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治療薬は「痛み」の種類で変わる

 ファイザー株式会社とエーザイ株式会社は、12月1日に都内において「いまさら聞けない痛み止め薬の基礎知識」をテーマに、プレスセミナーを共催した。 セミナーでは、ファイザー社が行ったアンケート調査「痛み止め薬の使用実態と患者意識に関する全国調査」を織り交ぜ、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が慢性痛とその治療の概要をレクチャーした。慢性痛には、種類に応じた治療薬がある 加藤氏は、「慢性痛に対する痛みの種類に応じた薬物選択と適切な服薬指導の必要性」と題し、慢性痛治療の現状と今後の治療の在り方について説明した。 現在わが国には、慢性痛を有する患者は2,700万人と推定されており、神経障害性疼痛疑いの患者は660万人と推定されている。これらの痛みの治療を放置すると、睡眠・情動・QOLに多大な影響を及ぼし、破局的思考モデル(痛みへの不安や悲観的思考の増大)により、さらに身体状態を悪化させることになる。 痛みは、大きく「侵害受容性痛(外傷などの痛み)」と「神経障害性痛(電気が走るようなビリビリした痛み)」と、その混合である「混合性痛」に分かれる。通常、侵害受容性痛であれば、NSAIDsやオピオイドでの治療が行われ、神経障害性痛であれば、神経障害性疼痛治療薬、抗うつ薬、オピオイドで治療が行われる。 とくに神経障害性痛の痛みの仕組みでは、侵害受容器からの痛み信号が神経節などを経る段階で中枢感作されて脳に到達し、そのため痛み信号の増幅が起こり痛苦が発生するものであり、この感作を抑える治療薬が適用される。具体的には、第1選択薬ではプレガバリン、ノルトリプチリンなどがあり、第2選択薬ではワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤、デュロキセチンなどが、第3選択薬ではフェンタニル、モルヒネなどが使用される。また、慢性痛の原因となる神経障害性痛は、画像所見、病理検査で診断できず、NSAIDsでも治療反応がないことから、臨床の場では痛みの鑑別に注意が必要となる。患者の8割は医師から副作用の説明を受けていない 次に11月にファイザー社がインターネットで行った「痛み止めの使用実態と患者意識に関する全国調査」を紹介した(調査対象:長く持続する痛みを抱える全国の成人男女、n=9,400)。これによると不適切使用・管理の実態として、回答者の約6割が「以前の処方薬が余っていても定期的に処方をしてもらう」と答え、約3割が「ほかの医療機関からも処方してもらい併用している」、「そのことを疼痛治療の主治医に伝えていない」など、患者の実態がわかった。また、自己判断による治療中の痛み止め中止については、約6割の回答者が「経験がある」と答え、その理由として「痛みの軽減」「症状の改善なし」「薬に頼りたくない」(上位3つ)などが挙げられていた。また、「治療薬処方時の医師からの説明」では、約5割が「効能・効果の説明を受けていない」と答えるとともに、約8割が「副作用の説明を受けていない」と回答し、医療側からの情報提供不足が懸念される結果となった。 「痛みの種類の知識」では、約2割が「よく知っている」と回答、約5割が「聞いたことがある」と答えている反面、「痛みの種類により治療効果のある薬が異なることの知識」では、約6割以上が知らないと回答するなど知識の偏在も明らかとなった。 「患者が求める痛み治療の目標設定の現状」では、「痛みは完全に取り除きたい」と約9割が回答していたが、約6割は「痛みがあっても日常生活を送ることができればよい」とも回答していた。 治療目標をどこに設定する? 実際の痛みの治療現場では、目標を「痛みを消す」ことから、「痛みが半分になり、生活改善ができる」ことを目指して、治療が行われている。具体的には、患者の痛みが和らぎ、QOLやADLが改善され、日常生活が送れるようになること、睡眠がきちんと取れることが目安となる。そして、治療薬選択の際は、痛みの評価をすることと、無効な薬を速やかに中止することが重要だという。また、加藤氏は、痛み止めを処方する際に、・少ない副作用で最大の鎮痛効果を目指す痛み止めの治療プランを提示する・患者と医師間での治療目標の設定を明確化する・治療薬の必要性について、わかりやすく説明する・副作用の種類/長期投与の安全性を説明する・効果と副作用の継続的な評価の必要性を考えるの5項目を心がけている。診療の際に具体的な説明を言葉やメモで、患者にきちんと伝えることが大切だという。 最後に、「治療環境の質の向上には、医療側から治療薬の効果と副作用の情報提供、そして、患者の正しい理解と能動的な協力は必要不可欠であり、患者参加型の治療環境で治療薬を最大限活用させることが治療のポイントになる」と述べ、レクチャーを終えた。ファイザー株式会社の「痛み止め薬の使用実態と患者意識に関する全国調査」はこちら(ケアネット 稲川 進)関連コンテンツ特集「慢性疼痛 神経障害性疼痛」

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英国プライマリケアでの処方の安全性、施設間で差/BMJ

 英国一般診療所の代表サンプル526施設を対象に処方の安全性について調べた結果、患者の約5%に不適切処方がみられ、また約12%でモニタリングの記録が欠如していることが、英国・マンチェスター大学のS Jill Stocks氏らによる断面調査の結果、明らかになった。不適切処方のリスクは、高齢者、多剤反復処方されている患者で高く、著者は、「プライマリケアにおいて、とくに高齢者と多剤反復投与患者について処方のリスクがあり適切性について考慮すべきであることが浮かび上がった」と述べている。英国では、プライマリケア向けに処方安全指標(prescribing safety indicator)が開発されているが、これまで試験セットでの検討にとどまり、大規模なプライマリケアデータベースでの評価は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年11月3日号掲載の報告。英国一般診療所526施設のデータを分析 研究グループは、英国一般診療所における複数タイプの潜在的有害処方の有病率を調べ、また診療所間にばらつきがあるかどうかについて調べた。2013年4月1日時点でClinical Practice Research Datalink(CPRD)に登録された526施設において、診断と処方の組み合わせで特定した潜在的処方リスクやモニタリングエラーの可能性がある全成人患者を包含した。 主要アウトカムは、抗凝固薬、抗血小板薬、NSAIDs、β遮断薬、glitazone(チアゾリジン系糖尿病薬:TZD)、メトホルミン、ジゴキシン、抗精神病薬、経口避妊薬(CHC)、エストロゲンの潜在的に有害な処方率。また、ACE阻害薬およびループ利尿薬、アミオダロン、メトトレキサート、リチウム、ワルファリンの反復処方患者の、血液検査モニタリングの頻度が推奨値よりも低いこととした。不適切処方、モニタリング欠如は指標によりばらつき、診療所間のばらつきも高い 全体で94万9,552例のうち4万9,927例(5.26%、95%信頼区間[CI]:5.21~5.30%)の患者が、少なくとも1つの処方安全指標に抵触した。また、18万2,721例のうち2万1,501例(11.8%、11.6~11.9%)が、少なくとも1つのモニタリング指標に抵触した。 同処方率は、潜在的処方リスクタイプの違いでばらつきがみられ、ほぼゼロ(静脈または動脈血栓症歴ありでCHC処方:0.28%、心不全歴ありでTZD処方:0.37%)のものから、10.21%(消化器系潰瘍または消化管出血歴ありで消化管保護薬処方なし、アスピリンやクロピドグレル処方あり)にわたっていた。 不十分なモニタリングは、10.4%(75歳以上、ACE阻害薬やループ利尿薬処方、尿素および電解質モニタリングなし)から41.9%(アミオダロン反復処方、甲状腺機能検査なし)にわたっていた。 また、高齢者、多剤反復処方患者で、処方安全指標の抵触リスクが有意に高かった一方、若年で反復処方が少ない患者で、モニタリング指標の抵触リスクが有意に高かった。 さらに、いくつかの指標について診療所間での高いばらつきもみられた。 なお研究グループは、処方安全性指標について、「患者への有害リスクを増大する回避すべき処方パターンを明らかにするもので、臨床的に正当なものだが例外も常に存在するものである」と述べている。さらに、検討結果について「いくつかの診療について、CPRDで捕捉できていない情報がある可能性もあった(ワルファリンを投与されている患者のINRなど)」と補足している。

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心筋梗塞のNSAIDsに関連した上部消化管出血に対するPPIの役割(解説:上村 直実 氏)-449

 日本とは異なり欧米では、心筋梗塞(MI)の再発予防のために抗血栓薬を内服している患者の中で、心血管リスクを伴うにもかかわらず、関節痛などの疼痛緩和目的で非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を併用しているものが非常に多い。抗血栓薬とNSAIDsの併用は、消化管とくに上部消化管出血のリスクが増大することが知られており、消化管出血のハイリスク患者に対してプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用が推奨されているが、リスクが不明な通常患者に対するPPIの有用性は明らかになっていない。 今回、デンマーク全土の入院データベース(DB)のうち30歳以上の初発MIで入院し、退院後30日時点で生存していた患者データを用いた解析研究が報告されている。 入院DBのうち、抗血栓療法を受けていたMI後患者8万2,955例(平均年齢67.4歳、男性64%)のうち、3万5,233例(42.5%)がNSAIDsを1回以上処方されており、3万7,771例(45.5%)がPPI投与を受けていた。平均追跡期間5.1年の間に、消化管出血の発生は3,229例(3.9%)であった。NSAIDs+抗血栓薬における出血の粗発生率(イベント/100人年)は、PPI服用患者1.8、PPI非服用患者2.1であり、抗血栓治療のレジメン、NSAIDsおよびPPIの種類にかかわらず、PPI使用群における補正後消化管出血リスクの低下が認められた(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.54~0.95)。以上の結果から、MI後で抗血栓薬とNSAIDsを併用する場合、薬剤の種類や消化管リスクの高低にかかわらずPPIの併用により消化管出血のリスクを軽減することが示唆された。 最近、欧米や台湾ではおなじみとなってきた全国データベースを用いた大規模コホート研究の結果であり、現状の課題を大ざっぱに把握することに有用である。しかし、臨床現場では、個々の患者背景は千差万別であり、個別化した対応が重要である。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第24回

