本試験(FIRSTMAPPP試験)以前に、転移のある褐色細胞腫および傍神経節腫(パラガングリオーマ)患者を対象とした無作為化対照比較試験は行われていないという。フランス・パリ・サクレー大学のEric Baudin氏らが、この腫瘍の治療において、プラセボと比較してスニチニブ(VEGFR、PDGFR、RETを標的とする受容体チロシンキナーゼ阻害薬)は、1年無増悪生存率を有意に改善し安全性に差はないことを示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2024年2月22日号で報告された。
欧州4ヵ国のプラセボ対照無作為化第II相試験
FIRSTMAPPP試験は、欧州4ヵ国(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ)の14施設が参加した二重盲検無作為化プラセボ対照第II相試験であり、2011年12月~2019年1月に、年齢18歳以上、散発性または遺伝性の転移を有する進行性褐色細胞腫およびパラガングリオーマの患者78例(年齢中央値54歳、男性59%)を登録した(フランス保健省などの助成を受けた)。
これらの患者を、スニチニブ(37.5mg/日、39例)またはプラセボ(39例)を経口投与する群に無作為に割り付けた。プラセボ群からスニチニブ群へのクロスオーバーは許容した。
主要評価項目は、中央判定による12ヵ月の時点での無増悪生存患者の割合とし、Simon two-step designに基づき解析を行った。
69%で前治療、1年無増悪生存率は36%
78例中25例(32%)が生殖細胞系
SDHx遺伝子変異を有しており、54例(69%)は前治療を受けていた。
12ヵ月の時点での無増悪生存は、プラセボ群が39例中7例(19%、90%信頼区間[CI]:11~31)であったのに対し、スニチニブ群は39例中14例(36%、23~50)であり、スニチニブ群の有効性に関する仮説の妥当性が確証された。
また、無増悪生存期間中央値は、スニチニブ群8.9ヵ月、プラセボ群3.6ヵ月、全生存期間中央値はそれぞれ26.1ヵ月および49.5ヵ月、奏効率は36.1%および8.3%(両群とも完全奏効例はなく、すべて部分奏効例)であり、スニチニブ群の奏効期間中央値は12.2ヵ月だった。
有害事象の多くはGrade1/2
両群とも有害事象の多くはGrade1または2であった。最も頻度の高いGrade3または4の有害事象は、無力症(スニチニブ群7例[18%]、プラセボ群1例[3%])、高血圧(5例[13%]、4例[10%])、背部痛/骨痛(1例[3%]、3例[8%])だった。
スニチニブ群で3例(呼吸不全、筋萎縮性側索硬化症、直腸出血)が死亡し、直腸出血の1例は試験薬関連死と考えられた。プラセボ群では2例(誤嚥性肺炎、敗血症性ショック)が死亡した。
著者は、「この希少がんの初めての無作為化試験は、本症における抗腫瘍効果に関して、最も高い水準のエビデンスを持つ治療選択肢としてスニチニブの使用を支持するものである」と結論し、「スニチニブは、今後、他のすべての治療選択肢と比較すべき標準的な全身療法としての役割を果たす可能性がある」と指摘している。
(医学ライター 菅野 守)