高リスクの高血圧患者において、治療中の収縮期血圧(SBP)が120mmHg未満および拡張期血圧(DBP)が70mmHg未満の場合は心血管リスクが増加することが報告され、欧州心臓病学会/欧州高血圧学会による高血圧治療ガイドライン2018年版では高血圧患者全般に対してSBPを120mmHg以上に維持することを提案している。しかし、低リスク患者におけるデータは十分ではない。京都大学の森 雄一郎氏らの研究グループは、全国健康保険協会のデータベースを用いたコホート研究を実施。結果をHypertension Research誌オンライン版2024年2月14日号に報告した。
本研究は、3,000万人の生産年齢人口をカバーする全国健康保険協会のレセプト情報・特定健診等情報データベースを用いて行われた。10年間の心血管リスクが10%未満で降圧薬を継続的に使用している患者が特定され、治療中のSBPとDBPによってカテゴリー分類された。主要アウトカムは心筋梗塞、脳卒中、心不全、末梢動脈疾患の新規発症の複合であった。
主な結果は以下のとおり。
・92万533例の心血管低リスク患者が対象とされた(平均年齢:57.3歳、女性:48.3%、平均追跡期間:2.75年)。
・SBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比(95%信頼区間)は、
<110mmHg:1.05(0.99~1.12)
110~119mmHg:0.97(0.93~1.02)
120~129mmHg:1(参照)
130~139mmHg:1.05(1.01~1.09)
140~149mmHg:1.15(1.11~1.20)
150~159mmHg:1.30(1.23~1.37)
≧160mmHg:1.76(1.66~1.86)
・DBPごとの主要アウトカムの調整後ハザード比は、
<60mmHg:1.25(1.14~1.38)
60~69mmHg:0.99(0.95~1.04)
70~79mmHg:1(参照)
80~89mmHg:1.00(0.96~1.03)
90~99mmHg:1.13(1.09~1.18)
≧100mmHg:1.66(1.58~1.76)
著者らは、「低リスクの高血圧患者において、治療中のDBPが60mmHg未満の場合に心血管イベント増加と関連していたが、治療中のSBPが110mmHg未満の場合には関連していなかった。高リスク患者を対象としたこれまでの研究結果と比較して、低リスク患者では、血圧を下げすぎることが有害となる可能性はそれほど顕著ではないことが明らかとなった」としている。
(ケアネット 遊佐 なつみ)