医療一般|page:2

家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析

 インフルエンザの感染対策では、手指衛生やマスク着用などの非薬物介入が推奨されることが多いが、家庭における感染対策は比較的研究が進んでいない分野である。今回、中国・香港大学のJessica Y. Wong氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析により、非薬物介入は家庭内感染には影響を及ぼさなかったことが明らかになった。International Journal of Infectious Diseases誌オンライン版2024年11月4日号掲載の報告。  インフルエンザウイルス感染は、主に人と人との濃厚接触によって広がり、伝播の多い環境の1つが家庭である。そのため、家庭内で実施可能な非薬物介入はインフルエンザの制御において重要な役割を果たす可能性がある。そこで研究グループは、多くの国で推奨されている9つの非薬物介入(手指衛生、咳エチケット、マスク、フェイスシールド、清掃、換気、加湿、感染者の隔離、物理的距離の確保)が家庭内のインフルエンザ感染予防として有効かどうかを評価するために調査を実施した。

統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析

 長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬は、症状の重症度や入院リスクの軽減など、統合失調症患者のアウトカム改善に寄与する。しかし、経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた場合のアウトカムは十分に明らかになっていない。サウジアラビア・Jazan UniversityのAmani Kappi氏らは、統合失調スペクトラム症患者における経口抗精神病薬からLAI抗精神病薬に切り替えた際の臨床アウトカム、QOL、医療利用アウトカムを明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Journal of the American Psychiatric Nurses Association誌オンライン版2024年10月23日号の報告。

「週末戦士」でも脳の健康に利点あり

 週に1〜2回しか運動をしない「週末戦士」でも、運動を全くしない人に比べると、高齢になったときの頭の回転の速さは定期的に運動をしている人と同等であることが、新たな研究で明らかになった。ロス・アンデス大学(コロンビア)スポーツ科学分野のGary O’Donovan氏らによるこの研究結果は、「British Journal of Sports Medicine」に10月29日掲載された。研究グループは、「本研究は、週末戦士の運動パターンと定期的な運動パターンの双方が、軽度認知症(MCI)のリスク低下に同程度の効果があることを示した初の前向きコホート研究だ」と述べている。

減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性

 インクレチン製剤であるGLP-1受容体作動薬などの減量薬を、より広い対象に適用して多くの人がアクセスできるようにすることで、米国では年間4万人以上の命が救われる可能性があるとする論文が発表された。米イェール大学公衆衛生大学院のAlison Galvani氏らの研究によるもので、詳細は「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」に10月15日掲載された。  肥満が死因として記録されることはめったにない。しかし、肥満は心血管代謝疾患をはじめとする多くの疾患のリスクを押し上げ、結果としてそれらの疾患による死亡リスクを高めている。米国では人口の74%が過体重や肥満(うち43%が肥満)に該当し、公衆衛生上の極めて大きな問題となっている。

抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連

 抗てんかん薬が早期に処方されていた患者は、そうでない患者に比べて認知症発症リスクが低下する可能性を示唆するデータが報告された。横浜市立大学大学院医学研究科脳神経外科学の池谷直樹氏らが国内のレセプトデータを用いて行った解析の結果であり、「Alzheimer's & Dementia: Translational Research & Clinical Interventions」に9月10日、短報として掲載された。  アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患による認知症(変性性認知症)は、脳内でのアミロイドβやタウタンパク質の蓄積が主要な原因と考えられており、それらの変化は変性性認知症発症のかなり以前から生じていることが知られている。また、変性性認知症と関連しててんかん様の症状を来すことがあり、そのような病態に対しては抗てんかん薬が変性性認知症治療に対して現在使われている薬剤とは別の機序で、進行抑制に寄与する可能性が、基礎実験や小規模な症例報告で示されている。しかし、これまで大規模なデータを用いた研究で、その効果が示されたことがなかった。これを背景として池谷氏らはレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いたコホート研究を行った。

