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カルシニューリン阻害で免疫を抑制するループス腎炎治療薬「ルプキネス」【最新!DI情報】第27回

カルシニューリン阻害で免疫を抑制するループス腎炎治療薬「ルプキネス」今回は、カルシニューリン阻害薬「ボクロスポリン(商品名:ルプキネスカプセル7.9mg、製造販売元:大塚製薬)」を紹介します。本剤は、ループス腎炎に対する治療薬として承認された新規のカルシニューリン阻害薬であり、免疫抑制作用により予後が改善することが期待されています。<効能・効果>ループス腎炎の適応で、2024年9月24日に製造販売承認を取得しました。本剤投与により腎機能が悪化する恐れがあることから、eGFRが45mL/min/1.73m2以下の患者では投与の必要性を慎重に判断し、eGFRが30mL/min/1.73m2未満の患者では可能な限り投与を避けます。<用法・用量>通常、成人にはボクロスポリンとして1回23.7mgを1日2回経口投与します。なお、患者の状態により適宜減量します。本剤の投与開始時は、原則として、副腎皮質ステロイド薬およびミコフェノール酸モフェチルを併用します。<安全性>重大な副作用には、肺炎(4.1%)、胃腸炎(1.5%)、尿路感染症(1.1%)を含む重篤な感染症(10.1%)があり、致死的な経過をたどることがあります。また、急性腎障害(3.4%)が生じることがあるため、重度の腎機能障害患者への投与は可能な限り避けるようにし、中等度の腎機能障害患者には投与量の減量を行います。その他の副作用は、糸球体濾過率減少(26.2%)、上気道感染(24.0%)、高血圧(20.6%)、貧血、頭痛、咳嗽、下痢、腹痛(いずれも10%以上)、インフルエンザ、帯状疱疹、高カリウム血症、食欲減退、痙攣発作、振戦、悪心、歯肉増殖、消化不良、脱毛症、多毛症(いずれも10%未満)があります。本剤は、主としてCYP3A4により代謝されるため、強いCYP3A4阻害作用を有する薬剤(アゾール系抗真菌薬やリトナビル含有製剤、クラリスロマイシン含有製剤など)との併用は禁忌です。また、P糖蛋白の基質であるとともに、P糖蛋白、有機アニオン輸送ポリペプチド(OATP)1B1およびOATP1B3への阻害作用を有するので、ジゴキシンやシンバスタチンなどのHMG-CoA還元酵素阻害薬との併用には注意が必要です。<患者さんへの指導例>1.この薬は、ループス腎炎の治療薬であり、体内の免疫反応を抑制します。2.飲み始めは原則としてステロイド薬およびミコフェノール酸モフェチルと併用します。3.この薬は、体調が良くなったと自己判断して使用を中止したり、量を加減したりすると病気が悪化することがあります。4.この薬を使用中に、感染症の症状(発熱、寒気、体がだるいなど)が生じたときは、ただちに医師に連絡してください。<ここがポイント!>ループス腎炎は、自己免疫疾患である全身性エリテマトーデス(SLE)が原因で生じる腎機能障害です。この疾患は、尿蛋白や尿潜血を伴い、ネフローゼ症候群や急速進行性糸球体腎炎症候群を引き起こすことがあります。治療は、急性期の寛解導入療法と慢性期の寛解維持療法があり、急性期の寛解導入療法には強力な免疫抑制療法を実施し、尿蛋白や尿沈査、腎機能の正常化を目指します。治療薬はグルココルチコイド(GC)に加えてミコフェノール酸モフェチル(MMF)またはシクロホスファミド間欠静注療法(IVCY)の併用投与が推奨されています。ボクロスポリンは、ループス腎炎の治療薬として開発された新規の経口免疫抑制薬です。最近の研究では、MMFとの併用療法がMMF単独療法に比べて、より有効であることが示されています。ボクロスポリンはカルシニューリン阻害薬であり、T細胞の増殖・活性化に重要な酵素であるカルシニューリンを阻害することで免疫抑制作用を発揮します。ボクロスポリンの投与開始時は、原則として、GCおよびMMFを併用します。ループス腎炎患者を対象とした国際共同第III相試験(AURORA1試験)では、主要評価項目である投与開始52週時点の完全腎奏効患者の割合は、本剤群の40.8%に対してプラセボ群は22.5%と有意な差が認められました(p<0.001、ロジスティック回帰モデル)。なお、本剤群およびプラセボ群ともに、MMFとGCが併用されていました。

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次世代のCAR-T細胞療法―治療効果を上げるための新たなアプローチ/日本血液学会

