循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:132

PCI後、CYP2C19 LOFアレルに基づく薬剤選択vs.標準治療/JAMA

 急性冠症候群(ACS)または安定冠動脈疾患(CAD)で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けたCYP2C19*2/*3機能喪失型(loss-of-function:LOF)アレルの保有者において、遺伝子検査に基づき経口P2Y12阻害薬を選択する治療戦略は、遺伝子検査なしの従来のクロピドグレル療法と比較し、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・ステント血栓症・重度虚血再発の複合エンドポイントに関して、統計学的な有意差を示さなかった。米国・メイヨー・クリニックのNaveen L. Pereira氏らが、無作為化非盲検比較試験「TAILOR-PCI試験」の結果を報告した。PCI後にクロピドグレルによる治療を受けたCYP2C19 LOFアレル保有者は、虚血性イベントリスクが高まることが示されている。遺伝子型に基づく経口P2Y12阻害薬の選択によりアウトカムが改善するかどうかは不明であった。JAMA誌2020年8月25日号掲載の報告。

Digital Medicineの世紀:Apple Watchによる心房細動の検出(解説:香坂俊氏)-1279

自分は腕時計をしない。手洗いのときに邪魔だからとか、腕が片方だけ重いからとか、病院からプレゼントされるガラケーで時間を見られるからとかいろいろと理由はあるのだが、実は必ずどこかに忘れてきてしまうから、というのがその最大の理由である(ガラケーやスマホもよく忘れるが、こちらはなんとか追跡できる)。しかし、そんな自分でも最近のスマートウォッチの動向には興味を持っている。たとえばApple Watchには、Steve Jobsの意向を受けて脈拍計や心電計が装備されており、これが循環器領域でどのように活用されていくのか非常に興味を引くところである。とくに、こうしたデジタルヘルスケアデータは随時更新され続けるため、1回で終わってしまう外来での検査や診察室でのバイタルチェックと異なり、蓄積されるデータ量が根本的に異なる。

ACE阻害薬とARBがCOVID-19重症化を防ぐ可能性/横浜市立大学

 新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されている。  今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行った。Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告。

カナグリフロジンの下肢切断リスク、65歳以上CVD患者で増大/BMJ

 SGLT2阻害薬カナグリフロジンの下肢切断リスクについて、心血管疾患のある65歳以上において最も明白な増大が認められること、追加有害アウトカムの発生に関する必要治療数(NNT)は6ヵ月で556例(切断例はカナグリフロジン投与1万例当たり18例超)であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院・ハーバード大学医学大学院のMichael Fralick氏らによる検討で明らかにされた。GLP-1受容体作動薬投与群と比較した下肢切断リスクは1.73倍で、発生率の差は1,000人年当たり3.66であったという。先行研究のカナグリフロジンの心血管アウトカムを検討した試験「CANVAS試験」では、カナグリフロジン群がプラセボ群よりも下肢切断リスクが2倍近く高いことが確認されており、同試験対象者が従前試験よりも10歳以上高齢であったこと、またベースラインの心血管リスクが高かったことから、切断リスクの上昇は限定される可能性が示唆されていた。著者は、「今回の結果は、日常的ケアにおけるカナグリフロジン投与の、切断リスクを明らかにするものである」と述べている。BMJ誌2020年8月25日号掲載の報告。

AFIRE試験が世界に投げかけたこと(解説:香坂俊氏)-1281

AFIRE試験がNEJM誌に発表された。そのデザインや主要な結果に関しては、さまざまな学会や研究会で議論がなされており、その解釈に関しても広く議論がなされている。AFIREのデザインと主要な結果・心房細動を持つ安定冠動脈疾患の患者さんを対象に「リバーロキサバン(経口抗凝固薬)単独」と「リバーロキサバン+抗血小板薬併用」との比較を行ったわが国の多施設共同のランダム化比較研究。・2017年9月末までに2,240例が登録され、2年以上の観察期間を予定していたが、データ安全性モニタリング委員会の勧告に基づき2018年7月に研究を早期終了。