肺動脈性肺高血圧症治療剤ユバンシ配合錠が発売/ヤンセン

 Johnson & Johnson(法人名:ヤンセンファーマ)は2024年11月20日、肺動脈性肺高血圧症治療薬として、エンドセリン受容体拮抗薬マシテンタン10mgとホスホジエステラーゼ5阻害薬タダラフィル40mgとの配合薬「ユバンシ配合錠」を発売した。  マシテンタン/タダラフィルは、国際共同第III相ピボタル試験(A DUE試験)の結果に基づき、9月24日に肺動脈性肺高血圧症を効能または効果として国内の製造販売承認を取得した、1日1回服用の配合錠である。

TN乳がんへのサシツズマブ ゴビテカン、販売開始/ギリアド

 ギリアド・サイエンシズは2024年11月20日、化学療法歴のある手術不能または再発のホルモン受容体陰性/HER2陰性(トリプルネガティブ)乳がんの治療薬として、TROP-2を標的とする抗体薬物複合体(ADC)であるサシツズマブ ゴビテカン(商品名:トロデルビ)の日本における販売開始を発表した。  サシツズマブ ゴビテカンは、2024年9月24日に国内製造販売承認を取得。この承認は、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象に、サシツズマブ ゴビテカンと医師が選択した治療の有効性と安全性を比較した海外での第III相臨床試験(ASCENT)と、2つ以上の化学療法歴のある手術不能または再発のトリプルネガティブ乳がん患者を対象にサシツズマブ ゴビテカンの有効性と安全性を評価した国内の第II相臨床試験(ASCENT-J02)の結果に基づくものである。

ROS1陽性NSCLCへの新たな選択肢レポトレクチニブ、その特徴は?/BMS

 ブリストル・マイヤーズ スクイブは、ROS1阻害薬レポトレクチニブ(商品名:オータイロ)について、2024年9月24日に「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応で製造販売承認を取得した。そこで、ブリストル・マイヤーズ スクイブは「ROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺癌についてのメディアセミナー」を2024年11月14日に実施した。  「ROS1融合遺伝子陽性肺癌に対する治療戦略」と題し、後藤 功一氏(国立がん研究センター東病院 副院長・呼吸器内科長)がROS1融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療の変遷とレポトレクチニブの特徴について紹介した。

低リスク肺塞栓症がん患者のVTE再発、リバーロキサバン18ヵ月vs. 6ヵ月(ONCO PE)/AHA2024

 低リスク肺塞栓症(PE)を発症したがん患者を対象に、直接経口抗凝固薬(DOAC)であるリバーロキサバンの投与期間を検討したONCO PE試験の結果が、京都大学循環器内科の山下 侑吾氏らにより、11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表され、Circulation誌2024年11月18日号に同時掲載された。  本研究より、リバーロキサバンの18ヵ月間の投与は6ヵ月間の投与に比べ、静脈血栓塞栓症(VTE)の再発リスクを有意に低下させ、一方で出血リスクは有意な上昇を認めず、「がん患者の低リスクPEに対するDOACを用いた抗凝固療法は、血栓症予防の観点から18ヵ月間のより長期的な投与が望ましい」との結果が得られた。

大腸がん検診、現時点では血液検査よりも大腸内視鏡検査が優れる

 大腸がん検診において、新たな検査選択肢である血液検査は大腸内視鏡検査ほど有効ではないことが、米スタンフォード大学医学部消化器・肝臓内科学教授のUri Ladabaum氏らのレビューによって明らかになった。血液検査を推奨通りに3年に1回受けている人では、大腸内視鏡検査を10年に1回受けている人と比べて、大腸がんによる死亡が約2.5倍多く発生すると推定された。Ladabaum氏らは、大腸内視鏡検査や便の検査ではなく血液検査を選択する人が多くなると、大腸がんによる死亡が増加するとの予測を示している。この研究結果は、「Annals of Internal Medicine」に10月29日掲載された。

うつ病に対するブレクスピプラゾール補助療法、安定後は継続または中止?