 2024年10月11~13日に第86回日本血液学会学術集会が開催され、13日のJSH-ASH Joint Symposiumでは、『次世代のCAR-T細胞療法』と題して、キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞(CAR-T細胞)療法の効果の毒性を最小限にとどめ、治療効果をより高めるための新たな標的の探索や、細胞工学を用いてキメラ抗原受容体(CAR)構造を強化した治療、およびoff the shelf therapyを目標としたiPS細胞由来次世代T細胞療法の試みなど、CAR-T細胞療法に関する国内外の最新の話題が紹介された。CAR-T細胞療法を最適化するための新しい標的の開発 CAR-T細胞療法はB細胞性悪性腫瘍や多発性骨髄腫(MM)などに対する効果が認められているが、毒性については解決すべき課題が残っている。ガイドラインでは主な合併症として、サイトカイン放出症候群(CRS)および免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)が取り上げられているが、CAR-T細胞療法による新たな、または、まれな合併症とその管理についての情報は少なく、新たな標的の検討とともに明らかにしていく必要がある。米国血液学会(ASH)のCAR-T細胞療法のワークショップでは、CAR-T細胞の病態生理の理解、まれな毒性についてのデータの蓄積、on-target off-toxicityを回避するための的確な標的となる抗原などが検討されている。 Fabiana Perna氏(Moffitt Cancer Center)らは腫瘍関連抗原(TAA)および腫瘍特異的抗原(TSA)、さらに腫瘍特異的細胞表面プロテオームの解析を行っている。同氏らはこれまで、急性骨髄性白血病(AML)におけるCAR-T細胞療法の標的を同定するために、プロテオームと遺伝子発現の同時解析を行い、26個の標的を同定した。このうち15個は臨床試験で用いられ、その多くがAMLの正常細胞上に高発現する蛋白であった。 MMに対してはB細胞成熟抗原(BCMA)を標的としたCAR-T(BCMA-CAR-T)細胞療法の成績は良好とはいえず、新たな標的抗原が必要である。Perna氏らはMM患者約900例のサンプル約4,700検体を用い細胞表面のプロテオームを解析し、RNAシーケンスを行い、腫瘍組織に高発現するBCAAを含む6個の標的を同定した。そのうちSEMA4Aは再発/難治性MM患者での高発現が認められた。BCMA-CAR-T細胞療法後の再発はBCMAの発現低下に関連し、CARの機能低下を惹起すると考えられ、的確な標的の探索が必要である。Perna氏らはSEMA4AがCAR-T細胞療法の標的となりうると考え、SEMA4A-CAR-T細胞療法を試みている。なお、MM患者の免疫療法に関しては第I相試験が予定されている。 また、Perna氏らはmRNAスプライシングに由来する白血病特異的抗原の解析パイプラインを開発中であり、AML患者サンプルからスプライスバリアントの異常発現を認めたことから、同氏は、疾患特異的スプライスバリアントを標的とした治療法につながることを期待していると述べた。CAR-T細胞療法抵抗性克服と新たな応用の探求 CAR-T細胞療法は、CD19およびBCMA抗原を標的として、B細胞性悪性腫瘍(リンパ腫、白血病)およびMMに対して行われている。BCMA-CAR-T細胞療法は初期治療の奏効率は高いが、長期寛解率は低くとどまっている。CAR-T細胞の機能不全は抗原逃避、T細胞欠損、腫瘍微小環境(TME)などにより惹起される。そこで、酒村 玲央奈氏(メイヨー・クリニック 血液内科)は、CAR-T細胞療法の治療抵抗性克服と新たなストラテジーを探求するうえで、重要な鍵となる免疫抑制細胞について検討した。 がん関連線維芽細胞(CAF)は、CAR-T細胞の機能不全を誘導するが、同時にMM患者の治療効果を高める可能性があると考えられている。これまでの酒村氏の検討でMM患者由来のCAFがTGF-βなど抑制性サイトカイン産生を増加させ、PD-1/PD-L1結合を介してCAR-T細胞を阻害し、FAS/FASリガンド経路を介してCAR-T細胞にアポトーシスを誘導、制御性T細胞(Treg)を動員することが示された。また、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)を標的としたCAR-T細胞はマウスの体重を有意に減少させ、off target効果による重篤な毒性を惹起すると考えられ、CAF表面上に発現するCS1およびBCMAの2つを標的としたCAR-T細胞は腫瘍細胞およびCAFを溶解することが示された。さらに、BCMA-CAR-T細胞療法施行患者由来の骨髄サンプルを用いたシングルセルRNAシーケンスを行い、non-responder由来のCAFが高頻度にデスリガンド(抗腫瘍性リガンド)を発現すること、non-responder由来のT細胞は慢性的に刺激され疲弊したphenotypeであることが明らかとなった。また、non-responder由来の骨髄サンプルではTMEを支配する腫瘍関連マクロファージ(TAM)とCAFの有意なクロストークの存在が示された。 間葉系幹細胞(MSC)は多能性細胞であり、免疫抑制および組織再生治療における効果が研究されている。そこで酒村氏は、MSCの免疫抑制効果を向上させるために、細胞工学技術を用い健康な人から得た脂肪由来のMSCにCARを搭載し、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療戦略をマウスモデルで検討した。研究には、とくにGVHDをターゲットとしたE-cadherin(Ecad)特異的なCAR-MSC(EcCAR-MSC)を用いた。EcCAR-MSCの開発では、Ecad特異的な単鎖可変フラグメント(scFV)クローンが生成され、CAR-CD28ζ構造を設計し安定発現させてMSCの免疫抑制機能を強化したことが示された。 GVHDモデルにおいてEcCAR-MSCはマウスの体重減少を軽減し、GVHD症状を緩和し生存率を向上させた。また、Ecad陽性大腸組織へ特異的に移行し、T細胞活性を抑制し免疫調節機能効果を向上させた。また、シングルセルRNAシーケンスにより、抗原特異的刺激を受けたEcCAR-MSCにおいてIL-6、IL-10、NF-κBなどの免疫抑制シグナル経路の活性化が認められた。EcCAR-MSCのCD28ζシグナルドメインを含むCAR構造体はより強い免疫抑制効果を示した。 酒村氏は、CARを用いたMSCの免疫抑制機能を強化する新たな細胞治療とGVHDおよび腫瘍抑制における可能性を提示した。また、MSCの開発は免疫環境の調節を可能とし、炎症性腸疾患(IBD)、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)など自己免疫疾患の治療にも新たなアプローチを提供するものと考えると述べ、CAR-T細胞療法を進展させ、より多くの患者予後の改善を目指したいと結んだ。難治性腫瘍に対するiPS細胞由来次世代T細胞療法の開発 難治性NK細胞リンパ腫に対しては、L-アスパラギナーゼを含む抗がん剤治療や末梢血由来細胞傷害性T細胞(CTL)による細胞治療が試みられてきたが、治療効果は十分ではなかった。とくに末梢血由来T細胞は細胞治療後に疲弊し、長期的には腫瘍が増大することが知られている。そこで、安藤 美樹氏(順天堂大学大学院医学研究科血液内科学)はNK細胞リンパ腫患者の末梢血よりエプスタイン・バーウイルス(EBV)抗原特異的CTLを使用し、iPS細胞を作製後、再びT細胞に分化誘導し、iPS細胞由来若返りCTL(rejT)を作製し、NK細胞リンパ腫に対する抗腫瘍効果を検討した。その結果、rejTはNK細胞リンパ腫細胞株に対し強力な細胞傷害活性を示した。次いでNK細胞リンパ腫細胞株を腹腔内注射したマウスを用い、rejTおよび末梢血由来T細胞で治療し生体内での抗腫瘍効果を比較検討した結果、両群とも有意な腫瘍増大抑制効果が認められた。さらにrejTは末梢血由来T細胞に比べ有意な生存期間延長効果を示し、マウス体内でメモリーT細胞として長期間生存し、リンパ腫再増殖抑制効果が持続したことが示された。 次いで安藤氏は、末梢血EBV抗原LMP2特異的CTLからiPS細胞を作製し分化誘導後、iPS細胞由来若返りLMP2抗原特異的CTL(LMP2-rejT)がEBV関連リンパ腫に対し強い抗腫瘍効果を発揮することをマウスモデルで証明した。また、LMP2-rejTは生体内でメモリーT細胞として長期生存し、難治性リンパ腫の再発抑制を維持することを確認した。 安藤氏はこの手法を応用し、LMP2-rejTにCARを搭載することで、2つの受容体を有し、同時に2つの抗原(CD19、LMP2抗原)を標的にできるiPS細胞由来2抗原受容体T細胞(DRrejT)を作製した。マウスを用いた検討ではDRrejTは受容体を1つのみ有する従来のT細胞に比べ、難治性の悪性リンパ腫に対し強力な抗腫瘍効果と、生存期間延長効果を示し、メモリーT細胞として長期生存が示された。 また、安藤氏はiPS細胞に小細胞肺がん(SCLC)に高発現するGD2抗原標的キメラ抗原受容体(GD2-CAR)を遺伝子導入後、分化誘導したiPS細胞由来GD2-CART細胞(GD2-CARrejT)を作製し、SCLCに対する強い抗腫瘍効果を示した。さらに、GD2-CARrejTは末梢血由来のGD2-CART細胞に比べ、疲弊マーカーであるTIGITの発現がきわめて低いことを明らかにした。また、マウスの検討でGD2-CARrejTは末梢血由来LMP2-CTLに比べNK/T細胞リンパ腫を抑制することが示された。 さらに、安藤氏はiPS細胞由来ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原特異的CTL(HPV-rejT)を作製し、HPV-rejTは末梢血由来CTLと比較して子宮頸がんの増殖を強力に抑制することを確認した。子宮頸がん患者由来のCTL作製は時間とコストがかかり実用化には課題がある。一方、健康な人のCTLから作成した他家iPS細胞を用いた場合、これらの問題は解決するが、患者免疫細胞からの同種免疫反応により抗腫瘍効果が減弱する。そこでCRISPR/Cas9技術を用い、HLAクラスIをゲノム編集した健常人由来他家HPV-CTL(HLA-class I-edited HPV-rejT)を作製した。マウスを用いた検討で、HLA-class I-edited HPV-rejTは患者免疫細胞から拒絶されずに子宮頸がんを強力に抑制し、長期間の生存期間延長効果も認められた。また、末梢血由来HPV-CTLに比べ、細胞傷害活性に関するIFNG遺伝子や、組織レジデントメモリー細胞に関係するITGAE遺伝子などの発現レベルが有意に高く、組織レジデントメモリー細胞を豊富に含むことが示された。これらの機能解析により、HLA-class I-edited HPV-rejTはTGF-βシグナリングによりCD103発現レベルを上昇させ、その結果、抗原特異的細胞傷害活性が増強することが明らかとなった。現在、HLA-class I-edited HPV-rejTを用いた治療の安全性を評価する医師主導第I相試験が進行中である。 安藤氏はiPS細胞由来の抗原特異的、そしてHLA編集細胞が、off the shelfのT細胞療法に、持続可能で有望なアプローチを提供するものと期待されると締めくくった。

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ベンゾジアゼピン中止戦略、マスクした漸減+行動介入の効果

