医療一般|page:18

新クラスの抗菌薬、「人喰いバクテリア」にも有効か

 新たな抗菌性化合物により、マウスに感染した化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)を効果的に除去できることを示した研究成果が報告された。S. pyogenesは「人喰いバクテリア(劇症型溶血性レンサ球菌感染症)」の主な原因菌であり、この細菌による感染症により毎年50万人が死亡している。研究グループは、「この化合物は、薬剤耐性菌との闘いにおいて貴重な存在となり得る、新規クラスの抗菌薬の第1号となる可能性がある」と述べている。米セントルイス・ワシントン大学医学部分子微生物学分野のScott Hultgren氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に8月2日掲載された。

限界に近いトレーニングは筋肥大に有効?

 ウェイトリフティングをする人の間で人気のあるトレーニングは、「training to failure(失敗するまでトレーニングする)」、つまり、エクササイズでそれ以上おもり(ウェイト)を持ち上げられなくなるまでレップ(動作の反復の1回が1レップ)を繰り返す方法である。このトレーニング方法は、筋肉を大きくするのには役立つが、筋力の増強にとっては限界までやるかやらないかは関係しない可能性のあることが新たな研究で明らかになった。米フロリダ・アトランティック大学(FAU)生体医科学部(Charles E. Schmidt College of Biomedical Sciences)のMichael Zourdos氏らによるこの研究の詳細は、「Sports Medicine」に7月6日掲載された。

マイナ保険証にまだ不安があると回答した人は約半数/アイスタット

 マイナンバーカード(マイナカード)の活用場面が日々拡大している。最近では、役所の窓口だけでなく、医療機関や薬局でも健康保険証とマイナカードが一体化された「マイナ保険証」の利用も増えている。とくにマイナ保険証では、所持者の同意があれば診療・薬剤情報が提供されることもあり、今後、全国のどこの医療機関であってもそれらを基に正確な診療ができ、医療費控除の簡便化できるなどのメリットが期待されている。その一方で、個人情報の流出や情報の悪用、デジタル機器の操作に慣れていない高齢者への対策など課題もある。  そこでアイスタットは、「マイナ保険証に関するアンケート」を8月に行った。

BPSDに対する第2世代抗精神病薬5剤の比較~ネットワークメタ解析

 認知症患者で頻繁にみられる認知症の行動・心理症状(BPSD)の治療において、第2世代抗精神病薬(SGA)がよく用いられるが、その相対的な有効性および忍容性は明らかになっていない。中国・四川大学のWenqi Lu氏らは、BPSDに対する5つのSGAの有効性、許容性、忍容性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。BMJ Mental Health誌2024年7月30日号の報告。  標準平均差(SMD)を用いて、連続アウトカムの固定効果をプールした。カテゴリ変数に対応したオッズ比(OR)および95%信頼区間(CI)を算出した。有効性の定義は、標準化された尺度によるスコア改善とした。許容性は、すべての原因による脱落率とし、忍容性は、有害事象による中止率と定義した。相対的な治療順位は、SUCRAにより評価した。有害事象アウトカムには、死亡率、脳血管有害事象、転倒、過鎮静、錐体外路症状、排尿症状を含めた。

妊娠糖尿病は乳がんのリスクを高めない

 妊娠糖尿病は乳がんのリスクとは関連がないようだ。平均12年間追跡した結果、妊娠糖尿病を発症しなかった女性と比べ、乳がんの発症率に差は認められなかったという。デンマークのステノ糖尿病センターおよびオーデンセ大学病院のMaria Hornstrup Christensen氏らが、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表する。  妊娠糖尿病は妊娠中に生じる、糖尿病の診断基準を満たさない程度の高血糖であり、難産や巨大児出産などのリスクが上昇する。妊婦の約14%が妊娠糖尿病を発症するとされ、症例数は増加傾向にある。通常、出産後に糖代謝は正常化するが、その後に心血管代謝疾患リスクが上昇することが知られている。また妊娠糖尿病の発症にはインスリン抵抗性が関与していて、そのインスリン抵抗性は心血管代謝疾患のほかに、乳がんを含むいくつかのがんのリスクと関連する可能性が示唆されている。Christensen氏らの今回の研究では、それらの中で乳がんに焦点が当てられた。