第24回:痛風の診断と治療、そして予防監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 先日、痛風結節のある患者が受診されました。高齢女性で、かなり食生活が乱れているようでした。診断と治療に関しての基本的な流れを確認しつつ、家庭医として予防についても考えてみました。厳密なプリン体摂取制限による尿酸値低下の影響は少ないといわれているものの、食事習慣の改善については根拠を持ってアドバイスをしたいと思っています。 以下、文献1より(一部文献3を含む)痛風は尿酸ナトリウム結晶により、主に第1中足骨関節(MTP:metatarsophalangeal joint)が侵される、有痛性の関節炎である。ほかにも横足根関節(MT:midtarsal joint)、足関節にも多く、長期罹患例では膝関節、手指関節にも生じうるが、股関節、肩関節はまれである。女性ホルモンが尿酸排泄を増加させるので、閉経前の女性は男性に比べて痛風の有病率が低いとされている。また、アルコール(とくにビール)、肉類(とくに赤肉、ジビエ、内臓)、魚介類(貝、大型海水魚)、フルーツジュース、高濃度果糖液の入った飲料などの摂取は痛風のリスクを高める。(表1) 画像を拡大する痛風の診断基準としては、米国リウマチ学会のもの(表2)が用いられることが多く、発症リスクの計算については、オンラインで利用できるものがある2)。鑑別診断は、偽痛風、化膿性関節炎(まれだが痛風との合併あり)をはじめとした感染症、外傷である。表2. 痛風の診断基準1. 尿酸塩結晶が関節液中に存在することまたは2. 痛風結節の証明または3. 以下の11項目のうち6項目以上を満たすことa) 2回以上の急性関節炎の既往があるb) 24時間以内に炎症がピークに達するc) 単関節炎であるd) 関節の発赤があるe) 第1中足趾節関節の疼痛または腫脹があるf) 第1中足趾節関節の病変であるg) 片側の足関節の病変であるh) 痛風結節(確診または疑診)があるi) 血清尿酸値の上昇があるj) X線上の非対称性腫脹がある(骨びらん周囲に骨硬化像を伴うことと、関節裂隙が保たれていることで、RAとの鑑別可能)k) 発作の完全な寛解がある上記のような診断基準ではあるが、可能な限り関節液中の尿酸-ナトリウム結晶の証明が求められる。超音波やMRI、CTは必ずしも診断には必要ないとされる。ただし、超音波において、軟骨表面の尿酸塩結晶の検出は、Double contour signとして有名である。痛風性関節炎の診断上の注意点3)1.痛風発作中の血清尿酸値は低値を示すことがあり、診断的価値は高くない2.関節液が得られたら迅速に検鏡し、尿酸塩結晶の有無を同定する3.痛風結節は診断上価値があるが頻度は低い急性期の治療については、副腎皮質ステロイドの経口投与とNSAIDsが同等に効果的である (推奨レベルB)。第1選択はNSAIDsであり、歴史的にはインドメタシンが好んで使用されているが、他のNSAIDsに比べて効果があるというエビデンスはない。ステロイドは短期間で終了すると再燃がありうるため、10~14日で漸減していく。コルヒチンはやや高価であり、鎮痛効果はなく、発症後72~96時間経過していると効果に乏しいとされる。再発予防の治療については、痛風の既往があり、かつ年2回以上の発作(CKD stage2以上では年1回以上)、痛風結節、または尿酸結石の既往がある場合には尿酸を下げる治療を考慮する。症状がなくても発作後3~6ヵ月は治療を継続し、症状がみられる場合には引き続き継続する。服薬についても選択肢は多くあるが、ここではフェブキソスタットとアロプリノールが同等に効果がある(推奨レベルB)と述べるに留める。日本での目標値としては尿酸値6mg/dL以下に維持するのが望ましいとされている。食生活習慣の改善としては、体重減少はリスクを下げる。果糖液、プリン体を多く含む動物性蛋白、とくにビールを含むアルコールを避けるべきである。一方で、プリン体を多く含む野菜は痛風のリスクを上昇させないといわれている。野菜や低(無)脂肪の乳製品の摂取が推奨される。(ただし、推奨レベルはC)※推奨レベルはSORT evidence rating systemに基づくA:一貫した、質の高いエビデンスB:不整合、または限定したエビデンスC:直接的なエビデンスを欠く※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Hainer BL, et al. Am Fam Physician. 2014;90:831-836. 2) Gout diagnosis calculator. the GP education and training resource.http://www.gp-training.net/rheum/gout.htm (参照2015.11.4). 3) 日本痛風・核酸代謝学会ガイドライン改訂委員会. 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン ダイジェスト版.http://www.tufu.or.jp/pdf/guideline_digest.pdf (参照 2015.11.4).

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急性腰痛症にはNSAID単独で/JAMA

 急性腰痛症(LBP)に対してナプロキセン単独と、ナプロキセンにcyclobenzaprineまたはオキシコドン/アセトアミノフェンを追加投与した場合について、1週間後の機能的アウトカムや痛みに有意差はみられなかったことが示された。米国・アルベルト・アインシュタイン医学校のBenjamin W. Friedman氏らが、救急部門(ED)受診患者を対象に行った無作為化試験の結果、報告した。米国では、LBPでEDを受診する患者が年間250万人超いるという。これらの患者に対しては通常、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、アセトアミノフェン、オピオイド、筋弛緩薬を組み合わせた治療が行われる頻度が高い。今回の結果を踏まえて著者は、「所見は、同患者にはナプロキセンに追加投与は不要であることを支持するものであった」とまとめている。JAMA誌2015年10月20日号掲載の報告。単独、cyclobenzaprineまたはオキシコドン/アセトアミノフェン併用の3群を比較 試験は、急性LBPでEDを受診した患者について、(1)ナプロキセン+プラセボ(単独群)、(2)ナプロキセン+cyclobenzaprine、(3)ナプロキセン+オキシコドン/アセトアミノフェンの10日間投与の1週時点、3ヵ月時点の機能的アウトカムおよび疼痛症状を比較することを目的とし、無作為化二重盲検3群比較にて行われた。試験場所のEDは、ニューヨーク市ブロンクスの1施設であった。 被験者は、2週間未満の非外傷性または非神経根性LBPを呈し、Roland-Morris Disability Questionnaire(RMDQ)による疼痛スコアが5超であった場合、ED退院時に登録を適格とした。RMDQは24の質問項目でLBPを測定し、0(障害なし)~24(障害が最大)の指標で関連機能障害を評価する。 試験は2012年4月に開始され、2,588例が登録評価を受け、323例が適格患者として無作為に、単独群107例、cyclobenzaprine併用群108例、オキシコドン/アセトアミノフェン併用群108例に割り付けられた。 全患者に、ナプロキセン500mgを20錠投与(500mgを1日2回、10日分)。併用錠剤はcyclobenzaprine 5mg、オキシコドン5mg/アセトアミノフェン325mgが、それぞれ60錠投与(単独群にはプラセボ錠剤60錠)され、患者はLBPへの必要性に応じて8時間ごとに1~2錠を服用するよう指示を受けた。また、退院前に標準化された10分間のLBP教育を受けた。 主要アウトカムは、ED退院時と1週時点のRMDQでみた改善であった。1週時点の機能的アウトカム改善に有意差なし フォローアップは2014年12月に完了した。3群の人口統計学的特性は類似していた(平均年齢38~39歳、男性割合44~58%、高卒割合41~57%など)。また、ベースライン時のRMDQスコア中央値は、単独群20(四分位範囲[IQR]:17~21)、cyclobenzaprine併用群19(同:17~21)、オキシコドン/アセトアミノフェン併用群20(同:17~22)であった。 結果、1週時点の平均RMDQ改善スコアは、単独群9.8、cyclobenzaprine併用群10.1、オキシコドン/アセトアミノフェン併用群11.1であった。cyclobenzaprine併用群 vs.単独群の平均RMDQ改善スコア差は0.3(98.3%信頼区間[CI]:-2.6~3.2、p=0.77)、オキシコドン/アセトアミノフェン併用群vs.単独群の同値は1.3(同:-1.5~4.1、p=0.28)、また、cyclobenzaprine併用群 vs.オキシコドン/アセトアミノフェン併用群の同値は0.9(同:-2.1~3.9、p=0.45)であった。

