された。そしてこれらの患者で心血管疾患10年リスクが観察されたのは、男性で17.5%(95%信頼区間:16.9%~18.1%)、女性で16.8%(同:15.7%~18.0%)だった。
男性の心血管疾患イベント出現率は、Framinghamでハイリスクと同定された患者では23.7例/1,000人年(同:23.2~24.1)、QRISKでハイリスクと同定された患者では30.5例/1,000人年(95%信頼区間:29.9~31.2)だった。
女性では、Framinghamでハイリスクと同定された患者では22.2例/1,000人年(同:21.4~23.0)、QRISKでハイリスクと同定された患者では26.7例/1,000人年(同:25.8~27.7)だった。
Collins氏は、「QRISK心血管疾患リスク因子は、心血管疾患のリスクが高い集団を同定することにおいては、長年にわたり定着しているFraminghamに対して、改善を提供するものである。QRISKは、10年心血管疾患リスクを過小に評価するが、それはFraminghamの過大評価予測よりも小さいものだ」と結論している。