医療一般|page:55

初発統合失調症のミエリン形成不全と認知機能低下との関係

 統合失調症患者の皮質領域におけるミエリン形成不全は、これまでの死後脳研究により明らかとなっており、異常な脳の成熟過程を反映している可能性がある。しかし、この異常なミエリン形成が統合失調症の初期段階からすでに存在しているのか、疾患の経過中に進行するのか、両方であるのかは現時点でよくわかっていない。富山大学の小林 春子氏らは、初発統合失調症患者の皮質内ミエリン形成の潜在的マーカーとして灰白質/白質コントラスト(GWC)を調査し、GWCの所見と臨床および認知機能との関連について検討を行った。Cerebral Cortex誌2024年1月31日号の報告。  初発統合失調症患者63例および健康対照者77例を対象に、GWCの調査を目的としたMRI研究を実施した。初発統合失調症患者におけるGWCの所見と臨床/認知的変数との関連も調査した。

RET融合遺伝子陽性の固形がん、セルペルカチニブの有効性(LIBRETTO-001)/日本臨床腫瘍学会

 RET融合遺伝子は主に非小細胞肺がん(NSCLC)や甲状腺がんにみられるが、それ以外のがん種でもまれではあるものの認められることがある。RET受容体型チロシンキナーゼ阻害薬セルペルカチニブは、本邦ではNSCLC、甲状腺がん、甲状腺髄様がんにおける治療薬として用いられている。セルペルカチニブは脳転移を有するNSCLC患者において良好な頭蓋内奏効を示し、肺がん・甲状腺がん以外のRET融合遺伝子陽性の進行固形がんでも、有望な抗腫瘍活性を示すことが報告されている。第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、大江 裕一郎氏(国立がん研究センター中央病院 副院長/呼吸器内科長)が、国際共同第I/II相バスケット試験(LIBRETTO-001)の肺がん・甲状腺がん以外の患者を対象とした最新の解析結果を報告した。

市中誤嚥性肺炎、嫌気性菌カバーは必要?

 誤嚥性肺炎の治療において、本邦では嫌気性菌カバーのためスルバクタム・アンピシリン(SBT/ABPC)などが用いられることがある。しかし、海外では誤嚥性肺炎の0.5%にしか嫌気性菌が認められなかったという報告もあり、米国胸部学会/米国感染症学会(ATS/IDSA)の市中肺炎ガイドライン2019では、嫌気性菌カバーは必須ではないことが記載された。また、2023年に実施されたシステマティックレビューにおいて、嫌気性菌カバーの有無により、誤嚥性肺炎患者に転帰の差はみられなかったことも報告されている。しかし、本レビューに含まれた論文は3本のみであり、サンプルサイズも小さく、結論を導くためには大規模研究が必要である。そこで、カナダ・クイーンズ大学のAnthony D. Bai氏らは、約4千例の市中誤嚥性肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きコホート研究を実施した。その結果、嫌気性菌カバーは院内死亡リスクを低下させず、C. difficile大腸炎リスクを上昇させた。本研究結果は、Chest誌オンライン版2月20日号で報告された。

医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  心房細動患者の症状・機能や生活の質を最適化することが、外来における主な治療目標であるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。

薬不足をリアルに感じている患者は2割/アイスタット

 近年では、都市部で24時間営業の薬局が出現したり、インターネットで市販薬が購入できたりと市販薬購入のハードルはさらに下がってきた。また、不急ではない病気やけがでは、医療機関に頼らず市販薬で様子をみるという人も多いのではないだろうか。  こうした「薬をもらうなら病医院へ」の常識が変わりつつある今、薬不足、オーバードーズなど薬に関する深刻な問題も顕在する。また、一般人のジェネリック医薬品(後発品)の服用状況や飲み切らなかった処方箋薬の扱いなどの実態を知るためにアイスタットは、薬に関するアンケート調査を2016年5月の第1回に続き、今回実施した。

ADHDと6つの精神疾患リスクとの関連

 注意欠如・多動症(ADHD)とさまざまな精神疾患との合併率の高さは、観察研究や診断基準などから示唆されている。中国・重慶医科大学のYanwei Guo氏らは、ADHDと6つの精神疾患との潜在的な遺伝的関連性を調査するため、メンデルランダム化(MR)研究を実施した。BMC Psychiatry誌2024年2月5日号の報告。  2サンプルのMRデザインを用いて、ADHDと6つの精神疾患のゲノムワイド関連研究(GWAS)に基づき、遺伝的操作変数(IV)をシステマティックにスクリーニングした。主なアプローチとして、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。

