脂肪肝と大腸がんはどちらもメタボリックシンドロームと関連する疾患である。肝臓は大腸がんの遠隔転移が最も多い部位だが、大腸がんの肝転移に脂肪肝が影響するかどうかは明確にされていない。
今回、東京大学腫瘍外科の室野浩司氏らは、大腸がんの肝転移と脂肪肝の有無との関連について検討した結果、脂肪肝患者のほうが肝転移が少なく、脂肪肝が肝転移の形成に不利な微小環境である可能性を報告した。また、肥満ではない脂肪肝患者では肝転移が少なく、肥満患者では有意差がなかったことから、肥満による脂肪肝とは異なり、がん細胞に対する防御反応として脂肪肝になるのかもしれないと考察している。International Journal of Colorectal Disease誌オンライン版2013年2月8日号に掲載。
本研究では、術前に非造影CT検査を実施し根治的切除術を受けた604例の大腸がん患者が登録された。単純CTスライス像から得られた肝臓と脾臓の平均減弱値(ハンスフィールド単位)により、肝/脾減弱比が1.1より低い患者を脂肪肝と定義した。著者らは、これらの患者の臨床病理学的特徴を分析し、大腸がんの臨床的特徴と脂肪肝との関連を検討した。
主な結果は以下のとおり。
・604例中63例(10.4%)が脂肪肝と診断された。
・無再発生存率(RFS)および肝RFSは、脂肪肝患者群で有意に高かった(p=0.04およびp=0.006)が、肝以外でのRFSには有意差を認めなかった。この効果は肥満患者群(BMI>25.0)では認められなかった。
・脂肪肝ではないことが肝RFSにおける独立した危険因子であった(p=0.003)。
(ケアネット 金沢 浩子)