交叉するKaplan Meier曲線を巡って:皮下植込み型除細動器(S-ICD)の場合(解説:香坂俊氏)-1280

突然心停止の原因となる不整脈(心室細動等)の発生時に心臓にDCショックを送り、正常な心拍に戻す機器としてICD(植込み型除細動器)が知られている。このICDはペースメーカーとは若干位置付けが異なることに注意されたい。図. ペースメーカーとICDの違い。ペースメーカーがSick Sinus(洞不全症候群)やAV Block(房室ブロック)のような徐脈性不整脈に対して弱い電流を断続的にピシピシと流して心臓を拍動させるのに対し、ICDはVF(心室細動)等の頻脈性不整脈に対して強い電流を一度だけドカーンと流して心臓の拍動をリセットする。

FHホモ接合体のevinacumab併用、LDL-Cを40%低下/NEJM

 最大用量の脂質低下療法を受けているホモ接合型家族性高コレステロール血症(FH)の患者において、evinacumabを併用することでLDLコレステロール(LDL-C)値がベースラインよりも大幅に低下したのに対し、プラセボではLDL-C値がわずかに上昇し、24週の時点で群間差が49.0ポイントに達したとの研究結果が、南アフリカ共和国・ウィットウォータースランド大学のFrederick J. Raal氏らによって報告された。「ELIPSE HoFH試験」と呼ばれるこの研究の成果は、NEJM誌2020年8月20日号に掲載された。ホモ接合型FHは、LDL-C値の異常な上昇によって引き起こされる早発性の心血管疾患を特徴とする。この疾患は、LDL受容体活性が実質的に消失する遺伝子変異(null-null型)または障害される遺伝子変異(non-null型)と関連している。また、アンジオポエチン様3(ANGPTL3)をコードする遺伝子の機能喪失型変異は、低脂血症や、アテローム性動脈硬化性心血管疾患への防御と関連している。ANGPTL3に対するモノクローナル抗体であるevinacumabは、ホモ接合型FH患者にとって有益である可能性が示されていた。

がん治療で心疾患リスクを伴う患者の実態と対策法/日本循環器学会

 第84回日本循環器学会学術集会(2020年7月27日~8月2日)で佐瀬 一洋氏(順天堂大学大学院臨床薬理学/早稲田大学医療レギュラトリーサイエンス研究所)が「腫瘍循環器診療の拡がりとCardio-Oncology Rehabilitation(CORE)」について発表。がんを克服した患者の心血管疾患発症リスクやその予防策について講演した。  がん医療の進歩により、がんは不治の病ではなくなりつつある。言い換えるとがん治療の進歩により生命予後が伸びる患者、がんサバイバーが増えているのである。とくに米国ではがんサバイバーの急激な増加が大きな社会問題となっており、2015年時点で1,500万人だった患者は、今後10年でさらに1,000万人の増加が見込まれる。

慢性心不全にARNIのエンレスト発売/ノバルティス ファーマ

 ノバルティス ファーマは8月26日、アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI)のエンレスト(一般名:サクビトリルバルサルタンナトリウム水和物)を「慢性心不全 ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」を効能・効果として発売した。医療従事者への情報提供はノバルティス ファーマと大塚製薬が共同で行う。  ARNIのエンレストは、ネプリライシン阻害作用をもつサクビトリルとアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)であるバルサルタンを1:1のモル比で含有する単一の結晶複合体。心不全の病態を悪化させる神経体液性因子の1つであるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAAS)の過剰な活性化を抑制するとともに、RAASと代償的に作用する内因性のナトリウム利尿ペプチド系を増強し、神経体液性因子のバランス破綻を是正する。

心房細動と超過死亡の関連、45年の長期分析の結果は/BMJ

 心房細動と全死因死亡との関連について、時間的傾向は見いだせないことが、デンマーク・オーフス大学のNicklas Vinter氏らによる検討で明らかにされた。フラミンガム心臓研究(Framingham Heart Study:FHS)の被験者を対象に45年間の関連傾向を分析した結果によるもので、心房細動診断後10年時点での心房細動による平均喪失寿命年数は顕著に改善していたが、心房細動を診断されていない被験者との間には、なお2年間のギャップが残存し続けていることも示された。新規診断の心房細動は死亡ハザード比を増大する。一方で心房細動患者における短期および長期の生存確率が経時的には改善していることが報告されていた。BMJ誌2020年8月11日号掲載の報告。