小腸用カプセル内視鏡検査(CE)は、門脈圧亢進症における小腸病変のスクリーニングだけでなく、F2/F3およびLs/Lmの食道静脈瘤、胃体部の門脈圧亢進症性胃症の診断においても信頼性が高いことが、広島大学大学院 消化器・代謝内科の青山 大輝氏らによる研究で明らかになった。Journal of gastroenterology and hepatology誌オンライン版2013年8月23日号の報告。
門脈圧亢進症における小腸病変のスクリーニングに対するCEの有効性が、いくつか報告されている。しかし、胃食道病変のスクリーニングに対する有効性を検討した報告は少ない。そこで、本研究では、CEが門脈圧亢進症における胃食道病変の検出に有用であるかどうかを評価した。
対象は門脈圧亢進症患者119例。全例、食道胃十二指腸内視鏡検査を受けた上でCEを行い、門脈圧亢進症の合併症である食道静脈瘤、胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃症の診断率を評価した。また、静脈瘤の形態、占拠部位、重症度、門脈圧亢進症性胃症の範囲ごとに診断率を評価した。
主な結果は以下のとおり。
<食道静脈瘤>
・食道胃十二指腸内視鏡検査により食道静脈瘤と診断されたのは、71例であった。そのうち、CEでも食道静脈瘤と診断できたのは72%(71例中51例)であった。
・CEによる食道静脈瘤の形態別の診断率は、F1(直線的で細い)よりもF2(連珠状で中等度)/F3(結節状あるいは腫瘤状)で有意に高かった(87% vs 61%、p=0.03)。
・CEによる食道静脈瘤の占拠部位別の診断率は、Li(下部)よりもLs(上部)/ Lm(中部)で有意に高かった(85% vs 55%、p=0.01)。
<胃静脈瘤>
・食道胃十二指腸内視鏡検査により胃静脈瘤と診断されたのは、29例であった。そのうちCEでも胃静脈瘤と診断できたのはわずか1例であった(29例中1例)。
<門脈圧亢進症性胃症>
・食道胃十二指腸内視鏡検査により門脈圧亢進症性胃症と診断されたのは35例であった。そのうち、CEでも門脈圧亢進症性胃症と診断できたのは69%(35例中24例)であった。
・門脈圧亢進症性胃症の診断率は、重症群と軽症群で有意な差を認めなかった(重症群82% vs 軽症群 63%、p=0.44)。
・CEによる門脈圧亢進症性胃症の占拠部位別の診断率は、胃底部よりも胃体部で有意に高かった(胃体部100% vs 胃底部48%、p=0.0009)。
以上の結果より、CEは、門脈圧亢進症におけるF2/F3および上部/中部の食道静脈瘤、胃体部の門脈圧亢進症性胃症の診断において信頼性が高いことが明らかになった。
(ケアネット 武田 真貴子)