CLEAR!ジャーナル四天王|page:30

COVID-19急性呼吸不全への副腎皮質ステロイド薬投与について(解説:小林英夫氏)-1289

本論文はCOVID-19による急性呼吸不全症例に対するヒドロコルチゾンの治療効果を検討する目的で開始されたが、デキサメタゾンによるCOVID-19死亡率抑制効果が国際的に認証されたため、中断となった報告である。副腎皮質ステロイド薬の種類により治療効果に大きく差が生じる可能性は低いだろうと予想されるので、試験中止は妥当な選択であったのかもしれない。中断試験であるのでその結果解釈にバイアスが大きいが、プラセボ群との間で治療効果に有意差を検出できなかった点、投与群中約4割で効果を認めなかった点、には留意しておくべきであろう。副腎皮質ステロイド薬が治療効果をもたらさない症例が存在することはデキサメタゾンでも同様である。

遺伝子型ガイドのP2Y12阻害薬選択は本当に無効なのか?(解説:中川義久氏)-1288

血小板凝集では、周囲からの刺激に反応してADPが血小板から放出され、これが血小板のADP受容体P2Y12を介してさらなる血小板凝集の連鎖を引き起こす。この受容体へのADPの結合を阻害し、血小板の凝集と血栓の形成を抑制する代表的な薬剤がチエノピリジン系抗血小板薬である。BMSが導入された時期には、第1世代チエノピリジン系抗血小板薬のチクロピジンのみであった。現在では副作用の発生頻度がチクロピジンよりも少ない第2世代チエノピリジン系薬剤であるクロピドグレルが多く使用されている。クロピドグレルは肝臓のCYP2C19で代謝されて活性化するが、CYP2C19の遺伝子多型により薬効が異なる。代謝能の低い遺伝子型である機能喪失型(loss-of-function:LOF)を持つ患者では効きが弱い、すなわち血小板凝集が十分に抑制されない。プラスグレルは第3世代のチエノピリジン系薬剤である。チカグレロルはADP受容体阻害薬ではあるが、チエノピリジン系ではなく、シクロペンチルトリアゾロピリミジン系薬剤に分類される。この新規のADP受容体阻害薬である、プラスグレルとチカグレロルは、CYP2C19遺伝子多型による低反応性はない。

NSTEMIは、高齢者だからこそ積極的に治療を!(解説:中川義久氏)-1287

皆さんもご存じのように、急性冠症候群(acute coronary syndrome:ACS)は、不安定狭心症(unstable angina:UA)、非ST上昇型心筋梗塞(Non ST-segment elevation myocardial infarction:NSTEMI)、ST上昇型心筋梗塞(ST-segment elevation myocardial infarction:STEMI)の3つに分類される。可能な限り早急なprimary PCIが有効なSTEMIに対して、NSTEMIでは治療のタイミングについて判断が必要である。PCI施行を含む積極的な治療を施行するタイミングは2つに大別される。早期に造影検査およびインターベンションを行う侵襲的治療戦略と、保存的な治療を優先し侵襲的治療のルーチンとしての実施を回避する初期保存的治療戦略(非侵襲的治療戦略)である。TIMIリスクスコアやGRACE ACSリスクモデルなどの、リスク評価法に基づいて治療戦略を決定することが推奨されている。このように選択肢がある中でも、早期に侵襲的治療を施行する有用性が高いとの報告が増加していた。しかし、高齢者はこれらのエビデンスを構築するための臨床試験から除外されることが常であり、明確な方針は明らかではなかった。

BIVV001か遺伝子治療かエミシズマブか:血友病Aにとって期待の新薬BIVV001(解説:長尾梓氏)-1286

血友病Aの治療では頻回の静脈注射が大きな課題である。従来の遺伝子組み換え第VIII因子製剤(rFVIII)は週3~4回の静脈注射を行っても関節出血を完全には抑制しきれなかった。2016年に蛋白融合技術による半減期延長製剤が登場して、週1~2回の注射に減らすことができるようになった。2018年に上梓されたエミシズマブは最大4週に1回の皮下注射で、出血抑制効果が認められ、急速に使用者が拡大している。ただ、FVIIIを補う治療とは異なる機序であることから測定上の課題なども残存し、今も臨床研究が複数行われている。

