慢性リンパ性白血病に対して国内初の分子標的薬

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2013/07/11

 

 白血病の1つである慢性リンパ性白血病(CLL)は、わが国の患者数が約2,000人と推計されている希少疾病である。治療はフルダラビンやシクロホスファミドを用いた化学療法が第一選択であるが、これらに効果がない場合や再発した場合の新たな治療選択肢として、分子標的薬であるアーゼラ(一般名:オファツムマブ)が今年5月24日に発売された(適応は「再発または難治性のCD20陽性のCLL」)。
 
 7月9日に東京都内で開催された記者発表会では、CLL治療の現状と課題についてがん研有明病院血液腫瘍科 部長 畠 清彦氏が、また、アーゼラの試験成績について東海大学医学部内科学系血液・腫瘍内科 准教授・診療科長 小川 吉明氏が講演した(主催:グラクソ・スミスクライン株式会社)。

■白血病は分子標的治療薬で治療成績が飛躍的に向上しつつある
 畠氏はまず、白血病は死に至るイメージが強いが、近年、移植療法の進歩や分子標的治療薬の登場により、治療成績が飛躍的に向上しつつあることを紹介した。白血病は、骨髄性とリンパ性、慢性と急性により4つのタイプに分けられる。患者数の割合は、急性骨髄性白血病(AML)が約6割と最も多く、慢性骨髄性白血病(CML)と急性リンパ性白血病(ALL)が約2割ずつ、CLLは約3%と少ない。また、日本人におけるCLL罹患率は10万人に約0.5人と、欧米の約4.4人に比べてきわめて少ないことから、わが国では他のタイプの白血病に比べて、新たな治療法の研究・開発が遅れていた。実際、AML、CML、ALLではすでに分子標的治療薬が使用されているが、CLLではアーゼラが日本で初の分子標的治療薬となる。

■CLLの治療と課題
 CLLの初期は自覚症状がなく、健康診断でみつかる場合が多い。症状の進行に伴ってリンパ節腫脹、易疲労感、盗汗、発熱、体重減少、易感染性、貧血、血小板減少などが認められる。症状のない低リスク(Rai病期分類0やBinet病期分類A)の場合は経過観察を行い、貧血/血小板減少の進行・増悪、脾腫、リンパ節腫脹、リンパ球増加、自己免疫性貧血・血小板減少症、全身症状が発現した場合に治療を開始する。

 日本における薬物治療の第一選択は、フルダラビン単剤療法、フルダラビンを中心とした多剤併用療法、シクロホスファミドと他の薬剤の併用療法であるが、今回、再発または難治性のCD20陽性のCLLに対してアーゼラが承認された。

 日本におけるCLL治療の課題として、畠氏は、CLLは薬物療法では治癒が難しく再発することの多い難治性の血液腫瘍であること、CLLに適応を有する薬剤が少なく治療選択肢が限られていること、再発または難治性のCLLに対する標準的な治療法が確立していないことを挙げ、「標準治療の確立のため、ガイドラインの作成が急がれる」と結んだ。

■再発・難治性のCLLの新たな治療選択肢として期待
 続いて、アーゼラの作用機序と臨床成績について小川氏が紹介した。

 アーゼラは、CLLの腫瘍性B細胞の表面に発現しているCD20抗原を標的とした、完全ヒト型のモノクローナル抗体である。CD20は大ループと小ループの2つのループから成るが、アーゼラは両ループに結合することにより補体依存性細胞傷害作用を示す(in vitro)。

 日韓共同で実施された第I/II相試験では、過去に1レジメン以上のCLL治療を受けた経験のある、再発または難治性のCLL患者10例(日本人9例、韓国人1例)に対して、アーゼラを単剤で投与(点滴静注、全12回)したところ、10例中7例に奏効を認めた(部分寛解7例、安定3例)。また、10例中8例は病勢進行が認められなかった。主な副作用は、血球減少症、インフュージョンリアクションであった。インフュージョンリアクションについては、多くは1回目と2回目の投与時に認められたが、5~7回目にも発現していることに注意が必要、と小川氏は指摘した。

 最後に小川氏は、「再発・難治性のCLL患者さんに対して、アーゼラ単独療法で高い効果が期待できる。有効な治療選択肢がなく、無治療や現状維持を目指していたCLL患者さんに対しても積極的に治療が検討できる新たな治療選択肢となる」と期待を示した。

(ケアネット 金沢 浩子)