医療一般|page:3

実臨床のスタチン、ロスバスタチンvs.アトルバスタチン

 ストロングスタチンに分類されるロスバスタチンとアトルバスタチンは、実臨床で広く用いられているが、実臨床におけるエビデンスは限られている。そこで、中国・南方医科大学のShiyu Zhou氏らの研究グループは、中国および英国のデータベースを用いて、両薬剤の有効性・安全性を比較した。その結果、ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較して全死亡、主要心血管イベント(MACE)、肝重症有害事象(MALO)のリスクをわずかに低下させることが示唆された。本研究結果は、Annals of Internal Medicine誌オンライン版2024年10月29日号に掲載された。

脳卒中後の治療で最善の血栓溶解薬とは?

 脳梗塞患者に対する血栓溶解薬のテネクテプラーゼ(TNK)の適応外使用は、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)のアルテプラーゼ(以下、TPA)による治療よりもわずかに効果的である可能性があるとするシステマティックレビューとメタアナリシスの結果が発表された。TNKによる治療の方が、TPAによる治療よりも、脳梗塞の発症から3カ月後に患者が修正版ランキンスケール(modified Rankin Scale;mRS)で症状がない(0点)か、症状があっても明らかな障害はない(1点)に分類される可能性の高いことが示されたという。アテネ国立カポディストリィアコ大学(ギリシャ)神経学分野教授のGeorgios Tsivgoulis氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に10月16日掲載された。

不十分な情報でも「自分は正しい」と思い込むのはなぜか

 人は、実際には全体像の一部しか把握していないにもかかわらず、決断を下すのに十分な情報を持っていると思い込みがちであることが、新たな研究で明らかになった。米オハイオ州立大学英語学教授のAngus Fletcher氏らによるこの研究結果は、「PLOS ONE」に10月9日掲載された。Fletcher氏は、「本研究により、人は概して、情報に基づいた意思決定をするために、他にも役立つ情報があるかどうかを検討してみようとはしないことが分かった」と述べている。  把握している情報量が実際には不十分であるにもかかわらず十分だと信じてしまう現象を、「情報の十分性の錯覚(illusion of information adequacy)」という。Fletcher氏らは、この概念は、限定的で偏った情報源から情報を得ているに過ぎない場合でも、人がいかに確固とした強い意見を持ち得るのかを説明するのに役立つと述べている。Fletcher氏は、「人に、一見矛盾しないと思われる情報をいくつか与えれば、ほとんどの人は『それは正しいようだ』と言って、それに従うだろう」と述べている。

大量飲酒後には不整脈リスクが増加か

 パーティーやクラブで音楽を聞きながらの飲酒は気分を高揚させるものだが、心臓には悪い影響があるかもしれない。ドイツのミュンヘンで大量飲酒をした健康な若者の5%以上に、飲酒後24時間以内に臨床的に重要な不整脈が認められたとする研究結果が報告された。ルートヴィヒ・マクシミリアン大学(LMU)ミュンヘン(ドイツ)のStefan Brunner氏らによるこの研究結果は、「European Heart Journal」に10月4日掲載された。  論文の筆頭著者であるBrunner氏と上席著者であるLMU大学病院のMoritz Sinner氏は、2015年に、ミュンヘンの有名なオクトーバーフェスト中に調査を行い、飲酒が心拍リズムに与える影響を研究したことがある。ただ、この研究では、心電図(ECG)の単回測定の結果を頼りに結論が導き出されていた。

患者数が5年で5倍!心不全診療で取りこぼせない疾患とは/日本心臓病学会

 心アミロイドーシスは、もはや希少疾患ではないのかもしれない―。9月27~29日、仙台で開催された第72回日本心臓病学会学術集会のシンポジウム「心臓アミロイドーシス診療Up to date」において、本疾患の歴史や病理診断、病態~治療に関する現況や最新情報が報告され、これまでの心アミロイドーシスに対する意識を払拭すべき現状が浮き彫りとなった。  心アミロイドーシスは全身性アミロイドーシスの一症状で、心臓の間質にアミロイド蛋白が沈着し、形態的・機能的異常をきたす進行性かつ予後不良の疾患である。アントニオ猪木氏が闘った病としても世間を賑わしたが、他方で医学界においても見過ごすことができない疾患として、今、注目を浴びている。