本邦におけるレムデシビルの投与基準は妥当か?(解説:山口佳寿博氏)-1285

レムデシビル(商品名:ベクルリー点滴静注液)はエボラウイルス病(旧エボラ出血熱)の原因病原体(マイナス1本鎖RNAウイルス)に対する治療薬として開発が進められてきた。レムデシビルは核酸類似体でRNA依存RNA合成酵素を阻害する。この薬物が、プラス1本鎖RNAウイルスである新型コロナにも効果が期待できる可能性があり、世界レベルで治験が施行されてきた。とくに、米国における期待度は高く、米国の新型コロナ感染症の第1例目にレムデシビルが投与され劇的な改善が得られたと報告された。それ以降、米国では科学的根拠が曖昧なまま“人道的(compassionate)”投与が繰り返された(Grein J, et al.N Engl J Med. 2020;382:2327-2336.)。しかしながら、中国・武漢で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(症状発現より12日以内の中等症以上の患者、237例)では、薬物投与群(レムデシビル10日投与)と対照群の間で有意差を認めた臨床指標は存在しなかった(Wang Y, et al. Lancet. 2020;395:1569-1578.)。本稿で述べる重症度分類は本邦厚労省の『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』に準ずる。米国国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のスポンサーシップの下で施行されたdouble-blind, randomized, placebo-controlled trial(本邦を含む世界9ヵ国が参加、中等症以上の患者、1,059例)の中途解析(731例)では、臨床症状/所見の回復が薬物投与群(レムデシビル10日投与)で対照群より4日短縮されることが示された(Beigel JH, et al. N Engl J Med. 2020 May 22. [Epub ahead of print])。この結果を受け、米国FDAは5月1日にレムデシビルの重症例に対する緊急使用を承認した。本邦の厚労省も5月7日に呼吸不全を合併する中等症患者、機械呼吸/ECMOを必要とする重症患者(小児を含む)に対してレムデシビルの特例使用を許可した。投与期間に関しては、機械呼吸/ECMO導入例では最大10日間、それ以外の場合には5日間と規定された。

新たな擦過細胞診法によるBarrett食道の診断の有用性(解説:上村直実氏)-1284

Barrett食道は下部食道が円柱上皮に置換された状態であり、腺がんはその中の腸上皮化生から発生するとされている。近年、欧米の白人男性において著明に増加している食道腺がんの前駆病変として注目されている疾患であるが早期に発見されにくいことでも有名である。最近、内視鏡を用いることなくBarrett食道を診断する新たな方法としてスポンジを内包したカプセルを用いた擦過細胞診(Cytosponge-TFF3テスト)の有用性がLancetに報告された。英国において一般診療所のGERD患者1,654例に対して本法を用いた検査を行った結果、TFF3が陽性となった221症例中131例59%がBarrett食道と診断されている。一方、主治医の判断で内視鏡検査を行う通常ケアでBarrett食道の診断に至ったのは6,388例中わずか13例0.2%であり、この新たな擦過細胞診は欧米諸国におけるBarrett食道と食道腺がんの早期発見に大きな革命をもたらす可能性が示唆されている。

