統合失調症の治療ターゲット、新たな遺伝要因を特定 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2013/04/16 統合失調症に関連する新たな遺伝要因を明らかにするため、Andrew E. Timms氏らは、頻度の少ない疾患関連遺伝子変異の同定を試みた。その結果、N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体と関連するフレームシフト変異ならびにミスセンス置換が存在することを報告した。統合失調症は顕著な遺伝率を示す複雑な遺伝性疾患である。遺伝学的研究により、関連する種々の遺伝子および伝達経路が示されているが、遺伝的罹病性の多くの部分は依然として不明である。著者は、今回の統合失調症発症リスクと関連する遺伝子の存在の発見は、新たな有用な治療ターゲットとなるものだと報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2013年4月3日号の掲載報告。 統合失調症の遺伝形式の検討は、背景にある分子経路に関するよりよい理解につながり、疾患の予防と治療における標的アプローチを可能にすると考えられる。 本研究は、統合失調症家系を強く示唆する新たな遺伝因子の同定を目的とした。 academic medical centersから統合失調症の発端者とその家族を登録し、単一遺伝子による遺伝と思われる統合失調症の多発家系5家系において病因性突然変異の同定を試みた。主要アウトカムは頻度の少ない疾患関連遺伝子変異とし、ゲノムワイドアレイCGH法によるコピー数多型の同定、エクソンシーケンスによる変異の同定、そして連鎖解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。 ・コピー数多型は検出されなかった。 ・5家系すべてにおいて、タンパク質コード領域に頻度の少ないシーケンス変化が認められ、3遺伝子のうち1つはNMDA受容体と関連していた。 ・1家系において、代謝型グルタミン酸受容体サブタイプ5(mGluR5)をコードし、NMDA受容体に結合してそのシグナル活性を増強するGRM5のミスセンス置換およびフレームシフト置換が認められた。なお、フレームシフト置換は、足場蛋白タマリンとの結合を妨げ、mGluR5内在化を促進することが知られている。 ・その他の家系では、カルモジュリン結合蛋白ホスファターゼをコードし、mGluR5レベルに影響を及ぼすPPEF2のミスセンス置換が認められた。 ・3家系において、NMDA受容体にも結合する低密度リポタンパク質(LDL)受容体関連タンパク質をコードするLRP1B内に異なるミスセンス置換が認められた。なお、LRP1Bは統合失調症と強い関連が示されている染色体2q22領域に位置する。 関連医療ニュース ・統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定 ・日本人女性の統合失調症発症に関連する遺伝子が明らかに ・統合失調症の診断・治療に期待!新たなバイオマーカー (ケアネット) 原著論文はこちら Timms AE, et al. JAMA Psychiatry. 2013 Apr 3:1-9. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 既治療の非MSI-H/dMMR大腸がん、zanzalintinib+アテゾリズマブがOS改善(STELLAR-303)/Lancet(2025/11/05) 高齢者への高用量インフルワクチン、入院予防効果は?/Lancet(2025/11/05) 動脈内血栓溶解療法は血栓回収療法後の補助的治療として有効か?(解説:内山真一郎氏)(2025/11/05) 寛解後の抗精神病薬の減量/中止はいつ頃から行うべきか?(2025/11/05) がん治療の中断・中止を防ぐ血圧管理方法とは/日本腫瘍循環器学会(2025/11/05) ソーシャルメディアは子どもの認知能力を低下させる?(2025/11/05) 脳に異なる影響を及ぼす5つの睡眠パターンを特定(2025/11/05) オピオイド鎮痛薬のトラマドール、有効性と安全性に疑問(2025/11/05) ホルモン療法とニラパリブの併用が進行前立腺がんに有効(2025/11/05)