人工膝関節全置換術において、膝蓋骨を置換するべきか否かはいまだ議論の的であるが、メタアナリシスの結果、膝蓋骨置換術を受けた患者と受けなかった患者とでは膝前方痛の発生率および患者満足率は同等であったものの、膝蓋骨置換術を受けた患者では追加の外科的治療が有意に少ないことが明らかになった。米国・University Hospital of North StaffordshireのPilling RW氏らが検証したもので、膝蓋骨特異的スコアを用い最新の人工関節について長期予後を評価するさらなるランダム化比較試験が必要であるとまとめている。The Journal of Bone & Joint Surgery誌2012年12月19日号の掲載報告。
研究グループは、初回人工膝全置換術における膝蓋骨置換が患者の予後を改善するという仮説を検証するため、ランダム化比較試験のメタアナリシスを行った。
初回人工膝全置換術における膝蓋骨置換と非膝蓋骨置換を比較したランダム化試験を対象に、主要評価項目の膝スコア、膝前方痛および患者満足度について解析した。合併症発生率、膝蓋大腿関節に関連した再置換術、感染率、手術時間およびX線像についても調査した。
主な結果は以下のとおり。
・16のランダム化比較試験における計3,465膝(このうち膝蓋骨置換術例1,710膝)が解析対象となった。
・Knee Society Scoreの膝スコアは、膝蓋骨置換術群で有意に高かった(p=0.005)。
・膝前方痛は、膝蓋骨置換術群で13%、非置換術群で24%報告された。この差は統計学的に有意ではなかった(p=0.1)
・患者満足率は、膝蓋骨置換術群90%(485/539膝)、非置換群89%(488/548膝)であった。
・膝蓋大腿関節合併症は、膝蓋骨置換術群93膝、非置換術群205膝で認められ、ランダム効果モデルにて有意差を認めた(p=0.02)。
・膝前方痛が理由による再手術率および膝蓋大腿関節合併症による再手術率は、非置換術群で有意に高率であった(それぞれp<0.00001およびp=0.002)。
・感染率、手術時間およびX線像に違いはみられなかった。
(ケアネット)