せん妄は超高齢者における認知症の強いリスク因子 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2012/10/02 せん妄は85歳以上の超高齢者(oldest-old)における認知症の強いリスク因子であることが、英国・ケンブリッジ大学のDavis氏らによる集団コホート研究の結果、報告された。著者は、「適正な集団をサンプルとした初の知見である」と本研究の成果を強調している。これまでも、せん妄は認知症のリスクであり、認知症患者においては衰弱を加速することが示唆されていたが、先行研究ではベースラインでの認知機能状態の把握が完全ではなかった。Brain 誌2012年9月号(オンライン版2012年8月9日号)の掲載報告。 Vantaa 85+試験と命名された本研究は、ベースラインで85歳以上であった553例(適格者の92%)を3、5、8、10年時点で評価した。せん妄が認知症発症および認知機能低下のリスク因子であること、およびせん妄既往の有無を問わずに認知症と認知症の神経病理学的マーカーとの関連を評価して病理学的レベルでのせん妄の影響についても調べた。脳剖検は被験者の52%で行った。 固定および無作為化効果回帰モデルを用いて全被験者を対象に、1)せん妄と認知症発症との関連、2)MMSE(Mini-Mental State Examination)スコア減少との関連を評価した。認知症と一般的な神経病理学的マーカーとの関連(アルツハイマー型、梗塞型、レビー小体型)モデルを作成し、せん妄の既往で階層化した。 主な結果は以下のとおり。 ・せん妄は、認知症発症リスクを増大した(オッズ比:8.7、95%CI:2.1~35)。 ・せん妄は、認知症重症度の増悪(同:3.1、1.5~6.3)、および全般的な認知機能スコアの低下とも関連した(同:2.8、1.4~5.5)。 ・試験集団全体で、せん妄のある人は、ない人よりもMMSEスコアが毎年1.0ポイント以上(95%CI:0.11~1.89)多く減少した。 ・認知症でせん妄歴のない高齢者(232例)は、すべての病理学的因子が認知症と有意に関連していた。 ・しかし、せん妄を有する認知症の高齢者(58例)は、認知症と病理学的マーカーとの関連は認められなかった。たとえば、神経原線維変化(Braak)ステージがより高いことと認知症との関連は、せん妄歴のない場合は有意であったが(オッズ比:2.0、95%CI:1.1~3.5、p=0.02)、せん妄歴がある場合は有意ではなかった(同:1.2、0.2~6.7、p=0.85)。 ・これらの傾向は、アミロイド斑、アポリポ蛋白ε、梗塞の存在、レビー小体に関連するα-synucleinopathy、および黒質におけるニューロン損失に関しても認められた。 関連医療ニュース ・認知症治療薬ガランタミン、ラット試験で喫煙欲求の軽減効果を確認 ・せん妄を有する高齢入院患者の死亡リスクは高い! ・せん妄の早期発見が可能に (ケアネット) 原著論文はこちら Davis DH et al. Brain. 2012 Sep;135(Pt 9):2809-16. Epub 2012 Aug 9. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] HPVワクチンのHPV16/HPV18感染予防効果、1回接種vs.2回接種/NEJM(2025/12/25) 乳がん検診の「高濃度乳房」通知、患者不安を助長する?/BMJ(2025/12/25) 血友病B遺伝子治療、いわゆる発売用量の5年間の成績(解説:長尾梓氏)(2025/12/25) 医師以外も投与可能な抗けいれん薬、スピジア点鼻液発売/アキュリスファーマ(2025/12/25) 早期アルツハイマー病に対するドナネマブの78週間二重盲検長期延長試験の結果(2025/12/25) わが国初の表皮水疱症の遺伝子治療薬への期待/Krystal Biotech(2025/12/25) 医師の奨学金、若手層ほど借入額増大で返済長期化か/医師1,000人アンケート(2025/12/25) 失敗しない理想的なクリスマスプレゼントとは(2025/12/25) 対象者全員の検診受診で肺がんによる死亡は大幅に回避可能(2025/12/25)