疼痛への感受性の違いが疼痛性障害の発症リスクと関わりがあるかもしれないことから、ドイツ・ウルム大学病院のWolfgang Freund氏らは、興味深い研究対象として「疼痛に高い耐性を示す人」について研究を行った。対象としたのは長距離ランナーで、その疼痛耐性および性格特性を調べた結果、健常対照者および慢性疼痛患者と異なっていることが明らかになったという。Pain Practice誌オンライン版2月1日の掲載報告。
本研究では、毎日休むことなく64日間、計4,487kmを走ることができるウルトラマラソン選手について、疼痛耐性と性格特性を対照者と比較した。
対象は、トランスヨーロッパフットレース2009の参加者(TEFR09群)11名、ならびに過去5年以内のマラソン経験がなくTEFR09群と年齢・性別・人種をマッチさせた健常対照者11名であった。
寒冷昇圧(CP)試験、特性的自己効力感(GSE)試験および240項目版性格検査(TCI)を行った。
主な結果は以下のとおり。
・CP試験において、TEFR09群は健常対照群より寒冷疼痛耐性が有意に高かった(p=0.0002)。
・GSE試験の結果は、両群で差は認められなかった。
・TCIでは、TEFR09群は協調性と報酬依存が低かったが自己超越性が高かった。
・CP試験における180秒での疼痛スコアが高ければ高いほど、TCIの報酬依存、依存、協調性、共感および純粋な良心のスコアが高く、両者には有意な正の相関関係がみられた。
・以上の結果を踏まえて著者は、「TEFR参加の長距離ランナーの疼痛耐性プロファイルは、健常対照群とは異なっていた。また以前の試験に参加した慢性疼痛患者とも異なっていると思われた」と結論し、「疼痛知覚が低いことが、長距離ランナーになるために求められる素質である可能性がある。しかし、低疼痛知覚が継続的なトレーニングに起因するものか、あるいはその結果なのかは不明である」とまとめている。
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