ビスホスホネート製剤による大腿骨近位部骨折予防効果は副作用としての非定型大腿骨骨折のリスクを上回る。(解説:細井孝之氏)-1283

骨吸収抑制剤であるビスホスホネート製剤(以下BP製剤)は1990年代に登場した骨粗鬆症治療薬であり、確実な骨密度上昇効果と骨折予防効果によって主要な治療薬の地位を得た。一方、15年ほど前から、ある程度長く本剤を服用している者の中に大腿骨の骨幹部の非外傷性骨折がみられることが注目されてきた。このために、欧米においては本剤の使用を控える傾向がみられ、それまで減少傾向にあった大腿骨近位部骨折頻度が減り止まるという現象すらみられた。骨粗鬆症による代表的な骨折である大腿骨の骨折は大腿骨頸部や大腿骨転子部などの大腿骨近位部に発症する(hip fracture、以下HF)。これに対してBP製剤との関連で注目される大腿骨骨折は転子下、とくに骨幹部に発症するため、非定型大腿骨骨折(atypical femur fracture、以下AFF)と呼ばれている。

イベント不明を伴うメタアナリシスではIMORによる感度分析をすべきだろう(解説:折笠秀樹氏)-1282

メタアナリシスをしようとすると、関連する臨床研究を検索し、各研究からイベント有無の数値を拾い出します。イベント有無の人数に加えて、イベント不明(欠損)が含まれていることがあります。1年内のイベントの有無を数えるとき、中途脱落例ではイベントの有無は不明となってしまいます。このイベント不明を「有」にするのか、「無」にするのか、それとも除外してしまうのか、迷うわけです。100件のメタアナリシス論文を見ると、「有」としたのが2%、「無」としたのが3%、除外したのが3%、残りの93%は不明でした。欠損があるとき、いろいろな埋め合わせを試してみて、結論の安定性を確かめるのが基本です。感度分析と言います。実際にはいろいろな埋め合わせはしてなかったわけですが、著者らはそれを試したのです。なお、「埋め合わせ」は通常語であり、統計用語は「補完」です。

Digital Medicineの世紀:Apple Watchによる心房細動の検出(解説:香坂俊氏)-1279

自分は腕時計をしない。手洗いのときに邪魔だからとか、腕が片方だけ重いからとか、病院からプレゼントされるガラケーで時間を見られるからとかいろいろと理由はあるのだが、実は必ずどこかに忘れてきてしまうから、というのがその最大の理由である(ガラケーやスマホもよく忘れるが、こちらはなんとか追跡できる)。しかし、そんな自分でも最近のスマートウォッチの動向には興味を持っている。たとえばApple Watchには、Steve Jobsの意向を受けて脈拍計や心電計が装備されており、これが循環器領域でどのように活用されていくのか非常に興味を引くところである。とくに、こうしたデジタルヘルスケアデータは随時更新され続けるため、1回で終わってしまう外来での検査や診察室でのバイタルチェックと異なり、蓄積されるデータ量が根本的に異なる。

AFIRE試験が世界に投げかけたこと(解説:香坂俊氏)-1281

AFIRE試験がNEJM誌に発表された。そのデザインや主要な結果に関しては、さまざまな学会や研究会で議論がなされており、その解釈に関しても広く議論がなされている。AFIREのデザインと主要な結果・心房細動を持つ安定冠動脈疾患の患者さんを対象に「リバーロキサバン(経口抗凝固薬)単独」と「リバーロキサバン+抗血小板薬併用」との比較を行ったわが国の多施設共同のランダム化比較研究。・2017年9月末までに2,240例が登録され、2年以上の観察期間を予定していたが、データ安全性モニタリング委員会の勧告に基づき2018年7月に研究を早期終了。

交叉するKaplan Meier曲線を巡って:皮下植込み型除細動器(S-ICD)の場合(解説:香坂俊氏)-1280

突然心停止の原因となる不整脈(心室細動等)の発生時に心臓にDCショックを送り、正常な心拍に戻す機器としてICD(植込み型除細動器)が知られている。このICDはペースメーカーとは若干位置付けが異なることに注意されたい。図. ペースメーカーとICDの違い。ペースメーカーがSick Sinus(洞不全症候群)やAV Block(房室ブロック)のような徐脈性不整脈に対して弱い電流を断続的にピシピシと流して心臓を拍動させるのに対し、ICDはVF(心室細動)等の頻脈性不整脈に対して強い電流を一度だけドカーンと流して心臓の拍動をリセットする。

