側頭葉てんかんでの海馬内メカニズムの一端が明らかに

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/12/14

 

 てんかん重積状態(SE)およびその後のてんかん発作を誘発するため、ラットの全身または脳内(海馬や扁桃体など)へのカイニン酸投与が広く行われている。しかし脳内投与では、特発性再発性てんかん発作が認められるラットの割合は低く、再発頻度も比較的低い。ドイツ・ハノーバー獣医科大学のMarta Rattka氏らは、ラットモデルにおける再発側頭葉てんかん発作時の、海馬内のカイニン酸の作用機序について明らかにした。Epilepsy Research誌2012年11月26日号の掲載報告。

 特発性再発性てんかん発作の発現や頻度が低いという問題について、最近、カイニン酸を覚醒ラットの背側海馬に投与することで解決できるのはないかということが示唆されており、先行研究が報告されていた。Rattka氏らは、さらにこのモデルの特徴を詳述するため、覚醒ラットの片側の後側海馬のCA3にカイニン酸(0.4μg)を投与した。

 主な内容は以下のとおり。

・すべてのラットで、死亡例なく、辺縁系SE(範囲:4~20時間)が発生した。
・SE後1~8ヵ月の1~2.5週の期間において、再発てんかんビデオ脳波モニタ(24時間/日、7日/週)を行った結果、91%のラットでてんかんが発症し、発作の頻度も有意に増大した。
・てんかん発作は、興奮性を増し水迷路試験における学習記憶害を増大することが認められた。海馬の病理学的影響(同側海馬のCA3、歯状回門の広範囲のニューロン欠損や顆粒細胞の拡散によって特徴づけられる)によるものと思われた。
・本試験のラットを用いたフェノバルビタールの試験では、すべてのラットが、特発性再発性てんかん発作の抑制に対する治療に反応を示した。
・以上の結果より、覚醒ラットの脳内へのカイニン酸投与は、ヒト側頭葉てんかんの優れたモデルを提供するものであり、とくに抗てんかん薬や抗てんかん発作治療のターゲットとしての外傷性てんかんや共存症のメカニズムを検討するモデルとして優れている可能性があることが示された。

関連医療ニュース
てんかん患者のうつ病有病率は高い
てんかん発作時の脳炎がPET画像診断活用で明らかに
てんかんを持つ人のうつ病発症を理解することが急務

(ケアネット)