慢性のかゆみについて、かゆみの質や部位、起因のみならず、基礎疾患やひっかき行動に関しても男女があることが、ドイツ・ミュンスター大学のS. Stander氏らによる検討の結果、明らかにされた。医療において性差は重大な因子として認識が高まってきているが、慢性のかゆみについてはこれまでごくわずかな認識にとどまっていたという。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年2月6日号の掲載報告。
研究グループは、慢性のかゆみ(>6週)を有する患者を対象に、QOL、慢性のかゆみの基礎疾患、共存症など複数の指標について、性差が認められるかを解析した。
各変数の性差についての特異性については、McNemar検定やカイ二乗検定、t検定などを用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・解析対象者は1,037例で、54.8%が女性であった。
・男性のほうが、女性よりも有意に高齢であった(p<0.001)。また心血管系(p<0.001)、泌尿生殖器系(p<0.0001)の共存症を有している人が有意に多く、複数の服薬を受けている人が多く(p=0.041)、慢性のかゆみに結びつく皮膚疾患および全身性の疾患をより多く有していた。
・女性は、慢性のかゆみの基礎疾患として、神経障害性疾患および心身症をより多く有していた。また、慢性のかゆみの悪化が、感情(p=0.002)や心身の因子(p=0.046)による頻度が有意に高かった。
・女性は、ヒリヒリ感、温感、痛みを伴う質の局所のかゆみを報告する頻度が高かった。さらに、男性よりも視覚アナログスケールスコアが高く(p=0.031)、QOLへの影響が高いと報告した(p=0.033)。
・男性はしばしば炎症を起こしていない皮膚に慢性のかゆみが生じているが(p=0.031)、それとは対照的に、女性では慢性のひっかき傷と結節性痒疹が有意にみられた(p=0.004)。
・上記の結果を踏まえて著者は、「慢性のかゆみの質や部位、起因のみならず、基礎疾患やひっかき行動にも性差があることが明らかとなった。これらの事実は、慢性のかゆみの患者の治療において、またかゆみのあらゆる臨床研究において考慮しなければならない」と述べ、「さらなる研究により、性特異的な診断法や治療法を極める必要がある」と結論している。
(ケアネット)