循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:34

善玉コレステロール値は高くても低くても認知症リスクと関連

 HDLコレステロール(HDL-C)は、心臓や脳の健康に良い「善玉コレステロール」と考えられているが、その値は高過ぎても低過ぎても認知症の発症リスクを高める可能性のあることが、新たな研究で示唆された。この研究論文の上席著者である米ボストン大学公衆衛生大学院のMaria Glymour氏は、「この研究は、非常に多くの参加者を長期間追跡したものであるため、得られた結果は極めて有益だ。われわれは、コレステロール値の非常に高い場合から非常に低い場合まで、あらゆる値と認知症の発症リスクとの関連を推定することができた」と話している。研究の詳細は、「Neurology」に10月4日掲載された。

血圧が高い十代の男性は高齢になる前に健康危機に直面しやすい

 十代という人生の早い段階で血圧が正常域よりも高い男性は、高齢期に入ってリタイアするより前に、心血管疾患を発症するリスクやそのために亡くなるリスクが高いという実態が報告された。ウメオ大学(スウェーデン)のHelene Rietz氏らの研究の結果であり、詳細は「Annals of Internal Medicine」に9月26日掲載された。同氏は、十代の若者の血圧高値の潜在的リスクに対する医療従事者の理解が不足していることに懸念を表している。  成人期以降の血圧高値が、心血管イベントリスクと密接に関連していることは、十分明らかになっている。しかし、十代の若者の血圧と将来の心血管イベントとの関連についてのデータは少ない。Rietz氏らはこの点について、スウェーデンの軍人のデータを用いて検討した。

心筋症を伴うATTRアミロイドーシス、パチシランが機能的能力を維持/NEJM

 心筋症を伴うトランスサイレチン型アミロイドーシス(ATTR心アミロイドーシス)患者において、パチシランは12ヵ月時の機能的能力を維持する。米国・コロンビア大学アービング医療センターのMathew S. Maurer氏らが21ヵ国69施設で実施中の国際共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「APOLLO-B試験」の結果を報告した。ATTRアミロイドーシスは、トランスサイレチンがアミロイド線維として心臓、神経、消化管、筋骨格組織に沈着することによって引き起こされる疾患で、心臓への沈着により心筋症が進行する。パチシランは、RNA干渉により肝臓におけるトランスサイレチンの産生を抑制し、遺伝性ATTRアミロイドーシス(トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー)患者における臨床試験において、ATTR心アミロイドーシスに対する有効性が示唆されていた。NEJM誌2023年10月26日号掲載の報告。

急性虚血性脳梗塞に対する早期の降圧治療、発症8日目からの降圧治療開始との比較で90日後の死亡や神経学的後遺症に有意差なし(解説:石川讓治氏)

血栓溶解療法を行わない発症後24~48時間の急性虚血性脳梗塞患者における収縮期血圧140~220mmHgに対して、7日以内に140/90mmHg未満を目指して早期に降圧治療を行った群と、降圧薬を7日間中止後8日目以降に140/90mmHg未満を目指して遅れて降圧治療を開始した群の間で、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクを比較した研究である。早期降圧治療群において7日後の血圧が有意に低かったが、14日後の血圧は両群で有意差は認められず、その結果、90日後の死亡や神経学的後遺症のリスクには有意差はなく、むしろ早期降圧治療群において1.18倍のリスク増加が認められる傾向があった(p=0.08)。

心筋梗塞における完全血行再建はいつ行うべきか?(解説:上田恭敬氏)

血行動態が安定しているST上昇型急性心筋梗塞症例において、非責任病変に対するPCIを急性期に同時に行う群(immediate群)が、19〜45日後にstaged PCIとして行う群(staged群)と比べて非劣性であることを検証する、無作為化非劣性試験(MULTISTARS AMI)の結果が報告された。主要エンドポイントは、1年の時点での、死亡・心筋梗塞・脳卒中・予定外の血行再建・心不全入院の複合エンドポイントである。対象患者はimmediate群418症例とstaged群422症例に割り付けられた。主要エンドポイントの発生頻度は、immediate群で8.5%、staged群で16.3%であり、非劣性のみならず優位性の検定においてもp<0.001と有意であった。心筋梗塞(2.0%対5.3%)、予定外の血行再建(4.1%対9.3%)がstaged群で多くなっている。また、死亡、脳卒中、心不全入院については、群間で差はなさそうである。