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心筋梗塞後の患者にPPIは有益か/BMJ

 心筋梗塞(MI)後で抗血栓薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与を受ける患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与は、消化管出血リスクの低下と関連することが示された。抗血栓薬、NSAIDs、PPIの種類にかかわらず関連がみられたという。デンマーク・コペンハーゲン大学のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らが、同国入院患者データを分析し報告した。著者は今回の結果について、「観察非無作為化試験であり限定的である」としたうえで、MI後でNSAIDs服用を必要とする患者について、PPI投与はベネフィットをもたらす可能性があると述べている。BMJ誌オンライン版2015年10月19日号掲載の報告より。抗血栓薬+NSAIDs服用MI後患者で、PPI服用時の消化管出血リスクを調査 MI後患者へのNSAIDs投与は、心血管リスクを理由に認められていないが、疼痛症状などを理由に広く使用されている。一方で、MI後患者には抗血栓薬およびNSAIDs投与と関連した出血合併症が認められているが、PPIの消化管出血リスクへの影響については明らかではない。 研究グループは、PPIの影響を調べるため、1997~2011年にデンマーク全病院からの入院レジストリデータを集約して分析した。30歳以上の初発MIで入院し、退院後30日時点で生存していた患者を包含。PPIと、抗血栓薬+NSAIDsによる消化管出血リスクの関連を、補正後時間依存的Cox回帰モデルを用いて調べた。PPI非服用患者と比べて出血リスクは0.72 結果、抗血栓治療およびNSAIDs治療を受けるMI後患者それぞれにおいて、PPI使用による消化管出血リスクの低下が認められた。 単剤または2剤抗血栓療法を受けていたMI後患者8万2,955例(平均年齢67.4歳、男性64%)のうち、42.5%(3万5,233例)がNSAIDsを1回以上処方されており、45.5%(3万7,771例)がPPI投与を受けていた。 平均追跡期間5.1年の間に、消化管出血の発生は3,229例であった。NSAIDs+抗血栓療法における出血の粗発生率(イベント/100人年)は、PPI服用患者1.8、PPI非服用患者2.1で、抗血栓治療のレジメン、NSAIDsおよび使用PPIのタイプにかかわらず、PPI使用群における補正後出血リスクの低下が認められた(ハザード比:0.72、95%信頼区間:0.54~0.95)。 これらの結果について著者は、「観察非無作為化試験であり限定的である」と述べたうえで、「結果は、消化管リスクの有無にかかわらず、PPI投与が有益な効果をもたらす可能性があることを示唆するものである。また、MI後患者でNSAIDsを回避できないときは、医師はPPIを処方しても差し支えないことが示唆された」と述べている。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第23回

第23回:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 消化器病領域で遭遇する頻度が多い疾患の1つに消化性潰瘍が挙げられますが、その原因のほとんどが、ヘリコバクター・ピロリ菌感染とNSAIDsの使用によるものと言われています。ヘリコバクター・ピロリ菌には日本人の約50%弱が感染していると言われ、がんの発生にも関与しているため、どのような人にどのような検査・治療を行うべきかを理解しておくことが重要です。 除菌治療に関連して、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)などの新しい治療薬も販売されていますが、日本での除菌適応は「H. pylori 陽性の胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃がんに対する内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」で、胃炎の場合には上部消化管内視鏡での確認が必須となっていることに注意が必要です。いま一度、既存の診断と除菌治療戦略について知識の整理をしていただければ幸いです。 タイトル:消化性潰瘍とH. pylori感染症の診断とH. pylori除菌治療について以下、 American Family Physician 2015年2月15日号1)より一部改変H. pyloriはグラム陰性菌でおよそ全世界の50%以上の人の胃粘膜に潜んでいると言われ、年代によって感染率は異なる。十二指腸潰瘍の患者の95%に、胃潰瘍の患者の70%の患者に感染が見られる。典型的には幼少期に糞口感染し、数十年間持続する。菌は胃十二指腸潰瘍やMALTリンパ腫、腺がんの発生のリスクとなる。病歴と身体所見は潰瘍、穿孔、出血や悪性腫瘍のリスクを見出すためには重要であるが、リスクファクターと病歴、症状を用いたモデルのシステマティックレビューでは機能性dyspepsiaと器質的疾患を、明確に区別できないとしている。そのため、H. pyloriの検査と治療を行う戦略が、警告症状のないdyspepsia(胸やけ、上腹部不快感)の患者に推奨される。米国消化器病学会では、活動性の消化性潰瘍や消化性潰瘍の既往のある患者、dyspepsia症状のある患者、胃MALTリンパ腫の患者に検査を行うべきとしている。現在無症状である消化性潰瘍の既往のある患者へ検査を行う根拠は、H. pyloriを検出し、治療を行うことで再発のリスクを減らすことができるからである。H. pyloriを検出するための検査と治療の戦略は、dyspepsiaの患者のほか、胃がんのLow Risk群(55歳以下、説明のつかない体重減少や進行する嚥下障害、嚥下痛、嘔吐を繰り返す、消化管がんの家族歴、明らかな消化管出血、腹部腫瘤、鉄欠乏性貧血、黄疸などの警告症状がない)の患者に適当である。内視鏡検査は55歳以上の患者や警告症状のある患者には推奨される。H. pyloriの検査の精度は以下のとおりである。<尿素呼気試験>感度と特異度は100%に達する。尿素呼気試験は除菌判定で選択される検査の1つであり、除菌治療終了から4~6週間空けて検査を行うべきである。プロトンポンプ阻害薬(PPI)は、検査の少なくとも2週間前からは使用を控えなければならず、幽門側胃切除を行った患者では精度は下がる。<便中抗原検査>モノクローナル抗体を用いた便中抗原検査は、尿素呼気試験と同等の精度を持ち、より安くて簡便にできる検査である。尿素呼気試験のように便中抗原検査は活動性のある感染を検出し、除菌判定に用いることができる。PPIは検査の2週間前より使用を控えるべきだが、尿素呼気試験よりもPPIの使用による影響は少ない。<血清抗原>血清抗原検査は血清中のH. pyloriに特異的なIgGを検出するが、活動性のある感染か、既感染かは区別することができない。そのため除菌判定に用いることはできない。検査の感度は高いが、特異的な検査ではない(筆者注:感度 91~100% 特異度 50~91%)2)。PPIの使用や、抗菌薬の使用歴に影響されないため、PPIを中止できない患者(消化管出血を認める患者、NSAIDsの使用を続けている人)に最も有用である。<内視鏡を用いた生検>内視鏡検査による生検は、55歳以上の患者と1つ以上の警告症状のある患者には、がんやその他の重篤な原因の除外のために推奨される。内視鏡検査を行う前の1~2週間以内のPPIの使用がない患者、または4週間以内のビスマス(止瀉薬)や抗菌薬の使用がない患者において、内視鏡で施行される迅速ウレアーゼテストはH. pylori感染症診断において精度が高く、かつ安価で行える。培養とPCR検査は鋭敏な検査ではあるが、診療所で用いるには容易に利用できる検査ではない。除菌治療すべての消化性潰瘍の患者にH. pyloriの除菌が推奨される。1次除菌療法の除菌率は80%以上である。抗菌薬は地域の耐性菌の状況を踏まえて選択されなければならない。クラリスロマイシン耐性率が低い場所であれば、標準的な3剤併用療法は理にかなった初期治療である。除菌はほとんどの十二指腸潰瘍と、出血の再発リスクをかなり減らしてくれる。消化性潰瘍が原因の出血の再発防止においてはH. pyloriの除菌治療は胃酸分泌抑制薬よりも効果的である。<標準的3剤併用療法>7~10日間の3剤併用療法のレジメン(アモキシシリン1g、PPI、クラリスロマイシン500mgを1日2回)は除菌のFirst Lineとされている。しかし、クラリスロマイシン耐性が増えていることが、除菌率の低下に関連している。そのため、クラリスロマイシン耐性のH. pyloriが15%~20%を超える地域であれば推奨されない。代替療法としては、アモキシシリンの代わりにメトロニダゾール500mg1日2回を代用する。<Sequential Therapy(連続治療)>Sequential TherapyはPPIとアモキシシリン1g1日2回を5日間投与し、次いで5日間PPI、クラリスロマイシン500mg1日2回、メトロニダゾール500mg1日2回を投与する方法である。全体の除菌率は84%、クラリスマイシン耐性株に対して除菌率は74%である。最近の世界規模のメタアナリシスでは、sequential therapyは7日間の3剤併用療法よりも治療効果は優れているが、14日間の3剤併用療法よりも除菌率は劣るという結果が出ている。<ビスマスを含まない4剤併用療法>メトロニダゾール500mg1日2回またはチニダゾール500mg1日2回を標準的な3剤併用療法に加える治療である。Sequential Therapyよりも複雑ではなく、同様の除菌率を示し、クラリスロマイシンとメトロニダゾール耐性株を有する患者でも効果がある。クラリスロマイシンとメトロニダゾールの耐性率が高い地域でも90%にも及ぶ高い除菌率であるが、クラリスロマイシンを10日間服用する分、sequential therapyよりも費用が掛かってしまう。除菌判定H. pyloriの除菌判定のための尿素呼気試験や便中抗原の試験の適応は、潰瘍に関連したH. pylori感染、持続しているdyspepsia症状、MALTリンパ腫に関連したH. pylori感染、胃がんに対しての胃切除が含まれる。判定は除菌治療が終了して4週間後以降に行わなければならない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Fashner J , et al. Am Fam Physician. 2015;91:236-242. 2) 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会.H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版