 ベンゾジアゼピン(BZD)受容体作動性催眠薬(BZD睡眠薬)の臨床試験では、プラセボ効果が観察される。臨床ガイドラインでは、とくに高齢者においてBZD睡眠薬を中止し、不眠症の第1選択治療として不眠症の認知行動療法(CBT-I)が推奨されている。BZD睡眠薬の減量中に1日投与量をマスクし、プラセボ効果のメカニズムを活用してCBT-Iを強化する新たな介入方法が、BZD睡眠薬中止を促進するかは、不明である。米国・カリフォルニア大学ロサンゼルス校のConstance H. Fung氏らは、BZD睡眠薬のマスクした減量と増強CBT-Iを併用した介入は、BZD睡眠薬の長期中止に寄与するかを検討するため、ランダム化臨床試験を実施した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2024年10月7日号の報告。 対象は、大学および退役軍人省医療センターで現在または過去に不眠症に対しジアゼパム換算量8mg未満の用量でロラゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、temazepam、ゾルピデムを3ヵ月以上、2回/週以上使用した55歳以上の患者。2018年12月〜2023年11月のデータを収集した。データ分析は、2023年11月〜2024年7月に実施した。BZD睡眠薬のマスクした減量と増強CBT-Iを併用した介入(MTcap群)と標準CBT-IとマスクしないBZD睡眠薬漸減による介入(SGT群)との比較を行った。主要有効性アウトカムは、治療終了後6ヵ月(6ヵ月ITT)でのBZD睡眠薬の中止率とし、7日間の自己申告による服薬記録を行い、サブセットについては尿検査測定を行った。副次的アウトカムは、治療後1週間および6ヵ月後の不眠症重症度質問票(ISI)スコア、治療1週間後にBZD睡眠薬の中止率、治療後1週間および6ヵ月後のBZD睡眠薬の投与量とDysfunctional Beliefs About Sleep-Medication subscaleとした。 主な結果は以下のとおり。・詳細なスクリーニングを行った338例のうち対象患者188例(平均年齢:69.8±8.3歳、男性:123例[65.4%]、女性:65例[35.6%])は、MTcap群92例、SGT群96例にランダムに割り付けられた。・MTcap群は、SGT群と比較し、6ヵ月後のBZD睡眠薬の中止率向上、1週間後のBZD睡眠薬の中止率向上、1週間後のBZD睡眠薬の1週間当たりの使用頻度の減少が認められた。【6ヵ月後のBZD睡眠薬の中止率】MTcap群:64例(73.4%)、SGT群:52例(58.6%)、オッズ比(OR):1.19、95%信頼区間[CI]:1.03〜3.70、p=0.04【1週間後のBZD睡眠薬の中止率】MTcap群:76例(88.4%)、SGT群:62例(67.4%)、OR:3.68、95%CI:1.67〜8.12、p=0.001【1週間後のBZD睡眠薬の1週間当たりの使用頻度】−1.31、95%CI:−2.05〜−0.57、p<0.001・フォローアップ時のISIスコアは、両群間で有意な差がなく改善が認められた(ベースラインから1週間後:1.38、p=0.16、6ヵ月後:0.16、p=0.88)。 著者らは「プラセボ効果のメカニズムをターゲットとしたBZD睡眠薬の減量とCBT-Iとの新たな併用療法により、BZD睡眠薬の長期中止率を改善することが示唆された」と結論付けている。

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抗核抗体検査【日常診療アップグレード】第16回

抗核抗体検査問題21歳女性。2週間前から昼間に37.5℃の発熱がよくある。朝と夕方は平熱である。軽度の食欲低下あり。それ以外は明らかな症状なし。関節痛なし。皮疹なし。全身性エリテマトーデス(SLE)などの膠原病の可能性を考えて抗核抗体(ANA)をオーダーした。

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子供の睡眠時間の目安は?

子供の睡眠時間の目安⚫ 睡眠時間の不足によって、肥満のリスクが高くなること、抑うつ傾向が強くなること、学業成績が低下すること、幸福感や生活の質(QOL)が低下することが報告されています⚫ 朝は太陽の光を浴びて、朝食をしっかり摂り、日中は運動をして、夜ふかしの習慣化を避けるようにしましょう年齢別の推奨睡眠時間1~2歳児3~5歳児小学生中学生高校生11~14時間10~13時間9~12時間8~10時間夜ふかしを習慣化させないために…日中はからだを動かし、スクリーンタイムはほどほどに朝起きたら日光浴を••乳幼児期は朝起きる時間を決め、カーテンを開けて部屋を明るくしましょう小学生以降は登校時や学校で日光を十分に浴び、休日もできるだけ普段と同じ時間に起床しましょう•小・中・高校生は1日当たり60分以上からだを動かし、スクリーンタイムは2時間以下にすることが推奨されています出典:厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」Paruthi S, et al.J Clin Sleep Med. 2016;12:785-786.Copyright © 2024 CareNet,Inc. All rights reserved.

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関節炎を診るときの鑑別診断【1分間で学べる感染症】第13回

画像を拡大するTake home message関節炎を診る際には「急性・慢性」「単関節・多関節」の組み合わせで4つにカテゴリー分けをしたうえで診断を進める。皆さんは関節炎を訴える患者さんを診る際、どのように問診や検査を進めていきますか?今回は、関節炎をカテゴリーに分けてその特徴を学んでいきましょう。関節炎は、その臨床経過や関与する関節の数に基づいて分類され、この分類結果が診断や治療の方針決定に役立ちます。具体的には「急性」か「慢性」か、1つの関節だけに起こる「単関節炎」か、多くの関節に起こる「多関節炎」か、これらの組み合わせで4つのカテゴリーに分類します。I. 急性単関節炎急性単関節炎では、主な原因として細菌性関節炎、結晶誘発性関節炎、外傷性関節炎が考えられます。【細菌性関節炎】細菌性関節炎には非淋菌性と淋菌性があり、非淋菌性関節炎の原因菌としては一般的に黄色ブドウ球菌が最多で、それにβ溶血性連鎖球菌が続きます。また、頻度は高くないものの、高齢者や免疫抑制患者ではグラム陰性桿菌も考えられます。一方、淋菌性関節炎は性行為を介して感染し、移動性の関節痛がみられることが特徴です。【結晶誘発性関節炎】臨床上、細菌性と判断が難しいケースが多いです。痛風と偽痛風があり、偽痛風は、ピロリン酸カルシウムが関節に沈着し炎症を引き起こし、高齢者に多い傾向があります。【外傷性関節炎】外傷や過度の運動によるもの。このほかの急性単関節炎の鑑別としては、反応性関節炎や急性多関節炎の初期段階などが挙げられます。II. 急性多関節炎急性多関節炎では、主な原因として細菌性関節炎、ウイルス性関節炎が考えられます。【細菌性関節炎】感染性心内膜炎を含めた全身性の血行性感染や淋菌性関節炎などが含まれます。感染性心内膜炎は歯科治療歴や心雑音などを診断の手掛かりとします。また、淋菌性関節炎ではリスクのある性交渉歴がポイントとなります。全例ではないものの、移動性の関節痛がみられるのも特徴です。【ウイルス性関節炎】インフルエンザやCOVID-19などを含めた呼吸器感染症のほか、ヒトパルボウイルスB19感染では皮疹や小児との接触歴が重要な診断の手掛かりです。とくに急性HIV感染症はリスクが高く、早期の診断が重要です。また、肝炎ウイルスによるものも報告されており、輸血歴や性交渉歴、刺青がリスクファクターとして挙げられます。このほかの急性多関節炎の鑑別としては、慢性多関節炎の初期段階などが挙げられます。III. 慢性単関節炎慢性単関節炎では、まれであるものの抗酸菌性関節炎や大腿骨頭壊死、悪性腫瘍などが鑑別診断として考えられます。MRIによる画像診断やそのほかのリスクを考慮する必要があります。このほかに、慢性多関節炎の早期段階などが挙げられます。IV. 慢性多関節炎慢性多関節炎では、関節リウマチやSLE(全身性エリテマトーデス)、リウマチ性多発筋痛症を含めた自己免疫疾患をまず検討します。ほかには変形性関節症などが鑑別診断として挙げられます。そのほかの症状や身体所見、家族歴、各種スクリーニング検査などを総合的に判断し診断を進める必要があります。これらの4つのカテゴリーを大まかに理解しながら、さらなる追加問診や該当関節以外の身体所見を加えて、診断のための次なる検査をスムーズに進めていくようにしましょう。1)Earwood JS, et al. Am Fam Physician. 2021;104:589-597.2)Horowitz DL, et al. Am Fam Physician. 2011;84:653-660.3)McBride S, et al. Clin Infect Dis. 2020;70:271-279.4)Lin WT, et al. J Microbiol Immunol Infect. 2017;50:527-531.

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週末の寝溜め、認知機能障害リスクを上げる?下げる?

 高齢者を対象とした横断研究で、週末のキャッチアップ睡眠で認知機能障害リスクが70%以上低下する可能性が示唆された。台湾・National Taiwan Normal UniversityのChi Hsiao氏らがSleep Breath誌2024年10月号で報告した。 本研究は、2020年9月~2022年12月に台湾・台北市の医療センターにおいて65歳以上で自立歩行が可能な参加者を登録し、自己申告による睡眠日誌と加速度計を用いて連続7日間の睡眠関連データを記録・測定した。週末キャッチアップ睡眠は、週末の平均睡眠時間から平日の平均睡眠時間を引いた時間とし、認知機能障害リスクはミニメンタルステート検査(MMSE)で評価した。週末キャッチアップ睡眠とMMSEスコアとの関連について二項ロジスティック回帰モデルを用いて検討した。 主な結果は以下のとおり。・計215人(女性:53.0%、80.5±7.1歳、認知機能障害リスク:11.6%)を対象とした。・性別、教育レベル、中~高強度の身体活動、加速度計の総装着時間で調整したモデルにおいて、睡眠日誌(オッズ比[OR]:0.26、95%信頼区間[CI]:0.09~0.69、p=0.007)と加速度計データ(OR:0.27、95%CI:0.10~0.70、p=0.007)から、キャッチアップ睡眠が認知機能障害リスクを73~74%低下させる可能性が示された。 著者らは「この結果から、週末のキャッチアップ睡眠と認知機能障害のリスク低下が関連することが示唆された」としている。

