血清鉄(sFe)の値は喫煙に対する感受性のバイオマーカーとなりうることが山形大学の柴田 陽光氏らにより報告された。PLoS One誌オンライン版2013年9月9日号の掲載報告。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙習慣のある高齢者では一般的な疾患である。しかし、タバコ煙の曝露期間に応じて呼吸機能が低下する、喫煙に対する感受性の高い人々がいる一方で、呼吸機能が低下しない高齢者もいる。しかしながら、これまで、こうした喫煙に対して感受性のない人々に関する研究はあまりなかった。
本研究では、喫煙しているにもかかわらず、肺の健康状態が維持されている人々を識別するバイオマーカーを同定することを目的とした。
2004年~2006年に山形県高畠町で定期健康診断を受けた3,257人を対象に、血液のサンプリングとスパイロメトリーを実施した。このうち、(1)年齢が70歳以上(2)ブリンクマン指数(1日の喫煙本数×喫煙年数)が600以上(3)喫煙歴が30年以上、の3つに該当する117人の喫煙者を対象とした。喫煙感受性なしの定義はFEV1(1秒量)/FVC(努力性肺活量)≧0.7かつFEV1%predicted(1秒量対予測値)≧80とした。
主な結果は以下のとおり。
・喫煙感受性のないグループは感受性のあるグループに比べ、ベースラインの血清鉄(sFe)の値が高かった。
・男性では、血清鉄(sFe)の値が低いとFEV1/FVCも低かった。
・男性では、呼吸機能の測定値と血清鉄(sFe)の値の間に明らかな関連が認められた。
・多重線形回帰分析においても、他の臨床的な因子とは独立して、血清鉄(sFe)が呼吸機能の値の予測因子となることが明らかとなった。
・血清鉄の値はFEV1の低下に対する予測因子にもなっていた。
(ケアネット 鎌滝真次)