100歳超にみられる血液検査の特徴/スウェーデン・AMORISコホート研究

 100歳を超える長寿者(センテナリアン)とそうでない人の違いはどこにあるのだろうか。スウェーデン・カロリンスカ研究所の村田 峻輔氏らの研究グループは、AMORISコホート参加者のバイオマーカー情報を最長35年間追跡調査し、その結果を報告した。センテナリアンは、総コレステロールと鉄の値が高く、グルコース、クレアチニン、尿酸などの値が低いことが判明した。Geroscience誌2023年9月19日号に掲載。   本研究では、1985~1996年に測定された血液ベースのバイオマーカーに関する情報を持つスウェーデン・AMORISコホートの登録データを最長35年間追跡調査した。

1日3,000歩の追加は高齢者の高血圧を改善する?

 1日当たりの歩数を3,000歩増やすことで、高齢の高血圧患者の血圧が有意に低下する可能性があるとする研究結果が報告された。米コネチカット大学運動学分野のLinda Pescatello氏らによるこの研究結果は、「Journal of Cardiovascular Development and Disease」に7月27日報告された。  米国では、高齢者の約80%が高血圧患者である。高血圧を抑えることは、心不全、心筋梗塞、脳卒中の発症予防につながる。Pescatello氏は過去の研究で、運動が高血圧患者の血圧に即時的な影響だけでなく持続的な影響も与え得ることを明らかにしている。今回の研究では、20週間にわたって高齢の高血圧患者の運動量を適度に増やすことで、同じ効果を得られるかどうかが検討された。

患者が油断しがちな健診結果の項目とは

 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、各領域の専門医と連携し、健康診断で「要精密検査」や「要治療」といった異常所見があった際の二次検査の受診促進の取り組みとして、2023年10月17日に『ニジケンProject』を発足した。また、本プロジェクトの一環として二次検査に関する調査を実施したところ、3人に1人が健康診断の二次検査を「既読スルー」している現状であることが明らかになった。

CAD患者へのスタチン、種類による長期アウトカムの差は?/BMJ

 冠動脈疾患(CAD)成人患者においてロスバスタチンvs.アトルバスタチンは、3年時点の全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中または冠動脈血行再建術の複合に関して有効性は同等であった。ロスバスタチンはアトルバスタチンと比較し、LDLコレステロール(LDL-C)値の低下に対して有効性が高かったが、糖尿病治療薬を必要とする糖尿病の新規発症および白内障手術のリスクが上昇した。韓国・延世大学校医科大学のYong-Joon Lee氏らが、韓国の病院12施設で実施した多施設共同無作為化非盲検試験「Low-Density Lipoprotein Cholesterol-Targeting Statin Therapy Versus Intensity-Based Statin Therapy in Patients With Coronary Artery Disease trial:LODESTAR試験」の2次解析結果を報告した。LDL-Cの低下作用はスタチンの種類によって異なり、冠動脈疾患患者におけるロスバスタチンとアトルバスタチンの長期的な有効性および安全性を直接比較した無作為化試験はほとんどなかった。BMJ誌2023年10月18日号掲載の報告

医療費に大きな影響を与える患者背景は?/慶應大ほか

 多疾患併存(マルチモビディティ)による経済的負担は、世界的な課題となっている。高額医療費患者における多疾患併存の寄与については不明な点が多いことから慶應義塾大学スポーツ医学研究センターの西田 優紀氏らの研究グループは、東京医科歯科大学、川崎医科大学、全国健康保険協会と共同して全国健康保険協会が提供する健康保険請求データを用いて横断研究を行い、日本人の医療費に大きな影響を与える多疾患併存パターンを解析した。その結果、上位10%の患者集団の95.6%で多疾患併存がみられたほか、高血圧症、糖尿病、脂質異常症を同時併発した患者が全集団の31.8%を占めることが判明した。PLoS One誌2023年9月28日の報告。