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lupus(全身性エリテマトーデス)【病名のルーツはどこから?英語で学ぶ医学用語】第12回

言葉の由来“lupus”は自己免疫疾患の1つであるSLE(systemic lupus erythematosus:全身性エリテマトーデス)の別名として知られています。この病名は、ラテン語で「オオカミ」を意味する“lupus”に由来しています。“lupus”(ループス)という言葉が医学的に使用された起源は、中世欧州にさかのぼります。12世紀に活躍したイタリアの医師、ルッジェーロ・フルガルドが、下肢の皮膚病変を「オオカミに噛まれたような」と表現した、という記録が残っています。当時、欧州ではオオカミは身近な存在であり、オオカミに襲われた人の傷痕と、SLEの皮膚症状が類似していたことから、このような表現が用いられたと考えられています。1850年ごろから“lupus erythematosus”という言葉で顔面の蝶形紅斑が定義されるようになり、さらにその後、近代医学の父であるウィリアム・オスラー医師が皮膚の病変を全身性の症状と関連付けたことで、病気の理解がより深まりました。1971年に米国リウマチ学会が提唱した分類基準で、“systemic lupus erythematosus”(全身性エリテマトーデス)という病名が正式に採用され、現在の疾患概念が確立されました。併せて覚えよう! 周辺単語蝶形紅斑malar rash光線過敏症photosensitivity多発関節炎polyarthritis心膜炎pericarditis胸水pleural effusionこの病気、英語で説明できますか?Lupus is an autoimmune disease where the immune system attacks healthy tissues, leading to inflammation and damage in various parts of the body, including the skin, joints, kidneys, and heart. Symptoms can range from mild to severe and may include fatigue, joint pain, skin rashes, and fever.講師紹介

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不眠症と心血管リスクとの関連~メタ解析

 不眠症と心血管疾患(CVD)との関連性は、観察研究により示唆されているが、その原因やメカニズムは明らかになっていない。中国・The First Affiliated Hospital of Xinxiang Medical UniversityのXuejiao Zhang氏らは、不眠症とCVDの潜在的な因果関係を調査するため、システマティックメタレビューおよび観察研究のメタ解析とメンデルランダム化(MR)研究を組み合わせて分析を行った。Journal of Clinical Sleep Medicine誌オンライン版2024年8月21日号の報告。 2023年7月11日までに公表された英語論文をPubMed、Web of Science、Embaseより検索した。独立した2人の査読者により論文をスクリーニングし、潜在的なバイアスを最小限に抑えた。観察研究のメタ解析とMR研究により、不眠症と冠動脈疾患(CAD)、心房細動(AF)、心不全(HF)、心筋梗塞(MI)、高血圧(HTN)、脳卒中との関連性を評価した現在のエビデンスをまとめた。 主な結果は以下のとおり。・最終的な分析には、観察研究のメタ解析4件、MR研究9件を含めた。・観察研究のシステマティックメタレビューにより、不眠症は、AF、MI、HTNを含む多くのCVDの独立したリスク因子であることを裏付ける強力なエビデンスが得られた。・MR研究のメタ解析では、不眠症は、CAD、AF、HF、HTN、大動脈性脳卒中、虚血性脳卒中、原発性頭蓋内出血と潜在的な因果関係を有する可能性が示唆された。【CAD】オッズ比(OR):1.14、95%信頼区間(CI):1.10〜1.19、I2=97%【AF】OR:1.02、95%CI:1.01〜1.04、I2=94%【HF】OR:1.04、95%CI:1.03〜1.06、I2=97%【HTN】OR:1.16、95%CI:1.13〜1.18、I2=28%【大動脈性脳卒中】OR:1.14、95%CI:1.05〜1.24、I2=0%【虚血性脳卒中】OR:1.09、95%CI:1.03〜1.14、I2=60%【原発性頭蓋内出血】OR:1.16、95%CI:1.05〜1.27、I2=0%・不眠症と心原性脳塞栓症、小血管性脳卒中との因果関係を示唆するエビデンスは見当たらなかった。 著者らは「不眠症とCVDリスクとの間に因果関係のある可能性を裏付ける強力なエビデンスが得られた。不眠症の治療戦略は、CVD予防の有望なターゲットとなる可能性がある」と結論付けている。

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医師の燃え尽き症候群と関連する覚醒度~日本全国調査

 日本の医師の約40%は年間960時間以上の残業を報告しており、10%は1,860時間を超えている。2024年、医師の健康を守るため、年間の残業時間に上限が設定された。順天堂大学の和田 裕雄氏らは、長時間労働医師の働き方改革に関する全国横断調査において、自己報告による睡眠時間と、メンタルヘルスおよび客観的覚醒度との関連を調査した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2024年8月12日号の報告。 調査に協力した医師は、毎日の睡眠時間、燃え尽き症候群(Abbreviated Maslach Burnout Inventory:マスラック・バーンアウト尺度簡易版)、うつ病(CES-D:うつ病自己評価尺度)、交通事故に関して自己報告を行った。覚醒度は、精神運動覚醒度検査短縮版を用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・調査の依頼をした2万382人のうち1,226人の医師が、調査および精神運動覚醒度検査を完了した。・毎日の睡眠時間は、週の労働時間と逆相関が認められた(β=-5.4、95%信頼区間[CI]:-6.8~-4.0、p<0.0001)。・1日当たりの睡眠時間6時間未満および8時間以上は、精神運動覚醒度検査短縮版の反応遅延と関連が認められた(調整済みp<0.05)。・1週当たりの労働時間が10時間増加するごとに、燃え尽き症候群の重症度(0.40ポイント、95%CI:0.08~0.72)および交通事故の報告率(1.7%、95%CI:0.1~3.3)が増加した。・覚醒度の低下(精神運動覚醒度検査短縮版での間違いの増加)は、うつ病(β=0.23ポイント、95%CI:0.14~0.31、p<0.0001)および燃え尽き症候群(β=0.25ポイント、95%CI:0.13~0.36、p<0.0001)の症状悪化と関連が認められた。 結果について著者らは、「覚醒状態を維持するためには十分な睡眠が重要であることを強調し、日本の医師のメンタルヘルスを守るため勤務時間を制限することを支持するものである」とし、「精神運動覚醒度検査短縮版の成績は、メンタルヘルスの有用な指標となる可能性がある」とまとめている。

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ホットフラッシュに新規NK-1,3受容体拮抗薬が有効/JAMA

 選択的ニューロキニン(NK)-1,3受容体拮抗薬elinzanetantは、中等度~重度の更年期血管運動神経症状(vasomotor symptoms:VMS)に対し有効で、忍容性も良好であった。米国・バージニア大学のJoAnn V. Pinkerton氏らが、第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験「OASIS 1試験」および「OASIS 2試験」の結果を報告した。更年期VMSに対する安全で効果的な非ホルモン治療が必要とされていた。JAMA誌オンライン版2024年8月22日号掲載の報告。中等度~重度のVMSを有する女性をelinzanetant群とプラセボ群に無作為化 OASIS 1試験およびOASIS 2試験は、同一の試験方法により米国および欧州の異なる施設で並行して実施された(OASIS 1試験は2021年8月27日~2023年11月27日に米国、欧州、イスラエルの77施設、OASIS 2試験は2021年10月29日~2023年10月10日に米国、カナダ、欧州の77施設)。 対象は、中等度~重度のVMSを有する40~65歳の閉経後女性で、適格参加者をelinzanetant群(120mgを1日1回26週間経口投与)、またはプラセボ群(プラセボを12週間投与後、elinzanetant120mgを14週間投与)に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、ホットフラッシュを評価する電子日誌(electronic hot flash daily diary)で測定された、ベースラインから4週時および12週時までの中等度~重度VMSの頻度と重症度の平均変化量であった。重要な副次エンドポイントは、睡眠障害を評価する患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcomes Measurement Information System Sleep Disturbance Short Form 8b:PROMIS SD-SF-8b)総スコアならびに更年期特有のQOL質問票(Menopause-Specific Quality of Life questionnaire:MENQOL)総スコアの、ベースラインから12週時までの変化量であった。VMSの頻度と重症度、睡眠障害、更年期関連QOLがelinzanetant群で有意に改善 適格参加者がelinzanetant群(OASIS 1試験199例、OASIS 2試験200例)またはプラセボ群(同:197例、200例)に無作為に割り付けられた。参加者の平均(±SD)年齢はOASIS 1試験が54.6±4.9歳、OASIS 2試験が54.6±4.8歳であった。それぞれ計309例(78.0%)および324例(81.0%)が試験を完了した。 ベースラインにおける24時間当たりのVMS頻度(平均±SD)は、OASIS 1試験でelinzanetant群13.4±6.6、プラセボ群14.3±13.9、OASIS 2試験でそれぞれ14.7±11.1、16.2±11.2であった。また、ベースラインにおけるVMS重症度は、OASIS 1試験で2.6±0.2、2.5±0.2、OASIS 2試験で2.5±0.2、2.5±0.2であった。 elinzanetant群はプラセボ群と比較して、4週時および12週時のVMS頻度が有意に減少した。群間差は4週時がOASIS 1試験で-3.3(95%信頼区間[CI]:-4.5~-2.1、p<0.001)、OASIS 2試験で-3.0(-4.4~-1.7、p<0.001)、12週時がそれぞれ-3.2(-4.8~-1.6、p<0.001)、-3.2(-4.6~-1.9、p<0.001)であった。 同様にelinzanetant群はプラセボ群と比較して、4週時および12週時のVMSの重症度が改善した。群間差は4週時がOASIS 1試験で-0.3(95%CI:-0.4~-0.2、p<0.001)、OASIS 2試験で-0.2(-0.3~-0.1、p<0.001)、12週時がそれぞれ-0.4(-0.5~-0.3、p<0.001)、-0.3(-0.4~-0.1、P<0.001)であった。 重要な副次エンドポイント(睡眠障害、更年期関連QOL)についても、両試験においてプラセボに対しelinzanetant群で有意な改善が認められた。 elinzanetant群の安全性プロファイルは良好であった。