レトロウイルス感染症-基礎研究・治療ストラテジーの最前線-/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が京都市で開催され、12日のPresidential Symposiumでは、Retrovirus infection and hematological diseasesに関し5つの講演が行われた。本プログラムでは、成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)の発がんメカニズムや、ATLの大規模全ゲノム解析の結果など、ATLの新たな治療ストラテジーにつながる研究や、ATLの病態解明に関して世界に先行し治療開発にも大きく貢献してきた日本における、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)関連疾患の撲滅といった今後の課題、AIDS関連リンパ腫に対する細胞治療や抗体療法の検討、HIVリザーバー細胞を標的としたHIV根治療法など、最新の話題が安永 純一朗氏(熊本大学大学院生命科学研究部 血液・膠原病・感染症内科学)、片岡 圭亮氏(慶應義塾大学医学部 血液内科)、石塚 賢治氏(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 人間環境学講座 血液・膠原病内科学分野)、岡田 誠治氏(熊本大学ヒトレトロウイルス学共同研究センター 造血・腫瘍制御学分野)、白川 康太郎氏(京都大学医学部附属病院 血液内科)より報告された。

せん妄で認知症リスク5倍~日本の入院患者26万例のデータ

 せん妄は、高齢者、とくに高齢入院患者の意識障害に影響を及ぼすことが多い。近年、せん妄歴と認知症リスク上昇との関連を報告したエビデンスが増加している。しかし、多くの研究は、主に患者数の少ない術後およびICU患者に焦点が当てられており、範囲が限定されているため、適応範囲が広いとはいえない。大阪医科薬科大学の南 博也氏らは、入院患者全体を対象に、せん妄の発生率およびその後の認知症発症リスクを調査した。さらに、入院中のせん妄発現とその後の認知症発症との相関も調査した。Frontiers in Psychiatry誌2024年9月13日号の報告。

飛行機内でインスリンポンプに軽微な影響が生じる可能性

 インスリンポンプを装着して飛行機に乗ると、上昇中と降下中に、血糖値にわずかな変化が生じる可能性のあることが報告された。ただし、その影響は医学的な問題を引き起こすほどのものとは考えにくいという。英サリー大学のKa Siu Fan氏らによる研究の結果であり、欧州糖尿病学会(EASD 2024、9月9~13日、スペイン・マドリード)で発表された。  インスリンポンプは、インスリンを連続的に自動投与する機器で、主に1型糖尿病の治療に用いられている。急激な気圧の変動が生じた場合、機器の内部に気泡が発生し、インスリン注入速度に微妙な影響を及ぼす可能性がある。Fan氏らはその影響を、飛行中の機内の気圧変化を模したチャンバー(密閉された部屋)を用いて検討した。

禁煙開始が「遅すぎる」ことはない

 喫煙習慣のある高齢者の中には、「今さら禁煙しても意味がない」と考えている人がいるかもしれない。しかし、実際はそんなことはなく、高齢期に入ってから禁煙したとしても、タバコを吸い続けた場合よりも長い寿命を期待できることが明らかになった。例えば75歳で禁煙した場合、喫煙を続けた人よりも1年以上長く生きられる確率が14.2%に上るという。米ミシガン大学のThuy Le氏らが、禁煙によるメリットを禁煙開始時の年齢別に解析した結果であり、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に6月25日掲載された。

敗血症患者の半数は2年以内に死亡する

 救急外来を受診して入院した敗血症患者の50%強が2年以内に死亡していることが、オーフス大学病院(デンマーク)臨床疫学分野のFinn Nielsen氏らによる新たな研究で明らかになった。Nielsen氏は、「敗血症後の死亡リスクを上昇させるいくつかの因子が判明した。当然のことながら、高齢はその1つであり、認知症、心臓病、がん、過去6カ月以内の敗血症による入院歴などもリスク上昇と関連していた」と述べている。この研究結果は、ヨーロッパ救急医学会年次総会(EUSEM 2024、10月13〜16日、デンマーク・コペンハーゲン)で発表された。