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抗うつ薬とNSAIDs併用、頭蓋内出血リスク1.6倍/BMJ

 抗うつ薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の併用開始30日間において、頭蓋内出血リスクの増大が認められることを、韓国・医薬品安全・リスクマネジメント研究所(Institute of Drug Safety and Risk Management)のJu-Young Shin氏らが、2009~2013年の韓国健康保険データを後ろ向きに分析し報告した。NSAIDs非併用群と比較して1.6倍高かったという。BMJ誌オンライン版2015年7月14日号掲載の報告。5年間の韓国健康保険データを後ろ向きに分析 検討は、傾向スコア適合コホート研究にて行われた。2009年1月1日~2013年12月31日の韓国健康保険データベースから、前年に抗うつ薬処方歴がなく、同じく前年に脳血管障害の診断歴のない初回抗うつ薬投与患者を対象とし、NSADs併用開始後30日以内の頭蓋内出血による入院を調べた。 適合Cox回帰モデルを用いて、傾向スコアで1対1に適合後、抗うつ薬治療患者の頭蓋内出血リスクについて、NSAIDs併用 vs.非併用を比較した。抗うつ薬のクラスによる有意なリスクの差はみられず 傾向スコア評価・適合後、分析コホートには414万5,226例が組み込まれた。 結果、全試験期間中の30日頭蓋内出血リスクは、NSAIDs非併用群よりも併用群が有意に高率であった(補正後ハザード比:1.6、95%信頼区間:1.32~1.85、p<0.001)。 同リスクについて、各クラスの抗うつ薬についてそれ以外の抗うつ薬群と比較し検討したが、統計的に有意な差はみられなかった。

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チクングニア熱に気を付けろッ! その2【新興再興感染症に気を付けろッ!】

ケアネットをご覧の皆さま、こんにちは。国立国際医療研究センター 国際感染症センターの忽那です。本連載「新興再興感染症に気を付けろッ!」、通称「気を付けろッ(まあ誰も呼んでないんですけどね)」は「新興再興感染症の気を付け方」についてまったりと、そして時にまったりと、つまり一貫してまったりと学んでいくコーナーです。前回は緊急特番として「MERSに気を付けろッ!」をお送りしましたが、今回は前々回の続きとして「チクングニア熱に気を付けろッ! その2」をお届けしたいと思います。デング熱との鑑別診断は大事なポイント前々回の「その1」では、チクングニア熱を野球界で例えると本塁打を60本打ったときのバレンティン選手(ヤクルトスワローズ)であり、手の付けようがないので敬遠するしかないというお話でした。そこで、今回はチクングニア熱の特徴とその敬遠の仕方についてお話ししたいと思います。チクングニア熱の臨床症状は、デング熱と非常に良く似ています。ネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるところも同じですし、発熱、頭痛、関節痛といった非特異的な症状もそっくりです。おまけに皮疹までデング熱によく似ています。しかし、チクングニア熱がデング熱と異なる点もいくつかあります。チクングニア熱の潜伏期はおおむね2~4日とされており、デング熱(おおむね3~7日)よりやや短い期間で発症します1)。また、発熱は3~5日間くらい続くことが多く、これも5~7日間続くデング熱よりも短い傾向にあります。デング熱では少ない頻度ではありますが重症化し、出血症状が現れることがありますが、チクングニア熱では出血症状はまれです。また、チクングニア熱では関節痛だけでなく「関節炎」まで起こすことがあるのが特徴です。しかも、タチの悪いことに、この関節痛・関節炎は遷延化することがあり、長い人では3年経っても関節炎が残っていたという報告があります2)。図は熱が出た後から1ヵ月くらい両肩関節炎のため肩が上がらないという主訴で、国立国際医療研究センターを受診された患者さんです。チクングニア熱による慢性関節炎と診断しました。長期間QOLが低下してしまうという意味では、デング熱よりもやっかいな感染症です。また、左右対称性の慢性多関節炎ということで、関節リウマチが疑われてリウマチ膠原病科を受診する方もいらっしゃるようです。診断は、ウイルス血症を呈している急性期にPCR法でチクングニアウイルスを検出するか、亜急性期~慢性期にチクングニアに対するIgM抗体陽性、あるいはペア血清でのIgG抗体の陽転化または有意な上昇を確認することで診断されます(表1)。現在のところ、採算の面から気軽に行える検査ではありませんので、保健所に連絡をして地方衛生研究所または国立感染症研究所で検査をしてもらうことになるでしょう。チクングニア熱は感染症法で4類感染症に指定されていますので、確定診断後にただちに保健所に届け出る必要があります。忘れないようにしましょう!やっぱり蚊に刺されないことが1番の予防さて、肝心のチクングニア熱の治療ですが……ありませんッ! 残念ながら今のところ対症療法しかないのです。関節痛が強いので、ついNSAIDsを使いたくなるのですが、デング熱との鑑別ができていない時点では、NSAIDsの使用は避けたほうがいいでしょう。なぜなら、デング熱であった場合にNSAIDsが出血症状を助長してしまうからですッ! チクングニア熱と診断されれば、NSAIDsの使用は可能です。なお、チクングニア熱による慢性関節炎に対するステロイドの有効性は今のところ不明です。というわけで、チクングニア熱にかかってしまったら大変ですので、チクングニア熱は敬遠するのが一番です。チクングニア熱のワクチンはまだ実用化されておりませんので、現実的には「蚊に刺されないこと」が重要となってきます。具体的な防蚊対策として、(1)蚊が多い時間・時期・場所を避ける(2)肌の露出を最小限にするため長袖長ズボンを着用する(3)DEETを含む防虫剤を適正に使用する(4)蚊帳の使用などが挙げられますが、とくに重要なのはDEET(N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド)を含む防虫剤を適正に使用することであり、表2の持続有効時間ごとに塗り直す必要があります。わが国で販売されている防虫剤は、最大でも12%までしかDEETが含まれていません。そのため、基本的には2時間ごとにこまめに塗り直すことが推奨されます。海外のデング熱やチクングニア熱の流行地にいく場合には、より濃い濃度のDEETを含む防虫剤が販売されていますので、20~30%のDEETを含む製品を購入し、4~6時間ごとに塗り直すのがお勧めです。これでチクングニア熱をバッチリ予防しましょう!前回お話ししたようにチクングニア熱は毎年輸入例が報告されていますし、いつ日本で流行してもおかしくない感染症です。感染を広げないためには早期に診断し、感染者が蚊に刺されないよう指導することが重要になります。チクングニア熱の正しい知識を身に付け、症状を診察したときに正しく診断できるようにしておきましょう!さて、次回はクリプトコッカス界の新興感染症、Cryptococcus gattiiのガチな(シャレですう)気を付け方について、お話したいと思います!1)Borgherini G, et al. Clin Infect Dis.2007;44:1401-1407.2)Schilte C, et al. PLoS Negl Trop Dis.2013;7:e2137.3)Fradin MS, Day JF. N Engl J Med.2002;347:13-18.

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「伝染性紅斑」と「手足口病」に気を付けろッ!