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日本人不眠症患者に対するdaridorexantの第III相ランダム化二重盲検プラセボ対症試験

 久留米大学の内村 直尚氏らは、日本人不眠症患者を対象にdaridorexantの有効性および安全性を評価した国内第III相二重盲検プラセボ対症試験の結果を報告した。Sleep Medicine誌2024年10月号の報告。 対象は、国内95施設より登録された不眠症患者490例。対象患者はdaridorexant 50mg群(163例)、daridorexant 25mg群(163例)、プラセボ群(164例)にランダムに割り付けられた。4週間の治療後、7日間プラセボを投与し、30日間の安全性フォローアップ調査を実施した。主要有効性エンドポイントは、プラセボ群と比較したdaridorexant 50mg群における4週目の主観的総睡眠時間(sTST)および主観的睡眠潜時(subjective latency to sleep onset:sLSO)のベースラインからの変化とした。副次的エンドポイントとして、プラセボ群と比較したdaridorexant 25mg群における4週目のsTSTおよびsLSOも評価した。安全性エンドポイントは、有害事象およびVAS(Visual Analog Scale)による翌朝の眠気を含めた。 主な結果は以下のとおり。・daridorexant 50mg群は、プラセボ群と比較し、sTSTの有意な増加、sLSOの有意な減少を認めた。【sTST】最小二乗平均差(LSMD):20.3分、95%信頼区間(CI):11.4~29.2、p<0.001【sLSO】LSMD:−10.7分、95%CI:−15.8~−5.5、p<0.001・daridorexant 25mg群においても、プラセボ群と比較し、有意な改善が認められた。【sTST】LSMD:9.2分、95%CI:0.3~18.1、p=0.042【sLSO】LSMD:−7.2分、95%CI:−12.3~−2.0、p=0.006・全体的な有害事象の発生率は、群間で同様であり(50mg群:22%、25mg群:18%、プラセボ群:23%)、最も多い有害事象は眠気であり、用量依存性が認められた(50mg群:6.8%、25mg群:3.7%、プラセボ群:1.8%)。・しかし、daridorexant群は、翌朝の眠気のVAS値を増加させることはなかった。・治療中止後のリバウンドや離脱関連症状は認められなかった。 著者らは「日本人不眠症患者に対するdaridorexantは、忍容性が良好で、主観的な睡眠アウトカムの有意な改善を示した。また、残留効果は認められなかった」とまとめている。

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中等症~重症アトピー性皮膚炎、ネモリズマブ追加で治療成功率が向上/Lancet

 そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎を有する成人および青少年の治療において、基礎治療(局所コルチコステロイド[TCS]±局所カルシニューリン阻害薬[TCI])単独と比較して、基礎治療+ネモリズマブ(インターロイキン-31受容体サブユニットα拮抗薬)は、治療成功および皮膚症状改善の達成率の向上をもたらし、安全性プロファイルは両群でほぼ同様であることが、米国・ジョージ・ワシントン大学のJonathan I. Silverberg氏らが実施した2つの臨床試験(ARCADIA 1試験、ARCADIA 2試験)で示された。研究の成果は、Lancet誌2024年8月3日号に掲載された。同じデザインの2つの無作為化プラセボ対照第III相試験 ARCADIA 1試験とARCADIA 2試験は、同じデザインの48週の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験であり、ARCADIA 1試験は2019年8月~2021年9月に14ヵ国161施設で、ARCADIA 2試験は2019年8月~2022年11月に11ヵ国120施設で患者を登録した(Galdermaの助成を受けた)。 2つの試験とも、年齢12歳以上、そう痒を伴う中等症~重症のアトピー性皮膚炎(登録の2年以上前に診断)で、TCS±TCIによる治療で効果が不十分であった患者を対象とした。 被験者を、基礎治療(TCS±TCI)との併用で、ネモリズマブ30mg(ベースラインの負荷用量60mg)を4週に1回皮下投与する群、またはプラセボ群に、2対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは2つで、16週目の時点でのInvestigator's Global Assessment(IGA)に基づく治療成功(IGAが0[皮膚病変消失]または1[同ほぼ消失]で、かつベースラインから2段階以上の改善)、およびEczema Area and Severity Index(EASI)のベースラインから75%以上の改善(EASI-75)とした。9つの主な副次エンドポイントもすべて有意に改善 2つの試験に合計1,728例を登録した。ネモリズマブ群に1,142例(ARCADIA 1試験620例[平均年齢33.5歳、女性48%]、ARCADIA 2試験522例[34.9歳、52%])、プラセボ群に586例(321例[33.3歳、45%]、265例[35.2歳、51%])を割り付けた。 両試験とも2つの主要エンドポイントを満たした。16週時のIGAに基づく治療成功の割合はプラセボ群に比べネモリズマブ群で有意に優れた(ARCADIA 1試験:36% vs.25%、補正後群間差:11.5%[97.5%信頼区間[CI]:4.7~18.3]、p=0.0003/ARCADIA 2試験:38% vs.26%、12.2%[4.6~19.8]、p=0.0006)。 また、EASI-75の達成割合も、プラセボ群に比しネモリズマブ群で有意に良好だった(ARCADIA 1試験:44% vs.29%、補正後群間差:14.9%[97.5%CI:7.8~22.0]、p<0.0001/ARCADIA 2試験:42% vs.30%、12.5%[4.6~20.3]、p=0.0006)。 9つの主な副次エンドポイント(そう痒[Peak Pruritus Numerical Rating Scale:PP-NRS]、睡眠[Sleep Disturbance Numerical Rating Scale:SD-NRS]など)はいずれも、ネモリズマブ群で有意な有益性を認めた。ネモリズマブ関連の可能性がある有害事象は1% 安全性プロファイルは両群でほぼ同様だった。少なくとも1件の試験治療下における有害事象を発現した患者は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で50%(306/616例)、ARCADIA 2試験で41%(215/519例)、プラセボ群ではそれぞれ45%(146/321例)および44%(117/263例)であった。このうち重篤な有害事象は、ネモリズマブ群ではARCADIA 1試験で1%(6例)、ARCADIA 2試験で3%(13例)、プラセボ群ではそれぞれ1%(4例)および1%(3例)であった。 ネモリズマブ関連の可能性がある治療関連有害事象は、ARCADIA 2試験で5例(1%)に10件報告された。 著者は、「アトピー性皮膚炎は多面的な病態生理を有する疾患で、臨床においてはさまざまな作用機序を有する薬剤を必要とするため、有効な治療法の探索を継続することは重要である」と述べた。

