クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)治療薬 カナキヌマブ

提供元:ケアネット

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公開日:2011/11/22

 

2011年9月、カナキヌマブ(商品名:イラリス)がクリオピリン関連周期性症候群(CAPS)の適応を国内で初めて取得した。
この承認にあたり2011年11月8日(火)に「ノバルティスファーマ・メディアフォーラム」が開催された。演者の横田俊平氏(横浜市立大学大学院 医学研究科 発生成育小児医療学 教授)、および「CAPS患者・家族の会」代表を務める利根川聡氏の講演内容をレポートする。

待望の新薬の承認
本講演の冒頭において、横田氏は、「これまで、国内でCAPSに適応のある薬剤がなかった。そのため、患者さんは日々進行する辛い症状に耐え、そのご家族もまた、その姿を目の当たりにし、苦しみ続けてきた。そのような方々にとって、カナキヌマブは、まさに長い間待ち望まれてきた新薬である」と述べ、カナキヌマブが画期的な新薬であることを強調した。

CAPSとは炎症性サイトカインのひとつであるヒトインターロイキン(IL)-1βが過剰に産生することで、炎症反応が起こる慢性自己炎症疾患群である。生後すぐあるいは幼児期より発症し、生涯を通じて発疹、発熱、関節痛などが繰り返され、重篤な場合には、聴覚や視覚障害、骨や関節の変形、腎障害などを引き起こす可能性がある。国内では標準的治療ガイドラインがなく、また極めて稀な疾患であることから確定診断に至らない患者さんも多い1)~3)。現在、国内の患者数は30名程度とされるが、未診断の患者を含めると全国に100名くらいの患者がいると見込まれている。

投与間隔8週間で効果を発揮
カナキヌマブはヒトインターロイキン(IL)-1βに対する遺伝子組換えヒト免疫グロブリンG1(IgG1)モノクローナル抗体で8週毎に皮下投与する。国内における臨床試験では、投与24週以内に完全寛解した患者さんの割合は94.7%で、投与48週以内に完全寛解した割合は100%であった。

横田氏によれば、CAPS治療はこれまで、対症療法しかなかったが、カナキヌマブの登場により、CAPSの炎症症状を速やかに寛解させることができるようになったという。それは患者のQOLや予後の改善だけでなく、家族にとっても大変喜ばしいことであるとも述べた。

治療上の注意点
国内臨床試験における主な副作用は19例中12例(63.2%)に認められた。主な副作用は鼻咽頭炎3例(15.8%)、口内炎2例(10.5%)であった。横田氏はCAPS治療を行う上で感染症には注意が必要であると述べている。カナキヌマブの特性上、投与により発熱や炎症が治まるため、たとえば肺炎であるにも関わらず、肺炎と診断されないケースがあるという。また、世界的にみても、発売して間もない薬剤であるため、長期的な評価に乏しく、今後も慎重な経過観察が必要とも述べた。

CAPS患者・家族の会の存在
カナキヌマブは申請から8ヵ月間という短期間での承認に至ったが、その背景にはCAPS患者・家族の会の存在も大きい。CAPS患者・家族の会の代表を務める利根川聡氏のご息女は、1歳になる前にCAPSを発症し、全身の発疹、発熱、関節痛などにより、車いす生活を余儀なくされた。当時、CAPS治療は対症療法しかなかったため、ただひたすら苦しみに耐えるわが子の姿を見守る日々が続いた。しかし、カナキヌマブでの治療を受け、それらの症状は次第に寛解し、今では外で運動することができるまでになったという。利根川氏にとって何より嬉しかったことは毎日、苦しい表情をしていた我が子に笑顔が戻り、周囲の子供達と同じような生活が送れるようになったことだという。

しかし、高額な薬剤費が家族の経済的な負担になっているという課題も残されている。現在、CAPS患者・家族の会では、国による患者支援を受けるため、難病指定・特定疾患の認定を要望する活動を続けている。

まとめ
カナキヌマブは世界的にみても、発売されて間もない薬剤であるため、今後も慎重な経過観察が必要であるといえる。しかしながら、カナキヌマブの登場により、今後CAPS治療は大きく変わっていくであろう。これまでCAPS患者はCAPSと診断されず、施設を転々とするケースも多かったという。この薬剤の登場を契機に、より多くの医療関係者がCAPSという希少疾患に対する見識を深め、早期診断、早期治療を行っていくことも次の課題といえよう。

(ケアネット 鎌滝真次)