次世代エネルギー、風力発電業界で頻度が増している職業性接触皮膚炎

提供元:ケアネット

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公開日:2012/12/14

 

 スペインのG. Larraga-Pinones氏らは、同国の風力エネルギー産業界(タービン製造現場)で働く労働者の主な皮膚疾患について調査を行った。2010年現在、スペインは中国、アメリカ、ドイツに次ぐ世界第4位の風力エネルギーを生産しており、同国内には風力発電所889ヵ所、1万8,933台のタービンがあり、総電力の16%を賄っている。タービン発電機は主に、デンマーク、ポルトガル、スペイン、ドイツで製造されているが、これまで同分野の職業性皮膚疾患については、ほとんど注目されていなかった。Actas Dermo-Sifiliograficas誌2012年12月号(オンライン版2012年11月15日号)の掲載報告。

 風力発電機の材質には、カーボンファイバー(最近はファイバーグラスへと変化してきている)や合成繊維(アラミド)、エポキシ樹脂と硬化剤が使われており、タービン製造現場の労働者には、これらの曝露を防御するため特殊な防護服、手袋、ゴーグルの着用が義務づけられている。

 研究グループは、風力エネルギー産業界の労働者にみられる主な皮膚疾患とそれに関連するアレルゲンの特徴を描出することを目的とし、2009~2011年に国立産業医学校のクリニックを紹介受診した接触皮膚炎が疑われた同業界の患者について、記述的観察研究を行った。

 病歴と職歴を聞き取り、医師の診察を受け、職場で利用されている材料によるパッチテストを行った。

 主な結果は以下のとおり。

・観察対象は10例(男性8例、女性2例)、平均年齢は33.7歳であった。
・主な所見は皮膚炎であった。顔、眼瞼、前腕、手に発症がみられた。
・エポキシ樹脂の感作が、4例の労働者で認められた。そのうち1例ではエポキシ樹脂硬化剤にも感作が認められた。
・1例では、ビスフェノールF型エポキシ樹脂への感作が認められた。同例では標準型のエポキシ樹脂に対しては陰性であった。
・残りの5例の症例の最終的な診断は、ファイバーグラスによる刺激性の接触皮膚炎であった。
・風力エネルギー産業界では職業性接触皮膚炎がみられる頻度が増している。主要なアレルゲンはエポキシ樹脂であり、ファイバーグラスは刺激をもたらしやすいようであった。

(ケアネット)