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いびきと認知症リスクとの関連

 年齢とともに増加するいびきと認知症リスクとの関連は、議論の的になっている。英国・オックスフォード大学のYaqing Gao氏らは、いびきと認知症リスクとの関連について観察的および因果関係の調査を実施し、この関連に対するBMIの影響を評価した。Sleep誌オンライン版2024年6月29日号の報告。 ベースライン時、認知症でなかった参加者45万1,250人のデータを用いて、自己申告によるいびきと認知症発症との関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。いびきとアルツハイマー病(AD)との因果関係の調査には、双方向2サンプルメンデルランダム化(MR)分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・フォローアップ期間中央値13.6年の間に認知症を発症したのは、8,325例。・いびきは、すべての原因による認知症(ハザード比[HR]:0.93、95%信頼区間[CI]:0.89〜0.98)およびAD(HR:0.91、95%CI:0.84〜0.97)のリスク低下との関連が認められた。・BMIで調整するとこの関連性はわずかに弱まり、高齢者、APOE ε4対立遺伝子保有者、フォローアップ期間が短い人では関連性が強くなった。・MR分析では、いびきのADに対する因果関係は認められなかったが、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。・多変量MR分析では、ADがいびきに及ぼす影響は、主にBMIによるものであることが示唆された。 著者らは「いびきと認知症リスク低下との関連は、逆因果関係から生じている可能性があり、ADに対する遺伝的因子がいびきリスク低下と関連していることが示唆された。これは、前駆期アルツハイマー病(prodromal AD)における体重減少により引き起こされる可能性がある。高齢者におけるいびきの減少や体重減少は、認知症リスクの潜在的な初期の指標として、より一層注意を払う必要がある」としている。

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妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第261回

妊婦の睡眠体位は左側臥位じゃなくてもいい?妊娠中の仰臥位や右側臥位での睡眠は、下大静脈などを圧迫することがあるため、基本的に避けたほうがいいとされてきました。実際、左側臥位を勧める啓発を行っていた国もあります。死産の絶対リスクを推定した症例対照研究があって、左側臥位就寝する妊婦で1,000人当たり1.96、それ以外の姿勢で就寝する妊婦で1,000人当たり3.93というデータがこれを後押ししていた部分も大きかったようです1)。ただし、この研究のリミテーションとして、死産から25日程過ぎての面談であったため、「想起バイアス」がありうるということです。妊娠中の睡眠姿勢を前向きに評価した研究があります。Silver RM, et al. Prospective Evaluation of Maternal Sleep Position Through 30 Weeks of Gestation and Adverse Pregnancy Outcomes.Obstet Gynecol. 2019 Oct;134(4):667-676.対象は初産婦で単胎妊娠の女性8,706人でした。参加者は妊娠6~13週と22~29週の時点で、詳細な睡眠に関する質問票に回答しました。主要評価項目は、死産、妊娠高血圧症候群、胎児発育不全(SGA)の複合アウトカムでした。これらの転帰は、胎盤機能不全と関連があり、先行研究で非左側臥位睡眠との関連が報告されていたものです。結果、1,903人(22%)の女性が複合アウトカムを経験しました。しかし意外なことに、妊娠初期および中期のいずれにおいても、非左側臥位の就寝と複合アウトカムとの間に有意な関連はみられませんでした。それだけでなく、妊娠中期の非左側臥位は、むしろ死産リスクの低下と関連していました(調整オッズ比:0.27、95%信頼区間:0.09~0.75)。ただし、死産の症例数そのものが少なかったので、統計学的な解釈には注意が必要です。主観的ではなく、客観的に評価された(睡眠時体位を観察した)症例においても、複合アウトカムのリスクに有意差はありませんでした。では、右側臥位も大丈夫なのかというと、まだ結論は早いかもしれません。実際にこの研究、妊娠後期(30週以降)の睡眠姿勢については評価していません。後期の睡眠姿勢と妊娠転帰との関連については、まだ結論が出ていません。仰臥位そのものがしんどくなる妊婦も多いので、「横向きであれば好きなほうを向けばよい」くらいのスタンスで構わないのかもしれません。うつ伏せはさすがにやめておいたほうがよいでしょう。また、睡眠姿勢に関する過度な不安を抱かせないようにし、有害なイベントが発生した場合、母親に自責の念を抱かせないことも重要でしょう。1)Stacey T, et al. Association between maternal sleep practices and risk of late stillbirth: a case-control study. BMJ. 2011 Jun 14;342:d3403.

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尿検体の迅速検査【とことん極める!腎盂腎炎】第5回

尿検査でどこまで迫れる?【後編】Teaching point(1)尿定性検査の白血球陽性反応の細菌尿に対する感度は70〜80%程度であり、白血球反応陰性で尿路感染症を除外しない(2)硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない(もしくは時間がかかる)微生物による尿路感染症もあり、亜硝酸塩陰性で尿路感染症を除外しない(3)尿pH>8の際にはウレアーゼ産生菌の関与を考える《今回の症例》70代女性が昨日からの悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に救急外来を受診した。いままでも腎盂腎炎を繰り返している既往がある。また糖尿病のコントロールは不良である。腎盂腎炎を疑い尿定性検査を提出したが、白血球反応は陰性、亜硝酸塩も陰性であった。今回は腎盂腎炎ではないのだろうか…?はじめに尿検査はさまざまな要因による影響を受けるため解釈が難しく、尿検査のみで尿路感染症を診断することはできない。しかし尿検査の限界を知り、原理を深く理解すれば重要な情報を与えてくれる。そこで、あえて尿検査でどこまで診断に迫れるかにこだわってみる。前回、「尿検体の採取方法と検体の取り扱い」「細菌尿と膿尿の定義や原因」について紹介した。今回は引き続き、迅速に細菌尿を検知するための検査として有用な尿定性検査(試験紙)や尿沈渣、グラム染色などの詳細を述べる。1.白血球エステラーゼ(試験紙白血球反応)尿定性検査での白血球の検出は、好中球に存在するエステラーゼが特異基質(3-N-トルエンスルホニル-L-アラニロキシ-インドール)を分解し、生じたインドキシルがMMB(2-メトキシ-4-Nホルモリノ-ベンゼンジアゾニウム塩)とジアゾカップリング反応し、紫色を呈することを利用している。そのため顆粒球しか検出できず、リンパ球には反応しない。多少崩壊した好中球や腟分泌物で偽陽性となりうる。糖>3g/dL、タンパク>500mg/dL、高比重、酸性化物質の混入(ケトン尿)などで偽陰性となる1)。尿試験紙を保存している容器の蓋が開いた状態で2週間以上放置すると試薬が変色し、約半数で亜硝酸は偽陽性となる2)のため注意が必要である。日本で市販されている白血球反応は、(±):10〜25個/μL、(1+):25〜75個/μL、(2+):75〜250個/μL、(3+):500個/μLに相当する(尿沈渣鏡検での陽性と判定するWBC≧5/HPFは20個/μL相当)。2.亜硝酸塩尿定性検査の亜硝酸塩は、細菌の存在を間接的に評価する方法である。細菌が硝酸塩を還元し、亜硝酸塩とすることを利用して検出している。細菌の細胞質内に亜硝酸をつくる硝酸還元酵素もあるが、主にNap(periplasmic dissimilatory nitrate reductase)と呼ばれる酵素を有する細菌がperiplasmic space(細胞膜と細胞外膜の間)に亜硝酸塩を作った場合に検出できると考えられている3)。食品などから摂取した硝酸塩が尿中に存在すること、前述のような菌種が膀胱内に存在すること、尿路への貯留時間が4時間以上あることが必要である4)。腸内細菌目細菌やStaphylococcus属は硝酸塩を亜硝酸塩に還元でき、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)も還元できるが還元するのに時間がかかり、レンサ球菌や腸球菌は還元できない5)。硝酸塩を亜硝酸塩に変換できない微生物、pH<6.0、ウロビロノーゲン陽性、ビタミンC(アスコルビン酸)が存在する場合に偽陰性となる1)。血清ビリルビン値が高いときは、機序不明だが偽陽性が報告されている6)。3.尿pH意外に思われるかもしれないが、実は尿路感染症の診断において、尿定性検査での尿pHも有用である。尿pH<4.5もしくは>8.0の場合は生理的範囲では説明できない。尿路感染症の場合に酸性尿となることもあるが、臨床的意義が高いのはアルカリ尿のほうである。尿pH>8であれば、ウレアーゼ産生菌の関与を考える。細菌のもつウレアーゼが尿素を加水分解し、アンモニアが生成され尿pHが上昇する(図)7)。画像を拡大する代表的菌種はProteus mirabilis、Klebsiella pneumoniae、Morganella morganiiなど8)である。また、Corynebacterium属もウレアーゼを産生する。Escherichia coliはウレアーゼを産生することはなく、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Enterococcus属も産生率は低い。尿路感染症での尿pHと培養結果を検討した研究では、pHが高いほどProteus mirabilisの頻度が高かったという報告もあり、実臨床でも起因菌の推定に有用である9)。また、尿pHが高いことは、リン酸マグネシウムアンモニウム結石(ストルバイトとも呼ばれる)ができやすいことにも関連する10)。グラム染色や尿沈渣でこれらを確認することで間接的に尿pHを予測することもできる。閉塞性尿路感染症+意識障害ではウレアーゼ産生菌による高アンモニア血症を鑑別する必要がある。4. 迅速検査の組み合わせから尿路感染症を診断するここまで各種検査の詳細について述べてきたが、いずれも単独で尿路感染症を診断できるものではない。しかしながら各種検査を正確に解釈し、組み合わせることで診断に迫ることができる。各種検査とその組み合わせによる診断特性についてまとめると表1~311-16)となる。画像を拡大する画像を拡大する画像を拡大する白血球反応は膿尿検出の感度・特異度は比較的高いが、陽性であれば尿路感染症であるというわけではなく、また白血球反応が陰性で尿路感染症状がある患者では、尿沈渣や尿培養を検討する必要がある。亜硝酸塩は感度が低く、陰性でも尿路感染症を否定できないが、陽性なら尿路感染症を強く疑う根拠とはなる。逆に白血球エステラーゼと亜硝酸塩がともに陰性であれば尿路感染症の可能性を下げる。尿沈渣は簡便性に劣るが信頼性が高く、白血球数や細菌数によって尿路感染症の可能性を段階的に評価できる。尿グラム染色は迅速に施行することができ、得られる情報量も多く、診断特性が高い検査の1つである。とくに尿沈渣の検査を夜間・休日に施行できない施設では大きな武器となる。おわりに逆説的ではあるが、あくまで検査所見のみをもって尿路感染症を診断することができないことは繰り返し述べておく。検査を適切に解釈し、病歴・身体診察と組み合わせることでより正確な診断に迫れることは忘れないでほしい。本項が検査の解釈の一助となれば幸いである。《今回の症例の診断》昨日より頻尿を認めており、左CVA叩打痛も陽性であった。尿グラム染色ではレンサ状のグラム陽性球菌を認めた。尿定性での白血球反応陽性の感度が70%程度であること、腸球菌やレンサ球菌では亜硝酸塩は陰性になることを鑑みて、臨床所見とあわせて腎盂腎炎の疑いで入院加療とした。翌日、尿培養からB群溶連菌を認め、これに伴う腎盂腎炎と診断した。1)Simerville JA, et al. Am Fam Physician. 2005;71:1153-1162.2)Gallagher EJ et al. Am J Emerg Med. 1990;8:121-123.3)Morozkina EV, Zvyagilskaya RA. Biochemistry. 2007;72:1151-1160.4)Wilson ML, Gaido L. Clin Infect Dis. 2004;38:1150-1158.5)Sleigh JD. Br Med J. 1965;1:765-767.6)Watts S, et al. Am J Emerg Med. 2007;25:10-14.7)Burne RA, Chen YY. Microbes Infect. 2000;2:533-542.8)新井 豊ほか. 泌尿器科紀要 1989;35:277-281.9)Lai HC, et al. J Microbiol Immunol Infect. 2021;54:290-298.10)Daudon M, Frochot V. Clin Chem Lab Med. 2015;53:s1479-1487.11)Ramakrishnan K, Scheid DC. Am Fam Physician. 2005;71:933-942.12)Zaman Z, et al. J Clin Pathol. 1998;51:471-472.13)Williams GJ, et al. Lancet Infect Dis. 2010;10:240-250.14)Whiting P, et al. BMC Pediatr. 2005;5:4.15)Meister L, et al. Acad Emerg Med. 2013;20:631-645.16)Ducharme J, et al. CJEM. 2007;9:87-92.