座位行動による健康への悪影響は運動で相殺可能

 毎日8時間以上、座ったまま過ごしている糖尿病の人でも、ガイドラインが推奨する身体活動量を満たしていれば、健康への悪影響を大きく抑制できることが報告された。米コロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院のSandra Albrecht氏、Wen Dai氏による研究であり、詳細は「Diabetes Care」に7月19日掲載された。Albrecht氏は、「この研究結果は、オフィスワーカーやタクシードライバーなどの職業柄、長時間座り続ける必要のある人々に対して、習慣的な身体活動を推奨することの重要性を示している」と述べている。

歯の喪失は心血管疾患による死亡リスクと関連

 口腔の良好な健康は、心臓の良好な健康を意味するようだ。新たなシステマティックレビューとメタアナリシスにより、歯の喪失は心血管疾患(CVD)による死亡リスクと関連しており、失った歯の本数が多いほどそのリスクは高くなる可能性のあることが明らかになった。米ケース・ウェスタン・リザーブ大学歯学部教授のAnita Aminoshariae氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Endodontics」に6月28日掲載された。  Aminoshariae氏は、「本研究結果は、歯の喪失が単なる歯の問題ではなく、CVDによる死亡の重大な予測因子であることを明確に示すものだ」と述べている。

うつ病や双極症、季節性と日光曝露は初回使用の診断や薬剤使用量に影響するのか

 うつ病や双極症の季節性は、ICD-10/11やDSM-Vにおいても認識されている。デンマーク・Mental Health Services Capital RegionのCarlo Volf氏らは、デンマーク国内におけるうつ病および双極症の診断や抗うつ薬の初回処方パターンに対する季節性の影響を評価した。Nordic Journal of Psychiatry誌オンライン版2024年7月24日号の報告。  デンマーク患者登録(Danish National Patient Registry)より、1999~2019年にうつ病または双極症と初めて診断された患者の日付と年を検索した。疾患の定義には、うつ病はICD-10 F32-F33、双極症はF30またはF31を用いた。1999~2021年の抗うつ薬処方(ATC分類:N06A)の初めての購入の日付と年は、1995年以降に薬局で調剤されたすべての処方薬に関する情報を含む処方登録(Danish National Prescription Registry)から収集した。2012~21年の日照時間に関するデータは、デンマーク気象研究所より入手した。

ワルファリン時代vs.DOAC時代、日本の実臨床でのVTE長期転帰

 静脈血栓塞栓症(VTE)に対し、実臨床で直接経口抗凝固薬(DOAC)が使用されるようになって以降、ワルファリン時代と比較した長期転帰には実際どのような変化があるのだろうか。京都大学の金田 和久氏らは、急性の症候性VTE患者を対象とした多施設共同観察研究COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代とDOAC時代のデータを比較し、結果をJournal of the American College of Cardiology誌2024年8月6日号に報告した。  本研究では、COMMAND VTE Registryから、ワルファリン時代(2010~14年)の連続3,027症例(29施設)を登録したレジストリ1と、DOAC時代(2015~20年)の連続5,197症例(31施設)を登録したレジストリ2のデータが用いられた。

医師偏在に対する6項目の考え方/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、定例会見を開催し、「医師偏在に対する日本医師会の考え方」について、過去の地域医療との医師会の取り組みや実績を辿りつつ、今後の医師偏在への医師会の取り組みについて、その考え方を説明した。  会見では松本会長が、日本医師会は、地域のかかりつけ医として自院の診療や在宅診療以外に「地域の時間外・救急対応」、「行政・医師会等の公益活動」、「地域保健・公衆衛生活動」「多職種連携(訪問診療などの在宅医療ネットワークへの参画など)」、「その他(看護師・准看護師養成所、種々の診断書の作成など)」の活動を地域と連携して行い、住民の健康を守るため、それぞれの地域を面として支えてきたことを説明した。

