4月19日(金)~4月21日(日)、東京国際フォーラム(東京・千代田区)にて「第53回 日本呼吸器学会学術講演会」が行われた。
学会2日目、2009年以来4年ぶりの改訂となる「COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン 第4版」のポイントについて、作成委員長である永井厚志氏(東京女子医科大学 統括病院長)より発表された。
主な改訂のポイントは以下のとおり。
●COPDの疾患定義
ガイドライン第3版のCOPDの定義は「体動時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とする」(一部抜粋)であったが、第4版では「労作時の呼吸困難や慢性の咳、痰を特徴とするが、これらの症状に乏しいこともある」(一部抜粋)と改訂されている。COPDは自覚症状が乏しいケースもあるため、見過ごされる事も少なくない。永井氏はこれを避けるために、あえて「症状に乏しいこともある」という記載を追記したとしている。
●COPDの病態概念
COPDの併存疾患、合併疾患の内容がアップデートされた。なかでも、「喘息とCOPDのオーバーラップ症候群」と「気腫合併肺線維症(CPFE)」については充実した内容が盛り込まれている。また近年、話題となっているオーバーラップ症候群については、喘息を合併していないCOPDと比較して、予後が不良となることも記載された。
●薬物治療
長時間作用性β2刺激薬(LABA)、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)、吸入用ステロイド薬/長時間作用性β2刺激薬(ICS/LABA)配合薬などの薬剤が新たに上市されため、エビデンスとともにその情報がまとめられた。
●COPDの増悪
COPDの増悪に対する管理は、QOLや予後の観点から重要である。わが国でも、その認識を高める必要があるため、増悪管理について記載内容の見直しが行われた。
●運動耐容能から身体活動性への概念転換
COPD患者の運動耐容能はこれまで6分間歩行試験などが指標とされてきたが、患者自身の活動性に、より重きを置いた身体活動性へ概念が転換された。
●災害時などへの対応
東日本大震災後に作成する初めてのガイドラインとなるため、災害時の対応に関する記述が盛り込まれた。
●その他
「気流閉塞」と「気流制限」の用語の整理や、参考文献についてMindsに準じたエビデンスレベルの付記が行われた。
今回の第4版は、初めて日本呼吸器学会会員からのパブリックコメントを参考に作成された改訂版である。したがって、永井氏は今回のガイドラインについて「学会全体の協力により作成したガイドラインである」と述べた。
(ケアネット 鎌滝真次)