妊娠線は明確な発現機序は明らかになっていないが、一度生じると治療は困難で、QOLに影響する。妊娠線の予防のため、保湿剤がよく用いられているが、これまでこうした予防策とQOLの関係については不明のままであった。京都大学の山口 琴美氏らは、妊娠線の予防を実施している中部地方の日本人妊婦を対象に横断調査を行い、保湿の効果とQOLについて評価した。
その結果、保湿剤の使用により、角質層部位の水分含有量は増加するものの、妊娠線の予防には結びつかなかったこと、その一方で、妊娠線が出現した被験者であっても、妊娠線の予防策の実施がQOLに影響したことを報告した(Midwifery誌2013年8月17日掲載報告)。
4つのクリニックから、出産前の検査により妊娠36週の妊婦156人が抽出された。そのうち、83人は初産婦、73人は経産婦であった。自己記入式アンケート、Davey's scoreによる妊娠線の重症度、Skindex29による皮膚疾患特異的QOLが評価された。妊婦の腹部の角質層水分含有量は、皮膚角層水分量測定器を用いて測定された。
主な結果は下記のとおり。
・37.8%の被験者で妊娠線が出現した。
・被験者のうち121人(77.6%)が妊娠線予防のため、クリームやローション(またはその両方)を使用していた(初産婦76人、経産婦45人)。
・腹部の角質層水分含有量は、クリームやローション使用後に有意に増加した(p=0.001)。
・妊娠線出現の有無および妊娠線の重症度と、予防策の実施や腹部の角質層水分含有量との間に相関はみられなかった(それぞれp=0.330、p=0.8535)。
・予防策を実施した被験者では、実施しなかった被験者に比べて、Skindex29の感情面のQOL値が高値であった(p=0.002)。
・妊娠線が生じた被験者は、妊娠線ができなかった被験者に比べて、Skindex29の感情面のQOL値が低値であった(p=0.045)。
・一方で、予防策を実施した被験者では、妊娠線の有無にかかわらず、Skindex29の感情面のQOL値は維持された。
(ケアネット 森 幸子)