一般医(GP)によるうつ病の診断では、有病率20%の場合、10%が正確に同定され65%が正しく除外診断されるが、10%が見逃され、15%が誤診されていることが、イギリスLeicester総合病院のAlex J Mitchell氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。うつ病は世界規模で保健医療システムの主要な負担となっており、GPのケアの多くがうつ病に当てられているという。Lancet誌2009年8月22日号(オンライン版2009年7月28日号)掲載の報告。
GPによるうつ病の単独診断の正確度を検討した試験のメタ解析
研究グループは、プライマリ・ケアの現場におけるGPによるルーチンのうつ病診断の真陽性、真陰性、偽陽性、偽陰性について評価した。
GPが単独で行ったうつ病診断の正確度(accuracy)について検討した118の試験のメタ解析を行った。これらのうち、構造化面接あるいは半構造化面接の明確なアウトカム基準を擁する41試験が解析の対象となった。
再評価で診断精度が改善する可能性も
41試験からプールされた5万371例について解析した。うつ病患者の47.3%がGPによって正確に同定され、33.6%はうつ病が疑われることを示唆する注意書きが記されていた。
19試験が確定診断および除外診断の双方の正確度の評価を行っており、重み付き感度(sensitivity)は50.1%、特異度(specificity)は81.3%であった。有病率21.9%における陽性予測値は42.0%、陰性予測値は85.8%であった。
この知見は、有病率を20%とした場合、プライマリ・ケアでは任意の患者100例のうち10例のうつ病患者が見逃され(偽陰性)、10例が同定される(真陽性)が、これより多い15例がうつ病と誤診される(偽陽性)ことを示唆する。
1回かぎりの評価や疑い例の記述に依拠するよりも、診察期間を3~12ヵ月延長したほうが正確度は改善された。
著者は、「GPは非うつ病の多くをうつ病の診断から除外することが可能だが、プライマリ・ケアにおける有病率が中等度の場合、誤診例の数が見逃し例よりも多いことが示唆される。1回のみの評価ではうつ病の約半数しか同定されておらず、うつ病が疑われる場合は再評価を行うことで診断精度が改善される可能性がある」と結論している。
また、「GPや他の専門家がケースマネージャーと共同作業を行うモデルを用いて繰り返し評価を実施すれば、誤診を低減させ、ケアの質の向上につながると考えられる」という。
(菅野守:医学ライター)