重症の胆石性急性膵炎に対する緊急ERCPと保存的治療:多施設共同無作為化比較試験(解説:上村直実氏)-1277

オランダ発の本論文は、発熱を伴う総胆管結石、総胆管の拡張、進行性の胆汁うっ滞により定義される明確な胆管炎を認めない重症の胆石性急性膵炎(以下、本症)を有する患者を対象として、6ヵ月以内の死亡または主要な合併症(多臓器不全、胆管炎、菌血症、肺炎、膵臓壊死、膵機能不全)の発症を検討し、24時間以内の括約筋切開を伴う緊急ERCPを施行するERCP/ES群と保存療法から開始する対照群を比較した結果、本症の改善に対する有用性および安全性に統計学的な差を認めなかったことから緊急ERCP/ESを施行しない保存療法を支持する結論となっている。

チカグレロルのDAPTからSAPTへの移行時期:3ヵ月vs.12ヵ月の比較試験(解説:上田恭敬氏)-1276

急性冠症候群症例を対象として、PCI後にチカグレロルとアスピリンによるDAPTを3ヵ月で終了してチカグレロルの単剤療法へ移行する群と12ヵ月間DAPTを継続する群に無作為に割り付け、12ヵ月間のnet adverse clinical event(出血と脳心血管イベント)を主要評価項目として比較したRCTの結果である。出血はTIMI major bleeding、脳心血管イベントは死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、標的血管再血行再建としている。登録症例数は、DAPT 3ヵ月群が1,527症例、12ヵ月群が1,529症例であった。

うつを予防する方法(解説:岡村毅氏)-1278

ビタミンDにうつ病を予防する効果はないという残念な結果であった。これを深掘りしてみよう。まず、前提としてさまざまなビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸等がうつ病を予防するのではないかという小さなエビデンスは集積されている。ビタミンDでも同様である。ただし、たとえばビタミンDを摂っている健康な人は、運動もするし、友人も多いし、健康情報もよく知っているのでうつになりにくい可能性はあるだろう(これらを交絡因子という)。したがってうつ病の人と、そうでない人を比べるとビタミン摂取量に差がある可能性はある。

抗血小板薬単剤療法はアスピリン単独かP2Y12阻害薬単独か?(解説:上田恭敬氏)-1275

脳心血管疾患患者の2次予防としての抗血小板薬単剤療法は、アスピリン単剤とP2Y12阻害薬単剤のいずれが優れているかを、メタ解析によって検討した研究が報告された。1989年から2019年までに報告された9個のRCTが解析に含まれており、P2Y12阻害薬としてはチクロピジン、クロピドグレル、チカグレロルが含まれている。観察期間は3〜36ヵ月のものが含まれている。心筋梗塞の発生率については、P2Y12阻害薬単剤群で低くなったが、全死亡、心血管死亡、脳卒中、出血イベントについては、群間差がなかった。結果は、P2Y12阻害薬の種類によらず同じであった。よって、2次予防としては、アスピリン単剤よりもP2Y12阻害薬単剤のほうがやや優れているという結果となった。ただし、sensitivity analysisとして、解析に含まれた9個のRCTの1つであるCAPRIE試験を除外すると、心筋梗塞発生率についての差はなくなるとしている。

青少年および若年成人1型糖尿病患者の血糖管理においてもCGMは有効である(解説:住谷哲氏)-1274

成人1型糖尿病患者において自己血糖測定(BGM)に比べてCGMを使用するほうがHbA1cを低下させることはこれまでに報告されていた。しかし血糖管理が最も困難とされる青少年および若年成人1型糖尿病患者においてCGMが有効であるか否かはこれまで不明であった。この問題に答えたのが本試験である。本試験で使用されたCGMはDexcom G5であり最新のG6よりも1つ前の機種である。G6は出荷時に校正が済んでいるのでBGMによる補正は必要ないが、G5は1日2回のBGMによる補正が必須となっている。またセンサーの交換は1週間ごとであり、アプリをダウンロードすることによりスマートフォンでリアルタイムに血糖値を確認することができる。CGMの受け入れは個人差があり、24時間常にセンサーが装着されていることに対する違和感で途中脱落する患者も少なくない。