国立感染症研究所の『感染症週報』(2015年第21週)によると、「伝染性紅斑(リンゴ病)」と「手足口病」が、例年に比べ早いペースで感染が拡大している。小児だけでなく成人にも感染する疾患であることから、両疾患の概要とその対応策について、CareNet.comでお馴染みの忽那 賢志氏(国立国際医療研究センター 感染症内科/国際感染症センター)にお話を聞いた。伝染性紅斑(リンゴ病)の気を付け方約5年ごとに大流行を繰り返す伝染性紅斑は、ヒトパルボウイルスB19が原因となる感染症である。主に気道分泌物から飛沫する鼻水、咳・くしゃみで感染し、毎年、年始めから7月頃をピークに以降は減少していく。約5年ごとに大きな流行を繰り返す傾向があり、本年は、その大流行期に当たるのかもしれない。症候として、小児では、感染後10~20日の潜伏期間の後、頬に真っ赤な発疹が出現するのが特徴。また、先行する感冒症状として、頬に発疹が出る約7日前に発熱する患児もいるが、発熱がなく、急に発疹が出る患児もいる。そのほか、手足にレース様の紅斑の皮疹が出現する場合もある。成人では、頬に発疹が出ることはなく、四肢にレース様の紅斑が現れることがある。また関節炎の頻度が高く、時に歩行が困難になるくらいである。女性のほうが関節炎が起こりやすい。ウイルスの排出は、先行する感冒症状の時期に排出され、顕在症状期には感染は広がらないとされている。診断では、問診や視診などが中心となるが、患児では頬に紅斑が出るなど顕在症状があるので、診断はつきやすい。しかし、成人では関節炎や皮疹などにより、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)との鑑別診断も必要となるので、本来はパルボウイルスB19IgM抗体検査などで確定診断することが望まれる。現在パルボウイルスB19IgM抗体検査は妊婦以外では保険適用外のため、1日も早い保険適用を期待したい。治療については、抗ウイルス薬がないために、対症療法が行われる。本症は自然寛解する感染症であるが、発熱があれば水分補給をしっかりとし、関節炎などが強ければ非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの使用が必要となることもある。なおワクチンについては、現在有効なものはない。過去に1度罹患すると免疫獲得により再罹患はないとされている。成人の罹患はさまざまなリスクに注意注意すべきポイントとして、本症は小児と成人では症状が異なることである。成人では、妊婦が罹患した場合、胎児水腫などの発生が懸念され、自己免疫性溶血性貧血などの血液疾患の既往がある場合には一過性骨髄無形成クリーゼと呼ばれる合併症のリスクが、また免疫不全患者での慢性パルボウイルスB19感染では赤芽球癆による重症貧血などの合併症のリスクがあるので、外出時にマスクの着用や子供の多いところに出かけないなどの対策が必要となる。診療する医療側の対策としては、ウイルス排出時期にパルボウイルスB19感染症と診断することは難しいため、適切に感染対策を行うことは難しい。本症の流行期にはインフルエンザ流行期と同様に本症を疑う患者には、サージカルマスクや手袋を着用しての診療が望まれる。手足口病の気を付け方3種類のウイルスが交互に流行手足口病は、わが国では主にコクサッキーウイルスA6、同A16、エンテロウイルス71(EV71)などが原因となり、飛沫感染と接触感染(糞口感染も含む)などで感染する。毎夏にピークが来るが、秋から冬にかけても流行する。今季はコクサッキーウイルスA16が流行している模様である。重複することもあるが3種類のウイルスが交互に流行を繰り返すのが特徴で、年によって流行するウイルスは異なる。症候としては、3~5日間の潜伏期間の後、口腔内粘膜、手のひら、足の裏などに水疱性病変ができる。患児によってはひざ、ひじ、臀部などでも観察される。これは、成人もほぼ同様で、口腔内の水疱のため、嚥下がしづらくなるなどの主訴を経験する。水痘、単純ヘルペスと区別がつかないことがあり、鑑別診断で注意を要する。治療については、抗ウイルス薬がないために、対症療法が行われる。本症は自然寛解する感染症であるが、口腔内の水疱の痛みで水分補給が不足する場合など補液が必要となる。なおワクチンについては、現在有効なものはない。過去に1度罹患しても、原因ウイルスの違いにより、再度罹患することもあるので注意が必要である。インフルエンザと同様の対応で感染防止注意すべきポイントとしては、小児が罹患した場合、とくにエンテロウイルス71が脳炎、髄膜炎を引き起こすなど、重症化することもある。成人も同様に注意が必要だが、合併症の頻度は小児のほうが高いとされる。診療する医療側の対策としては、本症を疑う患者には、個室に入ってもらい、飛沫感染予防、接触感染予防を行う。また、インフルエンザ流行時のようにマスク、ガウン、手袋着用での診療が望ましい。トピックスとして、重症化した小児の脳症がとくに東南アジア、東アジアでは問題となっており、中国ではEV71ワクチンの開発が進められている(現在第III相試験)。流行を防ぐためにいずれの疾患も小児領域では、お馴染みの疾患であるが、どちらも成人にも感染し、重症化リスクを伴うものである。これからの流行拡大の注意喚起のために現在の状況を解説いただいた。両症ともにとくに家族内感染が多く、患者には、こまめな手指消毒や外出の注意などの指導で感染を防ぐ取り組みが必要とされる。関連リンク感染症週報(2015年第21週)

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手術中の疼痛緩和で患者満足度は向上するのか

 周術期の治療と患者満足度には、どのような関連があるのだろうか。米国・シダーズ・サイナイメディカルセンターのDermot P. Maherらの研究によれば、術中の鎮痛は、疼痛管理に関する患者満足度および病院全体に対する患者満足度のいずれとも関連していなかった。関連が示唆されたのは、人口統計学的要因、入院前の薬物療法および麻酔回復室での疼痛スコアであったという。Pain Medicine誌2015年4月号の掲載報告。 本研究は、都市部の教育機関かつ3次医療のレベル1外傷センター1施設で行われた。米国患者満足度調査(HCAHPS)による評価に関する基準を満たしている外科入院患者連続2,758例を対象に、4つのHCAHPS質問項目に対する回答と周術期要因19項目との関連を後ろ向きに解析した。 主な結果は以下のとおり。・「病院全体の評価はどれくらいですか」の回答が「9」または「10(最高)」は、入院期間(短い)、手術時間(長い)、術中オピオイド使用量(少ない)、術前ミダゾラム投与量(多い)、術後麻酔回復室(PACU)在室時間(短い)、PACUでの最終疼痛スコア(低い)と関連していた。・「この病院をあなたの家族に勧めますか」の回答が「必ず勧める」は、PACUでの最終疼痛スコア(低い)と関連していた。・「どのくらいの頻度で病院スタッフはあなたの疼痛をケアしましたか」の回答が「はい、いつも」は、入院期間(短い)、長期ベンゾジアゼピン使用者(割合が低い)、長期非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)使用者(割合が高い)、PACU在室時間(短い)と関連していた。・「あなたの痛みはどのくらいの頻度でよくコントロールされましたか」の回答が「はい、いつも」は、長期オピオイド使用者(割合が低い)、長期ベンゾジアゼピン使用者(割合が低い)、長期NSAIDs使用者(割合が高い)、手術時間(長い)、PACUでの最終疼痛スコア(低い)、PACUでの初回疼痛スコア(低い)と関連していた。・HCAHPSの回答との関連は、手術の種類(診療科別)によって異なっていた。

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アスピリンとNSAIDsの使用による大腸がんリスクと遺伝子型の関連(解説:上村 直実 氏)-354

 アスピリンや非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)の常用により、大腸がんリスクが低下することが知られているが、どのようなヒトに有効かは不明であった。今回、ゲノムワイド(GWAS)を用いた遺伝子型と環境要因の相互作用を考慮したCase-Control研究により、アスピリンやNSAIDs使用が大腸がんの発症を減少させる一因として、染色体12番と15番の2つの一塩基多型(SNP)の遺伝子型と関連が深く、個別化医療への推進が期待される研究結果が報告された。すなわち、染色体12番と15番のSNPで、薬剤の常用と大腸がんリスクとの関連が異なることが示され、遺伝子型によってはリスクが高まるヒトもいる可能性が示唆された。 本研究のデザインは、1976~2003年までの米国、カナダ、オーストラリア、ドイツの10研究のデータを基に、大腸がん患者8,634例とマッチしたコントロール群8,553例を対象としたCase Control研究である。研究の結果、薬剤常用者はコントロール群と比較して31%の大腸がんリスク低下を認めた(オッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.64~0.74)。遺伝子変異との関連を検討したところ、染色体12と15のSNPがリスクの低下に影響していることが示唆されたが、染色体15の中の一部はリスクを増大させる可能性が示唆された。アスピリンとNSAIDsの常用は概して大腸がんのリスクを下げるが、少数ながらリスクを増加するヒトも存在するという研究結果である。 1976年から開始された大規模データベース(DB)を用いたCase-Controlであるが、大規模研究につきものの大腸がん診断法や薬剤常用の定義があいまいな部分も見受けられる。さらに、過去の欧米におけるGWAS研究の結果が、日本人での追試では異なる結果を示したことも注意すべきである。しかし、このような大規模研究は今後の疫学的な方向性を示してくれるものが多く、わが国でも国を挙げての対策が必要と思われる。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第19回