X世代とミレニアル世代でがん罹患率が上昇

 X世代(1965年から1980年の間に生まれた世代)とミレニアル世代(1981年から1990年代半ば頃までに生まれた世代)でがん罹患率が上昇していることが、新たな研究で明らかにされた。若い世代ほど、34種類のがんのうちの17種類の罹患率が上昇していることが示されたという。米国がん協会(ACS)のサーベイランス・健康公平性科学の上級主任研究員であるHyuna Sung氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Public Health」8月号に掲載された。  今回の研究でSung氏らはまず、2000年1月1日から2019年12月31日の間の、34種類のがんの罹患率と25種類のがんによる死亡率のデータを入手した。このデータは、2365万4,000人のがん罹患者と734万8,137人のがんによる死亡者で構成されていた。Sung氏らは、これらの人を、1920年から1990年までの5年ごとの出生コホートに分け、出生コホート間でがんの罹患率比(IRR)と死亡率比(MRR)を計算して比較した。

主食・主菜・副菜をとる頻度と栄養素摂取量の関係

 主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をとる頻度が、さまざまな栄養素の習慣的な摂取量とどのように関係するかを詳細に調べる研究が行われた。その結果、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事の頻度は栄養素摂取量の適切さと関連し、その頻度が低いほど、たんぱく質やビタミンなど、いくつかの栄養素の摂取量が低いこと、習慣的な摂取状況が不足の可能性の高い栄養素の数が多いことが示された。神戸学院大学栄養学部の鳴海愛子氏らによる研究であり、「Nutrients」に5月26日掲載された。

食育プログラムが子どもと大人の孤独を改善

 地域における多世代を対象とした食育プログラムを実施した結果、参加した子どもと大人の孤独感に対して肯定的な影響が認められ、食育が孤独を改善する手段として有効である可能性が示唆された。昭和女子大学大学院生活機構研究科の黒谷佳代氏らが行った研究の成果であり、「Nutrients」に5月28日掲載された。  孤独対策では、人と人との「つながり」を実感できる地域作りが重要である。つながりを感じられる場所を確保する手段の一つとして、日本では食育が推進されている。例えば、子ども食堂は地域の子どもたちと大人が一緒に食事をすることができ、多世代が集うコミュニケーションの場所となっている。しかし、地域における多世代を対象とした食育について、その効果をまとめた研究報告は少ない。

コーヒーや紅茶の摂取と認知症リスク~メタ解析

 コーヒー、紅茶、カフェイン摂取と認知症およびアルツハイマー病リスクとの関連性は、限定的で相反する結果が示されている。中国・汕頭大学のFengjuan Li氏らは、これらの関連性を明らかにするため、潜在的な用量反応関係を定量化することを目指し、メタ解析を実施した。Food & Function誌2024年8月12日号の報告。  2024年6月11日までの公表されたコホート研究を、PubMed、EMBASE、Web of Scienceより検索した。ランダム効果モデルを用いて、プールされた相対リスク(RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。用量反応関係の評価には、制限付き3次スプラインを用いた。バイアスリスクの評価には、GRADE(Grading of Recommendations Assessment Development and Evaluation)ツールを用いた。

早老症の寿命延長に寄与する治療薬ロナファルニブ発売/アンジェス

 アンジェスは、小児早老症であるハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)とプロセシング不全性プロジェロイド・ラミノパチー(PDPL)の治療薬であるロナファルニブ(商品名:ゾキンヴィ)の発売に伴い、都内でプレスセミナーを開催した。  HGPSとPDPLは、致死性の遺伝的早老症の希少疾病であり、若い時点から死亡率が加速度的に上昇する疾患。これらの疾患では、深刻な成長障害、強皮症に似た皮膚症状などを来す。  ロナファルニブは、2023年3月に厚生労働省により希少疾病医薬品に指定され、2024年1月に国内製造販売承認を取得、同年4月に薬価基準に収載され、同年5月27日に発売された。