非ウイルス性肝疾患による死亡リスクは女性の方が高い

 飲酒やメタボリックシンドローム(MetS)が関与して生じる肝臓の病気は、男性に比べて女性は少ないものの、それによる死亡率は男性よりも女性の方が高いことが報告された。青島大学医学院付属医院(中国)のHongwei Ji氏、米シダーズ・サイナイ医療センター、シュミット心臓研究所のSusan Cheng氏が、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを解析した結果であり、「Journal of Hepatology」2月号にレターとして掲載された。  肝臓の病気の原因のうち、C型肝炎などのウイルスによるものは治療が進歩して患者数が減少している一方で、MetSなどの代謝性疾患に伴う脂肪性肝疾患「MASLD」やアルコール関連の肝疾患「ALD」、および代謝性疾患とアルコール双方の影響による肝疾患「MetALD」と呼ばれる肝疾患が増加している。Cheng氏は、それらの肝疾患の有病率と死亡率の実態を性別に検討した。

B7-H3標的ADCのI-DXd、固形がんへの有効性・安全性は?/日本臨床腫瘍学会

 既治療の進行・転移固形がん患者を対象として、抗B7-H3(CD276)抗体薬物複合体ifinatamab deruxtecan(I-DXd;DS-7300)の有用性が検討されている。第I/II相試験(DS7300-A-J101)の小細胞肺がん(SCLC)、食道扁平上皮がん(ESCC)、去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)、扁平上皮非小細胞肺がん(sqNSCLC)における最新結果が、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)において、土井 俊彦氏(国立がん研究センター 先端医療開発センター長)により報告された。  B7-H3は免疫関連分子であり、多くの固形がんで発現が認められるが、正常組織では発現しないか非常に低発現であると報告されている。また、B7-H3が高発現であると、予後が不良であることも報告されている1,2)。I-DXdは、国内で製造販売承認を取得しているトラスツズマブ デルクステカン(商品名:エンハーツ)と同じリンカーとペイロードを用いた製剤である。

小児尋常性乾癬、アプレミラストの有用性を第III相試験で検証

 中等症~重症の6~17歳の尋常性乾癬患者において、アプレミラストはプラセボと比較して全般的な疾患活動性および皮膚症状を有意に改善したことが、海外第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SPROUT試験」の結果で示された。カナダ・アルバータ大学Stollery Children's HospitalのLoretta Fiorillo氏らが報告した。経口ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬のアプレミラストは、成人の尋常性乾癬患者に対する使用が、わが国を含め国際的に承認されている。しかし、中等症~重症の小児尋常性乾癬患者に対して使用が承認されている全身性治療薬は限られている。アプレミラストについては、第II相試験の探索的解析で小児患者の皮膚症状を改善することが示され、さらなる検討が支持されていた。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2024年1月22日号掲載の報告。

日本人の睡眠時間やその変化が認知症リスクに及ぼす影響

 睡眠時間およびその変化が長期的な認知症リスクに及ぼす影響について、これまでの研究結果は一貫していない。長崎大学の宮田 潤氏らは、日本人の中年期における睡眠時間およびその変化と認知症リスクとの関連を調査するため、本研究を実施した。その結果、長時間睡眠および睡眠時間の増加が認知症リスクと関連することが示唆された。Preventive Medicine誌オンライン版2024年2月2日号の報告。  研究チームは、40~71歳の日本人4万1,731人を募集し、ベースライン時(1990~94年)の習慣的な睡眠時間および5年間のフォローアップ調査について記録した。睡眠時間の変化はベースライン時と5年間の測定結果の差として算出し、認知症の発症は介護保険制度の利用(2007~16年)で特定した。認知症発症のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の算出には、エリア層別Coxモデルを用いた。

新たな薬剤耐性大腸菌の広がりに科学者が警戒

 中国の小児病院で、抗菌薬に耐性を持つ大腸菌が新たに確認された。英国の研究グループによると、中国の病院で最も一般的となった薬剤耐性大腸菌は、最後の砦とされるカルバペネム系抗菌薬にも耐性を持つ配列タイプ(sequence type;ST)410に属する大腸菌(ST410)であるが、中国の小児病院で発生した2件の大腸菌アウトブレイクの背景には、B5/H24RxCと呼ばれるST410より強毒性の大腸菌が関与していたことが判明したという。英バーミンガム大学微生物学・感染症研究所所長のAlan McNally氏らによる研究で、詳細は、「Nature Communications」に1月12日掲載された。

小児への15価肺炎球菌ワクチン、定期接種導入に向けて/MSD

 MSDが製造販売を行う15価肺炎球菌結合型ワクチン(商品名:バクニュバンス、PCV15)は、2022年9月に国内で成人を対象として承認を取得し、2023年6月には小児における肺炎球菌感染症の予防についても追加承認を取得した。小児への肺炎球菌ワクチンは、2013年4月に7価ワクチン(PCV7)が定期接種化され、2013年11月より13価ワクチン(PCV13)に切り替えられたが、2023年12月20日の厚生労働省の予防接種基本方針部会において、2024年4月から本PCV15を小児の定期接種に用いるワクチンとする方針が了承された。同社は2月22日に、15価肺炎球菌結ワクチンメディアセミナーを実施し、峯 眞人氏(医療法人自然堂峯小児科)が「小児における侵襲性肺炎球菌感染症の現状と課題」をテーマに講演した。