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チルゼパチド、閉塞性睡眠時無呼吸の肥満者の睡眠アウトカムを改善/NEJM

 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸と肥満のある患者の治療において、プラセボと比較してチルゼパチド(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド[GIP]とグルカゴン様ペプチド1[GLP-1]の受容体作動薬)は、無呼吸低呼吸指数(AHI)の改善とともに体重減少をもたらし、良好な睡眠関連の患者報告アウトカムを示すことが、米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のAtul Malhotra氏らSURMOUNT-OSA Investigatorsが実施した「SURMOUNT-OSA試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2024年6月21日号で報告された。PAP療法の有無別の2つの試験からなる無作為化試験 SURMOUNT-OSA試験は2022年6月~2024年3月に、9ヵ国60施設で実施した52週間の二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(Eli Lillyの助成を受けた)。 中等症~重症の閉塞性睡眠時無呼吸(AHI[睡眠中の1時間当たりの無呼吸および低呼吸の回数]≧15回/時)および肥満(BMI≧30[日本は≧27])と診断された患者469例を登録した。これらの患者を、ベースラインで気道陽圧(PAP)療法を受けていない集団(234例、試験1)と受けている集団(235例、試験2)に分け、それぞれ最大耐用量のチルゼパチド(10または15mg)を週1回皮下投与する群(試験1:114例、試験2:120例)またはプラセボ群(同120例、115例)に無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、AHIのベースラインから52週までの変化量とした。PAP療法の有無を問わず、AHIが有意に低下 ベースラインにおいて試験1は平均年齢が47.9歳、男性が67.1%、白人が65.8%、平均BMIが39.1、平均AHIが51.5回/時であり、試験2はそれぞれ51.7歳、72.3%、73.1%、38.7、49.5回/時であった。 試験1では、52週時のAHIの平均変化量は、プラセボ群が-5.3回/時(95%信頼区間[CI]:-9.4~-1.1)であったのに対し、チルゼパチド群は-25.3回/時(-29.3~-21.2)であり、推定治療群間差は-20.0回/時(95%CI:-25.8~-14.2)とチルゼパチド群で有意に優れた(p<0.001)。 また、試験2のAHIの平均変化量は、プラセボ群の-5.5回/時(95%CI:-9.9~-1.2)に対し、チルゼパチド群は-29.3回/時(-33.2~-25.4)であり、推定治療群間差は-23.8回/時(95%CI:-29.6~-17.9)とチルゼパチド群で有意に良好だった(p<0.001)。体重減少、hsCRP濃度、低酸素負荷、収縮期血圧なども改善 副次エンドポイントはすべて、PAP療法の有無にかかわらずチルゼパチド群で有意に優れた。このうち主なものとして、52週時の体重の変化率(推定治療群間差は試験1:-16.1%[95%CI:-18.0~-14.2]、試験2:-17.3%[-19.3~-15.3])、高感度C反応性蛋白(hsCRP)濃度の変化量(同試験1:-0.7mg/L[-1.2~-0.2]、試験2:-17.3mg/L[-19.3~-15.3])、低酸素負荷の変化量(同試験1:-70.1%分/時[-90.9~-49.3]、試験2:-61.3%分/時[-84.7~-37.9])、48週時の収縮期血圧の変化量(同試験1:-7.6mmHg[-10.5~-4.8]、試験2:-3.7mmHg[-6.8~-0.7])が挙げられた。 また、患者報告アウトカムであるPatient-Reported Outcomes Measurement Information System(PROMIS)の短縮版Sleep-related Impairment(PROMIS-SRI)および同短縮版Sleep Disturbance(PROMIS-SD)の52週時までの試験1、2を合わせた変化量は、チルゼパチド群で良好だった(いずれもp<0.001)。 一方、チルゼパチド群では消化器系の有害事象の頻度が高く、試験1では下痢が26.3%、悪心が25.4%、嘔吐が17.5%、便秘が15.8%で発現し、試験2ではそれぞれ21.8%、21.8%、9.2%、15.1%に認めた。これらの大部分は軽度~中等度だった。また、試験2のチルゼパチド群で急性膵炎を2例確認した。甲状腺髄様がんの報告はなかった。 著者は、「2つの試験において、チルゼパチドの投与を受けた参加者では、閉塞性睡眠時無呼吸に関連する一般的な心血管リスク因子の改善とともに、睡眠呼吸障害や、主観的睡眠障害および睡眠関連障害の緩和において臨床的に意義のある変化を認めた」とまとめている。