新型コロナの経鼻ワクチン、動物実験で感染を阻止

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の次世代経鼻ワクチンは、従来の注射型のワクチンにはできなかった、人から人へのウイルスの伝播を阻止できる可能性のあることが、動物実験で示された。この経鼻ワクチンが投与されたハムスターは、ウイルスに感染しても他のハムスターにそれを伝播させることはなく、感染の連鎖を断ち切ったと米セントルイス・ワシントン大学医学部分子微生物学および病理学・免疫学分野のJacco Boon氏らが報告した。詳細は、「Science Advances」8月2日号に掲載された。研究グループは、今回の動物を用いた研究によって、鼻や口へのワクチン投与がインフルエンザやCOVID-19といった呼吸器感染症の感染拡大を抑えるカギになる可能性があることを支持するエビデンスが増えたと話している。

医師の患者と目線を合わせたコミュニケーションは患者満足度を向上させる

 医師といえば威厳に満ちた印象かもしれないが、新たなレビュー研究によると、患者は、あまり威圧感を感じさせない医師に対しての方が安心感を抱きやすいようだ。医師が、患者と目線を合わせるためにベッドサイドに座ったりしゃがんだりして診断やケアについて話すことで、患者の信頼感や満足度が向上する可能性のあることが明らかになった。米ミシガン大学医学部の Nathan Houchens氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of General Internal Medicine」に7月17日掲載された。Houchens氏は、「この研究により、医師が座ることの重要性に対する認識と、医師のそのような態度を患者が評価しているということが広まることを期待している」と話している。

ICU入室前のソーシャルサポートは退室後の抑うつと関連

 集中治療室(ICU)で治療を受けた患者を対象とする単施設前向きコホート研究の結果、ICU入室前のソーシャルサポートが少ないほど、ICU退室後の抑うつが生じやすいことが明らかとなった。駒沢女子大学看護学科の吉野靖代氏らによる研究であり、「BMJ Open」に6月19日掲載された。  ICU在室中・退室後、退院後に生じる認知・身体機能の障害やメンタルヘルスの問題は、集中治療後症候群(post-intensive care syndrome;PICS)と呼ばれる。集中治療の進歩により患者の生存率は向上している一方で、PICSによりQOLが低下し、元の生活に戻ることのできない患者も多い。メンタルヘルスに関しては、がん患者や心疾患患者を対象とした研究で、ソーシャルサポートと抑うつの軽減との関連が報告されている。ただ、ICU患者におけるソーシャルサポートとICU退室後のメンタルヘルスに関しては、研究結果が一貫していなかった。

糖尿病黄斑浮腫へのSGLT2阻害薬使用で注射回数減

 糖尿病黄斑浮腫患者に対するSGLT2阻害薬の使用は、ステロイド薬のトリアムシノロンアセトニド(TA)注射頻度の減少と関連しており、非侵襲的かつ低コストの補助療法となる可能性があるとの研究結果が発表された。君津中央病院糖尿病・内分泌・代謝内科の石橋亮一氏と千葉大学眼科、糖尿病・代謝・内分泌内科、人工知能(AI)医学による研究チームによる研究であり、「Journal of Diabetes Investigation」に6月14日掲載された。  増殖糖尿病網膜症による失明は、近年減少傾向ではあるが、糖尿病黄斑浮腫は、中高年の社会生活の質を低下させる重要な視力障害の原因となっている。糖尿病黄斑浮腫の第一選択薬は抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬の硝子体内注射だが、眼球への頻回の注射と、高額な医療費が患者の負担となり、また奏功しない患者の存在も次第に明らかとなり、ステロイドテノン嚢下注射(STTA)なども選択される。ただし、TA投与も侵襲的な局所注射療法であり、眼圧上昇などの特有の副作用がある。