第19回:アルツハイマー病の治療監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 認知症は世界的に増加しており、2010年の時点で3,560万人の患者数と推定され4秒に1人発症しています1)。 全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布の母集団を対象にした久山町研究での病理学的評価では認知症の内訳は増加傾向2)で、医療機関を受診しアルツハイマー病と診断される方も増加傾向3)です。アルツハイマー病は進行性疾患で個人のADLを著しく損ないます。また介護負担/経済的負担などから、その影響は罹患個人に留まらず急速に高齢化が進むわが国にとっては重要な社会的問題でもあります。認知症治療薬として1999年ドネペジルが日本/米国のFDA(食品医薬品局)で認可され、2011年に日本でメマンチンが認可され日本で認知症の治療に大きな影響を与えました。 しかし上記薬物治療はアルツハイマー病の進行を抑制できず症状改善もわずかです。10年の慢性経過に患者/家族/医療者が付き合っていくことが必要な疾患だと考えられます。薬剤治療以外の自然経過に関する教育、終末期ケア計画の相談などが大変重要です。また薬剤使用開始検討時は家族/介護者を交えて、そのわずかな効果や副作用の情報提供を行い、患者希望を聞いたうえで決断をすることが望ましいです。臨床的に改善がなければ薬剤中止を検討することも必要だと考えられます。 以下、American Family Physician 2011年6月15日号4)よりアルツハイマー病は最も多いタイプの認知症で、アメリカでは85歳以上の人の半数程度が罹患している。進行性の記憶障害と認知機能低下がその特徴である。病態生理は複雑で複数の要因が関与している。病理学的特徴として、アミロイド斑の蓄積、軸索の不溶性異常タウ蛋白出現、コリン作動性ニューロンのシナプスでのアセチルコリンの減少が認められる。アルツハイマー病に証明された予防法はない。ささやかな将来性があると考えられる予防法として高血圧治療、ω-3脂肪酸補充、運動、思考/分析を必要とする作業への参加が挙げられる。アセチルコリンエステラーゼ阻害薬が治療薬の第1選択である。軽症から中等症の患者さんに対してわずかな認知機能改善が証明され、多くのガイドラインで軽症から中等度の患者さんで処方が推奨されている。Cochrane reviewでは、軽~重症の患者に対してプラセボと比較して、ドネペジル/ガランタミン/リバスチグミンを6ヵ月~1年間使用し、軽度の認知機能/臨床尺度の改善(ADAS-cog:認知機能評価方法で-2.7点)が認められたが、臨床的に著明な認知機能の改善が認められたと判断するにはADAS-cogで7点の差が必要であり、その効果は疑問の余地がある。より長期使用における効果はさらなる研究が待たれる。各製品では効果に大きな差は認められていない。副作用は、多いものとして嘔気/嘔吐/下痢で、めまい/混乱/不整脈は比較的よくみられる。NMDA受容体拮抗薬は耐用性良好で、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬とあわせてよく処方されている。多くのガイドラインでも中等症から重症の患者さんで単独使用/アセチルコリンエステラーゼ阻害薬との併用が推奨されている。Cochrane reviewで中等度~重症患者に対して、6ヵ月以上のメマンチン20mg/日使用でわずかな認知機能改善(SIB:認知機能評価で3点)/わずかなADL改善(ADCS-ADLで1.3点)が認められた。また、軽度~中等度患者で認知機能はADAS-cogで1点改善で統計的に有意であった。臨床的に著明な認知機能の改善が認められたと判断するには、SIBで10点の差、ADCS-ADLでは5点の差が必要であり、こちらも効果は疑問が残る。メタアナリシスでは軽度患者に対しては無効であり、中等度患者には効果に一貫性がないと結論付けられた。軽度~中等度患者ですでにドネペジル、リバスチグミン、ガランタミンを使用中の人にメマンチン20mg/日で24週間追加投与した群とプラセボを投与した群では、統計学的に有意な改善を認めなかった。高齢の認知症患者さんで非定型抗精神病薬の使用は行動上の症状を改善するが、死亡率増加と関連性がある。セレギリン、テストステロン、イチョウの治療効果に関しては相反するエビデンスが混在する結果となっている。ビタミンE、エストロゲン、NSAIDSは治療の利益に関するエビデンスはない。ケア方針で大事なことは、認知症に関する複数のガイドラインで共通して強調されているように、臨床経過の患者教育と家族への教育、早期の地域支援団体への紹介(地域包括支援センターなど)である。また、自動車運転や終末期ケアなどの法的問題を取り扱うことも大事である。薬物治療開始の相談時は、患者と介護者を含めた話し合いとすべきで、薬物使用によるわずかな利益、副作用、費用を相談すべきである。Mini Mental State Examinationなどで認知機能をモニタリングし最大限の薬物治療を行っても顕著な改善が認められないときは、医師は患者さん/家族との薬物治療継続中止の相談を検討すべきである。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) Marc wartmann. Alzheimer’s Research & Therapy. 2012;4:40. 2) 本田 祐之, 岩城 徹. 病理学から見た認知症の原因疾患と疫学-久山町研究から-. 最新医学. 2013;68:754-760. 3) 厚生労働省. 精神疾患のデータ. 知ることから始めようみんなのメンタルヘルス総合サイト.(参照 2015.4.15) 4) Winslow BT, et.al. Am Fam Physician. 2011;83:1403-1412.

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アスピリン・NSAIDsと大腸がんリスクの関連メカニズム/JAMA

 遺伝子と環境の相互作用を考慮したゲノムワイド研究で、アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単独または両薬の常用と、大腸がんリスク低下との関連が遺伝子レベルで明らかにされた。米国・インディアナ大学のHongmei Nan氏らが報告した。検討により、染色体12と15の一塩基多型(SNP)で、常用とリスクとの関連は異なることが示され、遺伝子型によっては常用でリスクが高まる人がいることが明らかにされた。所見を受けて著者は「被験者を追加した検討で今回の所見が確認されれば、ターゲットを絞った大腸がんの予防戦略を促進するだろう」と述べている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。遺伝子×環境相互作用のゲノムワイド分析 研究グループは、先行研究でアスピリンとNSAIDsの使用と大腸がんリスク低下との関連が示されているが、その関連のメカニズムは不明であったことから、共通の遺伝マーカーを特定する検討を行った。大腸がんリスクに関して、アスピリンやNSAIDs(もしくはその両方)の常用とSNPとの遺伝子×環境相互作用を調べた。 検討は症例対照研究にて行われた。米国、カナダ、オーストラリア、ドイツで1976~2003年に開始され1976~2011年に大腸がん診断の確認が行われた、5件のケースコントロールと5件のコホート研究のデータを包含した。症例群は8,634例、適合対照群8,533例で、被験者はすべてヨーロッパ系であった。 ゲノムワイドSNPデータと、アスピリン・NSAIDsの常用に関する情報、その他リスク因子を調べ、大腸がんを主要評価項目として分析した。遺伝子型によってはリスクが高くなる人がいることが判明 アスピリン・NSAIDsの常用は非常用と比べて、大腸がんリスク低下との関連が確認された(有病率:症例群28%[2,455/8,634例] vs. 適合対照群38%[3,221/8,553例]、オッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.64~0.74、p=6.2×10-28)。 通常のロジスティック回帰分析の結果、MGST1遺伝子に近在する染色体12p12.3のSNP rs2965667が、アスピリン・NSAIDs常用との有意な相互作用を示した(交互作用のp=4.6×10-9)。また、そのうちSNP rs2965667-TT遺伝子型を有する人では、アスピリン・NSAIDs常用と大腸がんリスクの低下がみられたが(有病率28% vs. 38%、OR:0.66、95%CI:0.61~0.70、p=7.7×10-33)、まれに存在するTAまたはAA遺伝子型を有する人(4%)では、常用により大腸がんリスクが高まることがみられた(有病率:35% vs. 29%、OR:1.89、95%CI:1.27~2.81、p=0.002)。 症例のみ相互作用分析では、IL16遺伝子に近在する染色体15q25.2のSNP rs16973225が、アスピリン・NSAIDs常用との有意な相互作用を示した(交互作用のp=8.2×10-9)。また、rs16973225-AA遺伝子型を有する人では、アスピリン・NSAIDs常用と大腸がんリスクの低下がみられたが(有病率:28% vs. 38%、OR:0.66、95%CI:0.62~0.71、p=1.9×10-30)、一般的ではないが有する人がいるACまたはCC遺伝子型の人(9%)では、常用と大腸がんリスクとの関連はみられなかった(有病率36% vs. 39%、OR:0.97、95%CI:0.78~1.20、p=0.76)。

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「寛解」から「治療の最適化」へ リウマチ治療最前線

 2015年3月9日、都内にて、東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター 所長の山中 寿氏が、関節リウマチ(RA)治療の最新動向に関して講演を行った(主催:ファイザー株式会社)。リウマチ治療の変遷 山中氏はまず、東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センターで2000年から行っているRA患者に対する前向き観察研究(IORRA)の結果を基に、RA治療の進歩について解説した。 本調査は年2回実施しており、毎回約6,000例のRA患者の情報を集積している。 その調査からわかったことは、「NSAIDs・ステロイドの服用率は年々低下し、逆にMTX・生物学的製剤の服用率が上昇していること」である。結果的に、疾患活動性を表すDAS28が改善し、寛解率の向上につながっている傾向がみられた。 寛解率向上の理由としては、2000年代前半は「MTXの普及」、2000年代後半は「生物学的製剤の普及」と考えられている。 手術に関しては、全体的に減少傾向にある。ただし、関節形成術は上昇傾向にあり、QOLの向上に重きが置かれている傾向がみられる。リウマチ診療ガイドライン2014のポイント 生物学的製剤の登場や、ガイドライン改訂などのインフラ整備により治療方針が明確になり、RA治療は大きな進歩を遂げた。 昨年改訂された『関節リウマチ診療ガイドライン2014』では、「有識者の意見」や「エビデンス」に加え、「リスクとベネフィットのバランス」や「患者の価値観や好み」「経済評価」に関しても考慮されていることが特徴として挙げられる。 本ガイドラインでは、「臨床症状の改善だけでなく、長期予後の改善を目指す」ことを治療目標として挙げており、また、治療方針に関しても「炎症をできるだけ速やかに鎮静化させて寛解導入し、寛解を長期間維持する」ことが明示されている。寛解の先にあるもの これまでのRA治療は寛解を目指して行われてきたが、治療環境が整備された今、これからのRA治療は寛解から「治療の最適化」を模索すべき時期にきている。 「治療の最適化」の1つとして挙げられる生物学的製剤の減量・休薬に関して、エタネルセプトをはじめとして実際の臨床試験でもその可能性が示唆されている。・ステロイド、MTX、生物学的製剤の減量・休薬・合併病態のマネジメント・薬剤経済学的観点・生命予後の改善・患者の視点といったさまざまな視点から、最適な治療を患者ごとに検討していく必要がある。リウマチ治療の今後 最後に、山中氏は「Hit and away strategy」をスローガンとして、・生物学的製剤の早期投与、早期寛解導入・6ヵ月以上寛解維持できれば休薬を考慮・再燃例では、同じ生物学的製剤を再投与のような指針に従い、治療を行っていくことが望ましいと強調した。

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抗血栓療法中のNSAIDs、出血・心血管イベント増大/JAMA