 カナダ・トロント大学のRoger S. McIntyre氏らは、抗うつ薬治療とブレクスピプラゾール補助療法の併用により安定したうつ病患者における、ブレクスピプラゾール補助療法の継続または中止による再発までの期間を比較するため、第III相多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間ランダム化中止試験を実施した。Acta Neuropsychiatrica誌オンライン版2024年10月17日号の報告。  対象は、2〜3回の抗うつ薬治療で効果不十分であったうつ病成人患者1,149例。すべての患者に対し、ブレクスピプラゾール2〜3mg/日による補助療法を開始した(第A相、6〜8週間)。症状が安定した患者(第B相、12週間)489例は、ブレクスピプラゾール補助療法群(継続群)240例またはプラセボ補助療法群(中止群)249例に1:1でランダムに割り付けられた(第C相、26週間)。主要エンドポイントは第C相における再発までの期間、副次的エンドポイントはうつ病評価尺度スコアの変化とした。

アジア人女性のBMIと乳がんの関連、欧米人との違い~32万人のデータ解析

 BMIと乳がんリスクの関連は、アジア人女性と欧米人女性で異なることが示唆されている。アジア人においては、閉経後女性でBMIと乳がんの正の相関が線形か非線形か、また閉経前女性でBMIと乳がんの相関が正か負かについて、以前の研究で矛盾した結果が報告されている。今回、岐阜大学の和田 恵子氏らは、複数のコホート研究から集められた約32万人のデータを使用して、閉経前および閉経後の日本人を含む東アジア人女性におけるBMIと乳がん発症率との関連を調べた。その結果、閉経後女性ではBMIと乳がんリスクに正の相関がみられたが、BMIが高くなると傾きが緩やかになった。また、閉経前女性で逆相関はみられなかった。Breast Cancer Research誌2024年11月14日号に掲載。

フィネレノンによるカリウムの影響~HFmrEF/HFpEFの場合/AHA2024

 左室駆出率(LVEF)が軽度低下した心不全(HFmrEF)または保たれた心不全(HFpEF)患者において、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)のフィネレノン(商品名:ケレンディア)は高カリウム血症の発症頻度を高めたが、その一方で低カリウム血症の発症頻度を低下させたことが明らかになった。ただし、プロトコールに沿ったサーベイランスと用量調整を行った場合、プラセボと比較し、カリウム値が5.5mmol/Lを超えた患者でもフィネレノンの臨床的な効果は維持されていた。本研究結果は、米国・ミネソタ大学のOrly Vardeny氏らが11月16~18日に米国・シカゴで開催されたAmerican Heart Association’s Scientific Sessions(AHA2024、米国心臓学会)のFeatured Scienceで発表し、JAMA Cardiology誌オンライン版2024年11月17日号に同時掲載された。

日本人に対するニボルマブのNSCLC周術期治療(CheckMate 77T)/日本肺癌学会

 ニボルマブは、切除可能非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する術前補助療法として本邦で使用されているが、米国ではこれに加えて、2024年10月に術前・術後補助療法としての適応も取得している。その根拠となった第III相「CheckMate 77T試験」の日本人集団の結果について、産業医科大学の田中 文啓氏が第65回日本肺癌学会学術集会で発表した。 試験デザイン:国際共同無作為化二重盲検第III相試験 対象:切除可能なStageIIA(>4cm)~IIIB(N2)のNSCLC患者(AJCC第8版に基づく) 試験群:ニボルマブ(360mg、3週ごと)+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→ニボルマブ(480mg、4週ごと)を最長1年(ニボルマブ群:229例) 対照群:プラセボ+プラチナダブレット化学療法(3週ごと)を4サイクル→手術→プラセボを最長1年(プラセボ群:232例)

インフル・コロナワクチン接種、同時vs.順次で副反応に差はあるか

 インフルエンザワクチンと新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するmRNAワクチンを同時に接種した場合、1~2週間空けて両ワクチンを順次接種した場合と比較して、中等度以上の発熱、悪寒、筋肉痛などの発生状況に差はみられないことが、無作為化プラセボ対照臨床試験の結果示された。米国・Duke University School of MedicineのEmmanuel B. Walter氏らがJAMA Network Open誌2024年11月6日号に報告した。これまで、両ワクチンの同時接種の安全性に関する無作為化臨床試験データは限定的であった。  本試験は、2021年10月8日~2023年6月14日に米国の3施設で実施された。参加者は5歳以上で妊娠しておらず、4価インフルエンザ不活化ワクチン(IIV4)とCOVID-19のmRNAワクチンの両方を接種する意思のある者であった。1回目には、mRNA COVID-19ワクチンと同時にIIV4または生理食塩水を、反対側の腕に筋肉内投与した。1~2週間後、2回目として1回目に生理食塩水を投与された参加者にはIIV4を、1回目にIIV4を投与された参加者には生理食塩水を投与した。