進行固形がんのリキッドバイオプシーにおける偽陽性/日本臨床腫瘍学会

 血漿検体を用いて遺伝子のシークエンス解析を行うリキッドバイオプシーはがん治療で広く用いられている。血漿中にはがん由来のDNAと共に血液由来のDNAも存在するが、通常は結果に影響しない。しかし、加齢などにより、遺伝子異常を持った血液細胞が増殖するクローン性造血(CH)が起こり、これらをがん由来の遺伝子異常と判断することで起こる偽陽性が懸念されている。

局所進行直腸がん術前治療におけるctDNA活用に期待/日本臨床腫瘍学会

 局所進行直腸がんの術前治療の決定において、血中循環腫瘍DNA(ctDNA)解析の有用性が示唆された。  局所進行直腸がんでは手術後の再発が問題だったが、直腸間膜全切除(TME)手術や術前化学放射線療法 (CRT)によって局所再発のコントロールが実現した。近年では術前化学療法 (NAC)や、CRTに化学療法を追加するTotal Neoadjuvant Therapy(TNT)が登場し、遠隔再発の抑制が報告されている。一方、すべての患者にTNTを行うべきか明確な基準はなく、一部の患者では過剰治療も懸念されている。  そのような中、術後再発予想因子としてctDNAの役割が期待されている。大阪大学の浜部 敦史氏らは、術前治療後ctDNAの状況が局所進行直腸がんの再発に影響するかを検討したCIRCULATE-Japan GALAXY trialの結果を、第21回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2024)で発表した。

ブロッコリーが慢性炎症と死亡を低減?

 わが国において、2026年からブロッコリーが農林水産省の指定野菜(重要な野菜として位置付けているもの)に追加されることになった。そのブロッコリーが、全身の慢性炎症と死亡率の低下に関連していたことが、米国・サウスフロリダ大学のNicholas W. Carris氏らによって明らかになった。Journal of Medicinal Food誌オンライン版2024年2月14日号掲載の報告。  全身性の異常な炎症が続くことで、心血管系やがんなどのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。食事習慣の中には、炎症に関連するものもあれば、炎症を抑えて健康を改善するものもある。そこで研究グループは、慢性炎症と死亡率に関連する食品を特定するため、前向きコホート研究を実施した。

日本人のうつ病に対するブレクスピプラゾールvs.アリピプラゾール

 抗うつ薬治療に対し効果不十分な日本人のうつ病患者における、ブレクスピプラゾールとアリピプラゾールの有効性、受容性、忍容性、安全性プロファイルの違いを検討するため、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。その結果、全体としてブレクスピプラゾールとアリピプラゾールは、同程度の有効性が認められ、良好なリスクベネフィットバランスを有していることが確認された。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2024年1月14日号の報告。  変量効果モデルを用いたシステマティックレビュー、および頻度主義ネットワークメタ解析を行った。主要アウトカムは、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコアとした。その他のアウトカムには、臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコア、社会機能評価尺度(SFS)、非治療反応率、非寛解率、すべての原因による治療中止、有害事象による治療中止、1つ以上の有害事象発現、重篤な有害事象、アカシジア、振戦、体重増加を含めた。

迷走神経刺激療法とリハビリの併用が脳卒中後の上肢の機能回復に有効

 脳卒中の後遺症で腕が不自由になることの影響は計り知れないほど大きいが、脳卒中を経験した人に希望をもたらす臨床試験の結果が明らかになった。迷走神経刺激療法(VNS)と集中的なリハビリテーション(リハビリ)を組み合わせることで、障害が残った腕や手をコントロールする機能の回復を促せる可能性のあることが示された。この試験は米MGHインスティテュート・オブ・ヘルス・プロフェッションズのTeresa Kimberley氏らが実施したもので、国際脳卒中学会(ISC 2024、2月7~9日、米フェニックス)で報告された。

白内障手術で軽度認知障害患者の認知機能が改善か

 高齢の軽度認知障害(MCI)患者は、白内障手術を受けると認知機能が改善する可能性のあることが、順天堂東京江東高齢者医療センター眼科の吉田悠人氏らの研究グループが実施した前向きコホート研究から明らかになった。一方で、認知症患者では白内障手術前後で認知機能テストのスコアに有意な変化は見られなかったことから、研究グループは「認知機能の改善を期待するには、認知症の前段階で白内障手術を行うことが望ましい可能性がある」と述べている。研究の詳細は「Acta Ophthalmologica」に12月25日掲載された。