 心筋梗塞(MI)後の抗血栓療法中の患者における非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)の併用投与は、短期間であっても出血や心血管イベントリスクを増大することが明らかにされた。デンマーク・コペンハーゲン大学ゲントフテ病院のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らが、同国患者データ6万1,971例を分析し報告した。著者は、「所見についてはさらなる検討を行い確認する必要があるが、MI後の患者へのNSAIDs処方には注意を払わなくてはならない」とまとめている。JAMA誌2015年2月24日号掲載の報告より。デンマーク、心筋梗塞後6万1,971例のNSAIDs治療併用有無別にアウトカムを分析 研究グループは、MI後で抗血栓療法中の患者についてNSAIDsを併用投与した場合の、出血・心血管イベントを調べた。 同国2002~2011年の入院レジストリデータを用いて、30歳以上で初発MIを経験し、退院後30日間生存していた患者について、MI後のアスピリン、クロピドグレルまたは抗血栓薬、およびそれらの組み合わせ治療と、NSAIDs治療の併用について調べた。 主要評価項目は、NSAIDs治療併用有無別にみた出血リスク(入院を要する)または心血管複合アウトカム(心血管系による死亡、非致死的MI、脳卒中)で、補正後時間依存的Cox回帰モデルを用いて評価した。 分析には6万1,971例が組み込まれた(平均年齢67.7[SD 13.6]歳、男性63%)。そのうち34%の患者が1種以上のNSAIDsを処方されていた。併用群、出血リスク2.02倍、心血管イベントリスク1.40倍 追跡期間中央値3.5年間で、死亡者は1万8,105例(29.2%)であった。出血イベントの発生は計5,288例(8.5%)、心血管イベントは計1万8,568例(30.0%)であった。 出血イベントの粗発生率は100人年当たり、NSAIDs治療併用群4.2例(95%信頼区間[CI]:3.8~4.6例)、非併用群2.2例(同:2.1~2.3例)であった。心血管イベントについてはそれぞれ11.2例(同:10.5~11.9例)、8.3例(同:8.2~8.4例)であった。 多変量補正後Cox回帰分析の結果、NSAIDs治療併用群は非併用群と比較して、出血リスクは2.02倍(ハザード比:2.02、95%CI:1.81~2.26)、心血管イベントリスクは1.40倍(同:1.40、1.30~1.49)増大することが認められた。 出血および心血管イベントリスクは、抗血栓療法やNSAIDsの種別を問わず、また併用期間を問わず、併用により増大することが認められた。

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薬剤性アナフィラキシー

概説 アナフィラキシーのtrigger(誘因)は蜂毒、食物、薬剤、運動など多彩であり、頻度が最も高いものは食物である。それに対し、アナフィラキシーによる死亡例に限ると、最も多い誘因は薬剤である。薬剤がアナフィラキシーを起こす場合には、投与直後から症状を生じ重症化しやすい(誘因に曝露されてから速やかにアナフィラキシーを発症するほど、重症化しやすいという一般的傾向がある)ということに加えて、過去に既往がなく不意打ちの形で生じるため、アドレナリン自己注射薬を携帯していないことがほとんどであるという特徴がある。 欧米の疫学調査においても、薬剤性アナフィラキシーによる死亡例は漸増傾向にあり、これは、世界的に薬剤が多様化し、薬剤総数が増加の一途をたどっていることが背景に挙げられている。薬剤によりアナフィラキシーを起こさないのは水と塩分くらいのものであり、われわれが処方する薬剤や日常の処置で曝露される物質(薬剤としては認識されない、皮膚消毒液、ラテックス、器具の消毒薬の残留にも配慮する)は無数に存在する。常識的なことであるが、必要性が曖昧な処置は行わない・薬剤は投与しないことが基本姿勢として重要である。 発症機序と分類 IgEが関与するI型反応が典型的であるが、X線造影剤やNSAIDsなどはIgEが通常関与することなくアナフィラキシーを起こす。従来は、前者(IgEが関与するもの)をアナフィラキシー、後者(IgEが関与しないもの)をアナフィラキシー様反応(anaphylactoid reaction)と呼んだが、世界的な趨勢で両者ともアナフィラキシーと呼ばれるようになってきており、日本アレルギー学会の「アナフィラキシーガイドライン1)」でもこの立場をとっている。今でもアナフィラキシーとアナフィラキシー様反応に区別する方法が用いられることはあるが、将来的にはアナフィラキシーの診断名の下でアレルギー性(IgEが関与するもの・IgE以外の免疫機構が関与するものに分けられる)、非アレルギー性に大別される方向に向かうと考えられる。 たとえば、ペニシリンとNSAIDを内服してアナフィラキシーを発症した場合、従来はアナフィラキシー(様)反応とまず診断し、後日の精査で原因がペニシリンであればアナフィラキシー、NSAIDであればアナフィラキシー様反応と診断名を書き換えていたが、「様反応」を用いないことにしておけば、救急診療で付けられたアナフィラキシーの診断名は、後日原因薬が特定されても書き換えられることなく、踏襲されていくことになる。 診療上の注意点アナフィラキシー発症時は、原因の可能性がある薬剤の中止(たとえば、点滴投与中の抗菌薬を中止し、薬剤を含まない輸液に変更する)とアドレナリン筋注を行い、循環と呼吸の状態を把握する。アナフィラキシーから回復後、あるいは既往を有する患者に対しては、再発を回避するよう、適切な指導を行う。「アナフィラキシーガイドライン」では誘因となる医薬品として、抗菌薬、解熱鎮痛薬(NSAIDs等)、抗腫瘍薬、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤、輸血等、生物学的製剤、アレルゲン免疫療法を挙げ、これらによるアナフィラキシーの特徴を簡潔に述べるとともに、手術中に生ずるアナフィラキシーの主な誘因(とくに筋弛緩薬、抗菌薬、ラテックス)にも触れているので、それらに関してはガイドラインを参照されたい。実地診療に当たっておられる先生方に留意していただきたいこととしては、以下のものが挙げられる。 内服薬を誘因とするアナフィラキシーについては、複数薬剤が誘因に挙げられ、病歴だけでは特定に至らないことが多い。また、食後に内服した場合、食事内容が誘因である可能性も念頭に置く必要がある。 医療処置に伴ってアナフィラキシーを発症した場合には、ラテックスが原因候補の1つに挙げられることが多い。ラテックスおよび交差反応性のあるシラカンバ、ハンノキ花粉の特異的IgEは、どの医師においても測定が可能であり参考になる(診断が確定するわけではないが)。 アナフィラキシーの発症前に投与された薬剤、摂取した食品と摂取時刻、症状の経過を、詳細に患者に記録しておいていただくことが重要。この情報は誘因の特定に大変に役立つ。 誘因の特定や安全に使用可能な薬剤の選定、あえて誘因となった薬剤を使わざるを得ない(脱感作が必要)といった場面では、ぜひアレルギー専門医に紹介いただきたい。アレルギー専門医にとって薬剤アレルギーへの対応は時間と労力を要するのだが、薬剤性アナフィラキシーは患者のQOLのためにも、生命予後のためにも重要な疾患であることは昔から一貫している。なお、薬剤を用いた即時型皮膚反応検査(プリックテストや皮内テスト)は、IgEが関与する反応において有用性が高いが、アナフィラキシーを起こした患者に不用意に行うとアナフィラキシーを誘発する可能性があるため、外来ですぐに施行できるわけではないことをご承知おきいただきたい。1)日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014.

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TA錠、抑うつと腰痛の両方に効果

 トラマドール塩酸塩/アセトアミノフェン配合錠(トラマドール・アセトアミノフェン、商品名:トラムセット)は現在、腰椎変性疾患を含む慢性疼痛の治療に汎用されている。岡山大学の鉄永 倫子氏らは、抑うつ傾向にある慢性腰痛患者に対する治療効果を非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)と比較検討した。その結果、トラマドール・アセトアミノフェンのほうが腰痛軽減に効果があり、予防的な抗うつ効果も示唆される結果が得られたことを報告した。Journal of Orthopaedic Science誌オンライン版2015年2月3日号の掲載報告。 研究グループは、抑うつ傾向にある慢性腰痛患者に対するトラマドール・アセトアミノフェンの有効性を前向きに検討する目的で、慢性腰痛患者95例のうち自己評価抑うつ尺度(self-rating depression scale:SDS)により抑うつ性ありと認められた70例(男性26例、女性44例、平均年齢64歳)を、トラマドール・アセトアミノフェン群(以下トラマドール群、35例)またはNSAIDs群(35例)に無作為に割り付けて8週間の治療を行ったた。 評価項目は、疼痛(数値的評価スケール:NRS)、オスウェストリー障害指数(ODI)、疼痛生活障害評価尺度(Pain Disability Assessment Scale:PDAS)、Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)、SDS、疼痛破局的思考尺度(Pain Catastrophizing Scale:PCS)であった。 主な結果は以下のとおり。・8週後のNRSおよびSDSは、NSAIDs群よりトラマドール群で有意に低かった(p<0.05)・ODI、PDASおよびPCSは、両群間で有意差はなかった(それぞれp=0.47、0.09、0.47)。・HADSの不安スコアは両群間で差はなかったが(p=0.36)、HADSの抑うつスコアはNSAIDs群よりトラマドール群で有意に低かった(p<0.05)。・治療関連有害事象の発現率は、両群で同程度であった。

