皮膚への摩擦の特性を知ることは、皮膚傷害の発端や予防において重要であることから、オランダ・トゥウェンテ大学のN. K. Veijgen氏らは、ヒトの皮膚への摩擦行動および皮膚の保湿を予測する定量的モデルの開発を試みた。統計的手法を用いて、摩擦行動者の特徴、摩擦面の状態、摩擦物質の性質、摩擦行動時の環境を描出した。Skin Research and Technology誌オンライン版2013年2月26日号の掲載報告。
皮膚の摩擦行動に関わる問題は多彩であるが、先行研究では単一変数の分析手法を用いた検討が行われていた。そこでVeijgen氏らは、静・動摩擦係数からなる多変量モデルを示し、皮膚の保湿についても同様に多変量モデルを示すことを目的とした。
合計634の皮膚摩擦尺度を、最近開発された摩擦計を用いて測定し、統計分析を行った。事前に定義した影響を及ぼす可能性がある変数を、静・動摩擦係数、皮膚の保湿と結び付け、摩擦行動および皮膚の保湿それぞれについて3つの定量的予測モデルを描出した。
主な結果は以下のとおり。
・動摩擦係数が高値(皮膚に接する物質が強い力で動いている)であったのは、「高齢者」「人差し指」「表面エネルギーがより大きい物質」「室温が高い」であった。
・一方、動摩擦係数が低かった(皮膚に接する物質が弱い力で動いている)のは、「皮膚表面の温度が低い」「こめかみ」「接触面の材質がより粗い物質」であった。
・静的摩擦係数が高値であった(皮膚に接していた物質が動く際に強い力がかかる)のは、「皮膚保湿がより高い」「より年齢が高い」「人差し指」「表面エネルギーがより大きい物質」「外界温度がより高い」であった。
・皮膚の保湿と関連していたのは、「皮膚温」「解剖学的位置」「皮膚における毛髪の存在」「相対湿度」であった。
・以上のように、予測モデルは多変量アプローチによる静・動摩擦係数によって描出できた。静・動摩擦係数は強い相関を示し、そのためそれぞれの多変量モデルは類似していた。静摩擦係数は動摩擦係数よりも平均18%低値であった。
・本研究での多変量モデルは限定的なものである可能性があり、結果を普遍化するには注意が必要である。
(ケアネット)