27の無作為化試験の個々データをメタ解析した結果、スタチンによる治療は、血管疾患の低リスク例でも、ベネフィットが大きいことが、Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboratorsにより発表された。5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の患者において、LDLコレステロール1 mmol / Lの低下は、5年間で1,000人あたり約11人の主要血管イベントの絶対的減少を招き、この利益は、スタチン療法の危険性を超えているとされた。現在のガイドラインは、概して、血管イベントリスクの低い患者は、LDL低下療法に適しているとはされていないが、研究グループは「今回の報告は、これらのガイドラインに再考の必要性があることを示唆している」と主張した。
対象は、スタチン治療をコントロールと比較した22試験(134,537例)およびスタチン間で比較した5試験(39,612例)を対象とし、それを、基線における5年主要冠動脈イベント発症リスクで5つのカテゴリに分けた(~5%, 5~10%、10~20%, 20~30%, 30%~)。主要血管イベントは、主要冠動脈イベント、脳卒中、冠動脈血行再建術の施行とした。
主な結果は以下のとおり。
・スタチンによるLDL低下は、年齢、性別、ベースラインLDLコレステロール値に関係なく、主要血管イベントを低下させた[1.0mmol/LあたりRR 0.79 (95%信頼区間 0.77-0.81)]。また、血管死、全死亡も低下した。
・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおける主要血管イベントの減少は、イベントリスクのより高いカテゴリにおけるイベント減少と同程度に大きかった。1mmol/LあたりRRは、低リスクカテゴリから高リスクに向け順に、0.62(95%信頼区間:0.47-0.81)、0.69 (0.60-0.79)、0.79 (0.74-0.85)、 0.81 (0.77-0.86)、0.79 (0.74-0.84)。傾向性p=0.04。
・イベントリスクの低い2つのカテゴリにおいて、主要冠動脈イベント[同 0.57(0.36-0.89)、0.61(0.50-0.74)]および冠動脈再建術[(同0.52(0.35-0.75)、0.63(0.51-0.79)]が有意に減少していた。
・脳卒中は、5年主要血管イベント発症リスクが10%未満の対象者でも、リスクの高いカテゴリのリスクリダクションに類似していた[同0.76(0.61-0.95)](傾向性p=0.3) 。
・スタチンによるLDLコレステロール低下において、がんの発症[同1.00(0.96-1.04)]がん死亡[(同0.99(0.93-1.06)]、血管以外の死亡に増加は認められなかった。
(ケアネット 鈴木 渉)