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1分でわかる家庭医療のパール ~翻訳プロジェクトより 第17回

第17回:慢性腰痛に対してのオピオイド~短期間は有効だが、長期間投与の効果と安全性ははっきりしない監修:吉本 尚(よしもと ひさし)氏 筑波大学附属病院 総合診療科 慢性腰痛は、外来で多い訴えの1つです。慢性腰痛を持つ患者さんが疼痛コントロールに苦しんで受診されることが多く、総合診療外来医師、整形外科医師が治療に難渋していることも多いです。 2011年4月にトラムセット(トラマドール+アセトアミノフェン合剤)が承認されてから、NSAIDsで対応困難なケースなどに対して、わが国でもオピオイドの使用が以前よりも身近なものになってきています。また、他のオピオイド内服もしくは、パッチ剤(フェンタニル剤)を貼付されているケースも散見します。 オピオイドは疼痛コントロールに有効といわれますが、便秘や嘔気といった副作用などに悩み、長期に投与してよいものかと考えることがたびたびあります。長期使用の安全性は明らかになっておらず1), 2)、個人的には慎重に使用したいと考えます。日本では、慢性腰痛に対して、日本ペインクリニック学会が作成した神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン3)もあり、参考になると思います。 以下、American Family Physician 2014年8月15日号1)、The Cochrane database of systematic reviewsオンライン版 2013年8月27日版2)よりオピオイドは、慢性腰痛の治療に有効か?randomized controlled trialsのMeta-analysis 慢性腰痛には、オピオイドが短期間の疼痛の緩和と機能改善に多少有効であると一般的に考えられている。しかしながら、長期間のオピオイド使用でのデータは、ほとんど存在していない。長期間のオピオイド使用については、議論の分かれるところである。医師は、患者に疼痛の緩和を求められるが、長期間のオピオイドを使う際には投薬調節と安全性への配慮も求められる。トラマドールとプラセボを比較した5つの研究には、方法論的なバイアスがあったが、概して患者はプラセボより多くの痛みが減り、機能的なアウトカムもより改善することを示した。痛みの改善はSMD(標準化平均差)、-0.55( 95% CI -0.66~-0.44、low quality evidence)、機能の改善は SMD、-0.18( 95% CI -0.29~-0.07、moderate quality evidence)であった。2つの研究では、経皮ブプレノルフィンとプラセボを比較した。ブプレノルフィンの2つの研究では、エビデンスレベルは低く、プラセボより痛みが減るが、機能は改善しないことが判明した。痛みの改善はSMD、-2.47( 95% CI -2.69~-2.25、very low quality evidence)、機能の改善はSMD、-0.14( 95% CI -0.53~0.25、very low quality evidence) であった。5つの強オピオイドの研究では、痛みが減り、機能改善することが判明した。痛みの改善はSMD、-0.43( 95% CI -0.52~-0.33、moderate quality evidence)機能の改善はSMD、-0.26(95% CI -0.37~-0.15、moderate quality evidence)であった。いずれのトライアルも研究の質は低~中等度で、中断率が高く、観察期間が短く、機能改善の定義が限定されている。オピオイドの長期使用に関するトライアルは、さまざまなリスクを総合的に評価するなど慎重に行うべきである。慢性腰痛に対するオピオイドの長期間の効果と安全性を示しうるRCTはない。※本内容は、プライマリケアに関わる筆者の個人的な見解が含まれており、詳細に関しては原著を参照されることを推奨いたします。 1) HENRY C. BARRY. Am Fam Physician. 2014; 90: 259B-C. 2) Chaparro LE, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2013; 8: CD004959. 3) 日本ペインクリニック学会神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン作成ワーキンググループ 編. 神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン. 真興交易医書出版部. 2011. 

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アナフィラキシーにおける皮膚症状と診断

はじめに アナフィラキシーは、狭義にはIgEを介する、複数の臓器における即時型アレルギー反応で、広義には、造影剤や非ステロイド系抗炎症剤(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs; NSAIDs)などによる、さらには明らかな誘因なく症状が出現する特発性のものを含む1-3)。皮膚症状に関する限り、誘因による表現型の違いは知られていない。 その症状は、マスト細胞が多く分布する皮膚、粘膜、気道、消化管に多く現れ、末梢血の血漿成分の漏出による循環動態の悪化と神経症状を伴うことが多い。なかでも皮膚症状はアナフィラキシーの80~90%で出現2,4)し(表1)、呼吸困難感、血圧低下など、他の生命に関わる症状に伴って出現した場合の診断的価値は高い。 表1を拡大する アナフィラキシーにおける皮膚症状アナフィラキシーによる皮膚症状は、臨床的にI型アレルギーにより生じる皮膚症状と同様である。すなわち、皮膚、粘膜に分布するマスト細胞の急速な脱顆粒により、ヒスタミンをはじめとするメディエーターが組織内に放出され、血管に作用して微小血管の拡張(紅斑)、血漿成分の漏出(膨疹)、知覚神経の刺激による瘙痒を生じる。この反応は、蕁麻疹と大きく重複するが、蕁麻疹のスペクトラムは広く、アナフィラキシーですべての蕁麻疹の臨床像が起こるわけではない。一方、もともと慢性に反復する患者がアナフィラキシーを生じた場合は、両者の皮疹を区別することは困難であり、臨床像により両者を区別することはできない。しかし、傾向として両者の違いはあり、その特性を認識しておくことは有用である。1)皮疹の範囲皮膚症状をアナフィラキシーの診断の根拠とするには、体表の広い範囲に皮疹が出現していることが大切である。果物や野菜を摂取して起こる口腔アレルギー症候群では、軽症例では口腔ならびに顔面皮膚、粘膜の発赤、腫脹などにとどまり、接触蕁麻疹でも軽度であれば皮疹は接触部位に限局した発赤ないし膨疹となる。WAO(World Allergy Organization) 3)および日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドライン2)では、アナフィラキシーの3項目を挙げ、そのうちのいずれかに該当する場合をアナフィラキシーと診断する。皮膚症状は、その3項目のうちの2項目に含まれ、具体的には「全身の発疹、瘙痒または紅潮」と定義されている。なお、アナフィラキシーでも皮疹がない、あるいは限局性の蕁麻疹が出現する可能性はあるが、日本アレルギー学会のガイドライン2)では、部分的な紅斑、蕁麻疹、膨疹はグレード1(軽症)に位置付けられている。2)膨疹と紅斑蕁麻疹では、初期は膨疹の周囲に広範囲の紅斑を伴うことが多く、浮腫の強い膨疹は白色になることもある。しかし、症状を繰り返すうちに紅斑の範囲は狭まり、慢性蕁麻疹の紅斑は膨疹の範囲に限局することが多い(図1)。私見ではあるが、アナフィラキシーにおける皮膚症状は紅斑が主体で、膨疹はないか、あっても散在する程度のことが多い(図2)。バンコマイシンを急速に点滴または静注することで生じるバンコマイシン症候群(またはレッドマン症候群)は、血中バンコマイシン濃度が上昇するために好塩基球からヒスタミンが遊離され、顔面、頸部に紅斑を生じる現象であるが、この場合も顔面、頸部のびまん性紅斑が主体で膨疹はその主役ではない。 図1を拡大する 図2を拡大する 図2(続き)を拡大する 一方、特発性の蕁麻疹でも体表の広い範囲に膨疹が出現することはあるが、その場合は比較的境界が明瞭で、多くの無疹部を確認できることが多い(図3)。浮腫が眼瞼、口唇に生じると、病変が深部に及び、血管性浮腫となることもある。 図3を拡大する 3)除外すべき皮膚症状アナフィラキシーに伴う皮膚症状の特徴は、個々の皮疹の形よりもむしろその経過にある。また、病態の中心は血管の拡張と浮腫にあって器質的変化を伴わないため、圧迫により消退しないことも診断の根拠にできる(図4)。なお、表在性の膨疹、紅斑を伴わない血管性浮腫は、遺伝性血管性浮腫またはアンジオテンシン変換酵素阻害薬内服中に生じる発作の可能性を考える必要がある。その場合は抗ヒスタミン薬、アドレナリンは無効で、前者には速やかなC1インヒビター(C1-INH)製剤の静注が必要である5)。 図4を拡大する おわりにアナフィラキシー様症状には、パニック発作、迷走神経発作など、アナフィラキシーとは取るべき対応がまったく異なる疾患を鑑別する必要がある。そのために、皮膚症状は重要な診断の助けになり、正確な観察を心がけたい。 1) The Centre for Clinical Practice at NICE. Anaphylaxis. NICE clinical guideline 134. NICE.(Accessed on February 9, 2015.) 2) 日本アレルギー学会監修.Anaphylaxis対策特別委員会編.アナフィラキシーガイドライン.日本アレルギー学会;2014. 3) アナフィラキシーの評価および管理に関する世界アレルギー機構ガイドライン. Estelle F, et al. 海老澤元宏ほか翻訳. アレルギー.2013; 62: 1464-1500. 4) Joint Task Force on Practice Parameters; American Academy of Allergy, Asthma and Immunology; American College of Allergy, Asthma and Immunology; Joint Council of Allergy, Asthma and Immunology. J Allergy Clin Immunol 115: S483-S523, 2005. 5) 秀 道広ほか.日皮会誌.2011; 121: 1339-1388.

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