肝細胞がんにおけるICI療法後の肝移植の転帰は良好

 肝細胞がん患者において、肝移植(LT)前の免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の使用は転帰を悪化させないという研究結果が、「Journal of Hepatology」7月10日に掲載された。  中東肝疾患センター(イラン)のMohammad Saeid Rezaee-Zavareh氏らは、ICIの使用がLT後の転帰に及ぼす影響について、個々の患者データを用いたメタ解析で検討した。解析には、適格患者91人のデータが含まれた。  その結果、追跡期間中央値690.0日の間に、同種移植片拒絶反応が24例、肝細胞がん再発が9例、死亡が9例認められた。年齢(10年当たりの調整ハザード比〔aHR〕0.72)およびICIウォッシュアウト期間(1週間当たりのaHR 0.92)において、移植片拒絶反応との関連が認められた。同種移植片拒絶反応の確率が20%以下の患者における、ウォッシュアウト期間の中央値は94日であった。全生存は、同種移植片拒絶反応の有無による違いは認められなかった。肝細胞がんの再発患者は未再発患者よりもICIサイクルの中央値が少なかった(4.0対8.0)。ICI後にミラノ基準を満たした患者の割合は、再発患者の方が未再発患者よりも低かった(16.7%対65.3%)。

薬物乱用頭痛に対する薬物療法の比較〜ネットワークメタ解析

 薬物乱用頭痛の治療に対する予防薬の必要性については、議論の余地が残っている。中国・雲南大学のFanyi Kong氏らは、薬物乱用の改善を含む、薬物乱用頭痛の治療に利用可能な薬剤の相対的なベネフィットおよび安全性を評価するため、本研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年10月7日号の報告。  薬物乱用頭痛に対するさまざまな薬剤の効果を比較するため、文献検索を通じて、ランダム化比較試験のシステマティックレビューを実施した。介入効果の比較をランク付けするため、ランダム効果ネットワークメタ解析を行った。アウトカムのベースラインからの改善には、治療反応率(頭痛頻度50%以上の減少)、急性薬物乱用の改善率、1ヵ月当たりの頭痛および急性期治療薬の減少を含めた。エビデンスの信頼性の評価には、Grading of Recommendations, Assessment, Development & Evaluation(GRADE)を用いた。

骨髄線維症に10年ぶりの新薬、貧血改善が特徴/GSK

 グラクソ・スミスクライン(GSK)は6月に日本における約10年ぶりとなる骨髄線維症の新薬モメロチニブ(商品名:オムジャラ)の承認を取得した。発売開始に合わせ、10月18日に行われたメディアセミナーでは、近畿大学 血液・膠原病内科 教授の松村 到氏が骨髄線維症の疾患特性や新薬の概要について講演を行った。  骨髄線維症は血液疾患で、骨髄増殖性腫瘍(MPN)のなかの古典的骨髄増殖性疾患に分類される。骨髄組織が線維化することが特徴で、これによって血球産生が障害され、貧血や髄外造血による脾腫、倦怠感などの全身症状を伴い、一部は急性骨髄性白血病(AML)に移行する。患者数は国内で年間約380人と希少疾患の部類に入り、高齢者に多く、生存期間中央値は3.9年(国内調査)と、MPNの中でも最も予後の悪い疾患だ。MPNに共通にみられるJAK2、CALR、MPL遺伝子変異が本疾患の発症と疾患進行にも関与する。

お茶やベリー類など、フラボノイド摂取が認知症リスクを低下

 ベリー類、お茶(紅茶・緑茶)、赤ワイン、ダークチョコレートなどの食品や飲料に含まれるフラボノイドの摂取量と、認知症リスクの関連について、英国・クイーンズ大学ベルファスト校のAmy Jennings氏らが調査を実施した。本研究は英国の約12万人を対象に実施され、フラボノイドが豊富な食品を日常的に摂取することで、認知症リスクを大幅に低減することが示唆された。JAMA Network Open誌2024年9月18日号掲載の報告。

重症の新型コロナ感染者の心臓リスクは心疾患既往者のリスクと同程度

 重症の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、心筋梗塞や脳卒中、全死亡などの主要心血管イベント(MACE)リスクを高め、その程度はCOVID-19に罹患していないが心疾患の既往歴がある人のリスクとほぼ同程度であることが、米クリーブランドクリニック・ラーナー研究所心血管代謝学部長のStanley Hazen氏らによる新たな研究から明らかになった。この研究ではまた、重症度にかかわらず、COVID-19罹患は、その後3年間のMACEリスクを2倍に高めることも示されたという。この研究結果は、「Arteriosclerosis, Thrombosis and Vascular Biology」に10月9日掲載された。  Hazen氏は、「この研究結果から、COVID-19は上気道感染症である一方で、さまざまな健康リスクを伴う疾患であり、心血管疾患の予防に関する計画や目標を策定する際には、COVID-19の既往歴を考慮すべきことを強く示したものだ」と述べている。