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抗うつ薬中断後症状の発生率〜メタ解析

 抗うつ薬中断後症状は、実臨床においてさらに重要度が増しているが、その発生率は定量化されていない。抗うつ薬中断後症状の推定発生率を明らかにすることは、治療中断時に患者および臨床医、抗うつ薬治療研究者に対する有用な情報提供につながる。ドイツ・ケルン大学のJonathan Henssler氏らは、抗うつ薬とプラセボを中断した患者における抗うつ薬中断後症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The Lancet Psychiatry誌2024年7月号の報告。 2022年10月13日までに公表された、抗うつ薬中断後症状の発生率を評価したランダム化比較試験(RCT)、その他の比較試験、観察研究を、Medline、EMBASE、CENTRALよりシステマティックに検索した。対象研究は、精神疾患、行動障害、神経発達障害の患者を対象に、既存の抗うつ薬(抗精神病薬、リチウム、チロキシンを除く)またはプラセボの中断または漸減を調査した研究とした。新生児の研究および器質性疾患による疼痛候群などの身体症状に対して、抗うつ薬を使用した研究は除外した。研究の選択、サマリデータの抽出、バイアスリスク評価後のデータを用いて、ランダム効果メタ解析を行った。主要アウトカムは、抗うつ薬またはプラセボの中断後の症状の発生率とした。また、重度の中断後症状の発生率も分析した。方法論的変数のテストには、感度分析、メタ回帰分析を用いた。 主な結果は以下のとおり。・スクリーニングされた論文6,095件から79件(RCT:44件、観察研究:35件)、2万1,002例(女性:72%、男性:28%、平均年齢:45歳、年齢範囲:19.6〜64.5)をメタ解析に含めた。・民族に関するデータは、一貫して報告されなかった。・1万6,532 例の患者が抗うつ薬を中止し、4,470 例の患者がプラセボを中止した。・1つ以上の抗うつ薬中断症状の発生率は、抗うつ薬中断群(研究グループ:62件)で0.31(95%信頼区間[CI]:0.27〜0.35)、プラセボ群(研究グループ:22件)で0.17(95%CI:0.14〜0.21)であった。・対象のRCTにおける抗うつ薬中断群とプラセボ群における中断後症状の発生率の差は、0.08(95%CI:0.04〜0.12)であった。・重度の抗うつ薬中断後症状の発生率は、抗うつ薬中断群で0.028(95%CI:0.014〜0.057)、プラセボ群で0.006(95%CI:0.002〜0.013)であった。・抗うつ薬中断後症状の発生率の高い薬剤は、desvenlafaxine、ベンラファキシン、イミプラミン、エスシタロプラムであり、重症度と関連していた薬剤は、イミプラミン、パロキセチン、desvenlafaxine、ベンラファキシンであった。・結果の異質性は、顕著であった。 著者らは、「プラセボ群における非特異的効果を考慮すると、抗うつ薬中断後症状の発生率は約15%であり、中断した患者の6〜7人に1人が影響を受けることが明らかとなった。サブグループおよび異質性の分析では、診断、投薬、試験関連特性では説明不能な因子を示唆しており、患者、臨床医、またはその両方の主観的因子が影響している可能性がある。結果を解釈するには、残存または再発の精神病理を考慮する必要があるが、本結果は、過度の不安を引き起こすことなく、抗うつ薬中断後症状の可能性に関する知見を患者、臨床医が得ることにつながるであろう」としている。

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第220回 1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却

1型糖尿病患者が細胞移植治療でインスリン頼りを脱却幹細胞から作るVertex Pharmaceuticals社の膵島細胞VX-880移植治療の有望な第I/II相FORWARD試験結果がこの週末の米国糖尿病協会(ADA)年次総会で報告されました。VX-880が投与された1型糖尿病(T1D)患者のインスリン使用が減るか不要となっており、1回きりの投与でインスリンに頼らずとも済むようになる可能性が引き続き示されています1,2)。最近の調査結果によると、先進の技術使用にもかかわらず、T1D患者の6%ほどが低血糖の自覚困難で誰かの助けを要する深刻な低血糖を繰り返し被っています3)。低血糖はT1D患者にしばしば認められます。しかしT1D患者は時と共にその自覚が困難になることがあり、その症状を感じられなくなる恐れがあります。自覚なく治療されずじまいの低血糖はやがて混乱、昏睡、発作、心血管疾患などの深刻な低血糖イベント(SHE)を招き、下手すると死に至ります。FORWARD試験は先立つ1年間のSHE回数が2回以上で、低血糖の自覚が困難なT1D患者を募って実施されています。当初の被験者数は17例でしたが、良好な結果が得られていることを受けてさらに約20例が試験に加わることになっています。当初の予定人数の17例はすでに組み入れ済みで、そのうち14例はVX-880投与に至っています。VX-880はヒト幹細胞から作られる膵島細胞を成分とし、試験では被験者の肝門脈に注入されました。VX-880が投与された14例のうち、目標用量(full dose)が1回きり投与された12例の経過は良好で、全員に膵島細胞が定着しました。投与前には生来のインスリン分泌の指標であるCペプチドが空腹時に検出できませんでしたが、VX-880投与後90日までに糖に応じたインスリン生成が確認されています。12例中11例はインスリン投与が減るか不要になりました。経過180日を過ぎた10例のうち7例はインスリン投与が不要となり、2例は日々のインスリン使用がおよそ70%少なくて済むようになりました。最終観察時点で12例全員のHbA1cは米国糖尿病協会(ADA)が掲げる目標である7%未満に落ち着いており、常時測定の糖濃度は70%超のあいだ目標範囲である70~180mg/dLに収まっていました。少なくとも1年間が経過した3例はSHEなしで90日目以降を過ごせており、インスリンに頼ることなくHbA1c 7%未満を達成しています。主だった血糖指標一揃いの大幅な改善、SHEの抑制、インスリン投与頼りの脱却の効果をみるに、VX-880はT1Dの治療を根底から変え、患者の負担を大幅に軽減しうると試験医師の1人Piotr Witkowski氏は言っています2)。玉に瑕なことにVX-880投与患者は免疫抑制治療を続ける必要があります。VX-880で備わった膵島細胞を守って免疫に排除されずに居続けられるようにするためです。そこでVertex社は免疫抑制治療不要の細胞治療VX-264の開発も進めています。VX-264はVX-880に免疫から守る覆いをつけたものであり、VX-880と同様に第I/II相試験が進行中です4)。参考1)Expanded FORWARD Trial Demonstrates Continued Potential for Stem Cell-Derived Islet Cell Therapy to Eliminate Need for Insulin for People with T1D / PRNewswire2)Vertex Announces Positive Results From Ongoing Phase 1/2 Study of VX-880 for the Treatment of Type 1 Diabetes Presented at the American Diabetes Association 84th Scientific Sessions / BUSINESS WIRE 3)Sherr JL, et al. Diabetes Care. 2024;47:941-947.4)NCT05791201(ClinicalTrials.gov)

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睡眠時無呼吸は将来の入院リスクと関連

 睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では症状がない人に比べて、将来、病気で入院するオッズが21%高いことが新たな研究で明らかになった。この研究を実施した米フロリダ大学医学部のChristopher Kaufmann氏は、「この結果は、過体重、健康不良、うつ病といった医療サービス利用の増加に寄与する可能性のある因子を考慮した後でも変わらなかった」と話している。この研究結果は、米国睡眠学会および睡眠研究学会の年次総会(SLEEP 2024、6月1〜5日、米ヒューストン)で発表され、要旨が「Sleep」5月増刊号1に掲載された。 睡眠時無呼吸は、睡眠中に呼吸停止が繰り返し起こることで眠りが妨げられる症状を指し、閉塞性睡眠時無呼吸と中枢性睡眠時無呼吸に大別される。症例が多いのは閉塞性睡眠時無呼吸であり、睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞して呼吸が停止することで発生する。睡眠時無呼吸を未治療でおくと、高血圧、冠動脈疾患、心房細動、脳卒中、2型糖尿病などの健康問題を招く恐れがあることが知られている。 Kaufmann氏らの研究では、加齢に伴い生じる健康問題に関する研究であるHealth and Retirement Studyの2016年と2018年の調査に参加した50歳以上の成人2万115人のデータが分析された。調査参加者は、2016年の調査で睡眠時無呼吸も含めた睡眠障害の有無について、2018年の調査では、その後の医療サービスの利用(入院、在宅医療、ナーシングホームの利用など)の有無について尋ねられていた。参加者の11.8%が睡眠時無呼吸を有していることを報告していた。 人口統計学的属性やBMI、健康状態、抑うつ症状の有無で調整して解析した結果、2016年の時点で睡眠時無呼吸を有していた人では有していなかった人に比べて、2018年に医療サービスの利用を報告するオッズが21%有意に高いことが明らかになった(調整オッズ比1.21、95%信頼区間1.02〜1.43)。医療サービスの中では、入院のオッズが有意に高かったが(同1.21、1.02〜1.44)、在宅医療の利用に有意差は認められなかった(同1.23、0.99〜1.54)。 Kaufmann氏は学会のニュースリリースの中で、「われわれの研究では、睡眠時無呼吸を有する50歳以上の人では有していない人に比べて、将来的に医療サービスを利用する可能性の高いことが示唆された」と述べた上で、「睡眠時無呼吸に対処することは、個人の健康状態を改善するだけでなく、医療資源への負担を軽減し、より効率的かつ効果的な医療提供につながる可能性がある」との考えを示している。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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