血液検査で認知症診断をする深い理由(解説:岡村毅氏)-1273

血漿リン酸化タウ217(血液検査)によりアルツハイマー型認知症の診断ができる可能性を報告している。ここではその臨床的背景について深掘りしよう。そもそもアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症等は、症状は大きく異なるものである。教科書だけ見ていたら、こんなもの診断は簡単だろうと思うかもしれない。一方、臨床は教科書通りにいかない。長い人生を歩んできた方はいろいろ複雑であるので、(1)脳梗塞などの血管性要因の併存、(2)たとえば特異な家族環境であるといった外的要因、(3)その人の生活歴やパーソナリティなどの内的要因、(4)いくつかの認知症性疾患の合併、(5)実は薬剤を飲んでいるが申告しない、といったことが起きる。するとアルツハイマー型なのに前頭側頭型的な症状が出る、みたいなことが起きる。もちろん診断困難な事態は多くはないし、だいたいが専門病院に来る(紹介してよいです)。

幸いな術後管理への道(解説:今中和人氏)-1272

せん妄、いわゆるICU症候群は実に頭が痛い。心を込めて説得してもダメ、抑制してももちろんダメ、あれこれ鎮静薬を使っても硬い表情に異様にギラギラしたまなざしは去ることなく、「あんなに苦労して入れたA-ラインが、こんなにもアッサリと…」と激しく萎えた経験は、多くの先生にとって一度や二度ではあるまい。幻覚で大暴れしている患者さんも気の毒には違いないが、医師もナースも負けず劣らず気の毒。もちろん、臨床経過にも悪影響が及ぶ。せん妄の克服こそは、幸いな術後管理の鍵を握っている。

侮れない中国の科学力(解説:後藤信哉氏)-1271

筆者は免疫学者でもウイルス学者でもない。ランダム化比較試験による有効性、安全性検証をリードするclinical trialistであるとともに一人の臨床医である。免疫の仕組みに詳しいわけではない。それでもウイルス表面に存在する細胞への侵入を担う蛋白を標的とした抗体ができれば感染予防ができるのではないかとの仮説は持てる。本研究は新型コロナウイルスの表面に発現しているスパイク蛋白をアデノウイルスの一種であるAd5に発現させたワクチンを用いた臨床試験の結果である。エビデンスレベルの高い二重盲検のランダム化比較試験である。対照群をプラセボとしている。タンパク質を注射すれば副反応として疼痛などが起こるのは一種当然である。プラセボとの比較は安全性比較にはハードルが高いと思う。

コロナウイルスワクチンへの期待(解説:後藤信哉氏)-1270

新興感染症と人類との戦いにおいてワクチンは強力な武器であった。コロナウイルスは感冒のウイルスであるが、現時点までに感冒への有効なワクチンが開発されていない。COVID-19へのワクチン開発には期待が大きい。コロナウイルスの細胞への感染にはウイルスのスパイク様蛋白が寄与する。タンパク質に対する抗体をワクチンとするのであれば、北里柴三郎の破傷風抗毒素血清療法以来実績がある。本研究はチンパンジーのSARS-CoV-2ウイルスのスパイク蛋白を発現したチンパンジーのアデノウイルスベクターを用いたワクチン(ChAdOx1 nCoV-19 vaccine)と髄膜炎菌のワクチンを比較したphase 1/2試験である。ウイルスの表面抗原を標的としたワクチン開発は一般的に最初に思い付く方法だと思う。液性、細胞性免疫により細胞侵入前にウイルスの細胞侵入を防げるとは想定されるが、細胞内に入ってしまったウイルスに対する効果には疑問が残る。