救急外来でのChatGPTの活用は時期尚早

 人工知能(AI)のChatGPTを病院の救急外来(ED)で活用するのは時期尚早のようだ。EDでの診断にAIを活用すると、一部の患者に不必要な放射線検査や抗菌薬の処方を求め、実際には入院治療を必要としない患者にも入院を求めるような判断を下す可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のChristopher Williams氏らによるこの研究は、「Nature Communications」に10月8日掲載された。Williams氏は、「本研究結果は、AIモデルの言うことを盲目的に信頼するべきではないという、臨床医に対する重要なメッセージだ」と話している。

幸福感が脳卒中や心筋梗塞からあなたを守る

 幸福感が高い人ほど、脳卒中や心筋梗塞のリスクが低いことを示唆するデータが報告された。中国科学技術大学脳卒中センターのWen Sun氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association」に9月18日掲載された。  論文の上席著者であるSun氏は、「われわれの研究結果は、人々の精神的な健康を高めることが心臓や脳の病気の予防に不可欠な要素であることを意味しており、健康管理への総合的なアプローチの重要性を支持するものと言える」と述べている。さらに同氏は、「医療専門家は、患者の幸福を高める効果的な方法として、習慣的な身体活動、社会活動、ストレス管理テクニックを推奨するなど、生活満足度と幸福感を向上させる戦略を、日常のケアの一部として含めることを検討する必要があるのではないか」とも付け加えている。

双極症に対する抗精神病薬と気分安定薬の投与量が再発リスクに及ぼす影響

 双極症患者は、症状や治療に苦しんでいるにもかかわらず、効果的な治療レジメンを見出すことは困難である。東フィンランド大学のJonne Lintunen氏らは、双極性障害患者における、さまざまな用量の抗精神病薬および気分安定薬に関連する再発リスク、治療の安全性を調査した。Acta Psychiatrica Scandinavica誌オンライン版2024年10月2日号の報告。  1996〜2018年のフィンランド全国レジストリより、15〜65歳の双極症患者を特定した。対象となる抗精神病薬には、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピプラゾール、気分安定薬には、リチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンを含めた。各薬剤の時間変動用量カテゴリーは、使用量に応じて低用量、標準用量、高用量に分類した。アウトカムは、再発リスク(精神科入院)、治療の安全性(非精神科入院)のリスクとした。分析には、個人内の層別Cox回帰を用いた。

乳がんへのドセタキセルとパクリタキセル、眼科有害事象リスクに差/日本癌治療学会

 乳がん周術期療法におけるドセタキセルとパクリタキセルの眼科有害事象のリスクを比較した結果、ドセタキセルはパクリタキセルと比較して流涙症のリスクが有意に高かった一方で、黄斑浮腫や視神経障害などのリスクは有意差を認めなかったことを、東京大学の祝 千佳子氏が第62回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で発表した。  タキサン系薬剤は好中球減少症や末梢神経障害などさまざまな有害事象を来すことが広く知られているが、眼科有害事象についても報告がある。しかし、ドセタキセルとパクリタキセルの間で眼科有害事象を比較した研究は乏しい。そこで研究グループは、早期乳がんの周術期療法としてドセタキセルまたはパクリタキセルを使用した群で、眼科有害事象の発現リスクに差があるかどうかを比較するために研究を実施した。

高リスクmHSPCに対するアビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較~日本のリアルワールドデータ

 転移を有するホルモン感受性前立腺がん(mHSPC)に対する、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドという3剤のアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)の有効性と安全性を比較した多施設共同研究の結果、全生存期間(OS)、がん特異的生存期間(CSS)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)までの期間について、3剤の差はみられなかった。東京慈恵会医科大学の柳澤 孝文氏らによるProstate誌オンライン版2024年10月17日号掲載の報告。  本研究では、2015年9月~2023年12月にARPI+アンドロゲン除去療法を受けたmHSPC患者668例の記録を後ろ向きに解析した。LATITUDE基準に基づき、アビラテロン、エンザルタミド、アパルタミドの比較は高リスク患者のみで行われ、前立腺特異抗原(PSA)低下率95%および99%達成などのPSA反応、OS、CSS、CRPCまでの期間、有害事象(AE)の発生率が比較された。すべての2群間比較において、交絡因子の影響を最小化するために傾向スコアマッチングが用いられた。