日本の小中高生の自殺リスク「学校に行きたくない」検索量と関連

 自殺は、日本における小児および青年期の主な死因となっている。自殺リスクの検出に、インターネットの検索量が役立つ可能性があるが、小児および青年期の自殺企図とインターネット検索量との関連を調査した研究は、これまでほとんどなかった。多摩大学の新井 崇弘氏らは、自殺者数と学校関連のインターネット検索量との関連を調査し、小児および青年期の自殺予防の主要な指標となりうる検索ワードの特定を試みた。Journal of Medical Internet Research誌2024年10月21日号の報告。

筋トレを数週間休んでも再開後は速やかに筋肉が元に戻る

 ウェイトトレーニングをしている人の中には、何らかの理由でしばらくジム通いができなくなったときに、筋肉量や筋力が大きく低下してしまうことを心配する人がいるかもしれない。しかし、新たな研究により、たとえ数週間トレーニングを休んだとしても、再開すれば速やかに元のレベルに回復することが分かった。ユヴァスキュラ大学(フィンランド)のEeli Halonen氏らの研究によるもので、詳細は「Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports」に10月4日掲載された。

除細動器での心肺蘇生、1分の遅れが大きな影響

 除細動器による初回電気ショックを待つ時間が1分増えるごとに、心停止から生き延びる確率が6%低下することが、アムステルダム大学医療センター(オランダ)のRemy Stieglis氏らによる研究で明らかになった。この研究の詳細は、「Circulation」に10月27日掲載された。  Stieglis氏らは、オランダ北ホラント州で進行中の心肺蘇生に関する研究データを用いて、目撃者がいる状態で院外心停止を起こした患者3,723人を対象に、初回電気ショックが与えられるまでの時間と除細動成功率との関係について検討した。患者は、最初に記録された心電図リズムで心室細動(VF)が確認されていた。初回電気ショックまでの遅延は、最初の緊急通報からいずれかの除細動器による最初の電気ショックまでの時間と定義された。

慢性期統合失調症患者の低握力が認知機能や精神症状と関連

 握力の低さや非対称性は、認知機能の低さと関連していることが報告されている。しかし、統合失調症入院患者における握力の低さと精神症状、握力の非対称性と認知機能および精神症状との関連は不明である。中国・Southwest Medical UniversityのJianlin Pu氏らは、慢性期統合失調症入院患者の認知機能および精神症状を評価する指標としての握力の妥当性を評価するため、本検討を実施した。PLOS ONE誌2024年9月26日号の報告。  2023年8月、慢性期統合失調症入院患者235例を募集した。利き手の握力を3回測定し、最高値を用いて低握力患者(男性:28kg未満、女性:18kg未満)を特定した。非利き手の握力と利き手の握力の比が0.9〜1.1の範囲外であった場合、非対称群と定義した。認知機能の評価にはモントリオール認知評価中国版(MoCA-C)、精神症状の評価には陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いた。握力と評価尺度スコアとの関連を評価するため、一般化線形モデル分析を用いた。

日本の新型コロナワクチン接種意向、アジア5地域で最低/モデルナ

 モデルナ・ジャパンは11月13日付のプレスリリースで、同社が日本およびアジア太平洋地域のシンガポール、台湾、香港、韓国(アジア5市場)において実施した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と新型コロナワクチンに対する意識調査の結果を発表した。その結果、日本は、新型コロナワクチンの接種意向、新型コロナとインフルエンザのワクチンの同時接種意向共に、アジア5地域で最低となった。