ドーパミン活性レベルの維持に関与する遺伝子多型を特定:弘前大 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2013/12/05 弘前大学大学院医学研究科の土嶺 章子氏らは、認知機能測定の指標として、カテコール-O-メチルトランスフェラーゼ(COMT)遺伝子Val158MET多型が有用であることを明らかにした。COMTはドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリンなどの代謝酵素で、ドーパミン代謝経路の主成分である。今回の検討で、同遺伝子多型がドーパミン活性の最適レベルを維持しているという仮説を支持する知見も得られたという。PLoS One誌2013年11月号の掲載報告。 先行研究において、COMT Val158MET多型は、統合失調症患者と健常者の前頭葉認知機能における差異と関連していることが示されていた。また、いくつかの試験で、METアレルが認知機能の測定における、より良好なパフォーマンスと関連していることも示されていた。そこで研究グループは、健常対照149例と統合失調症患者118例を対象に、COMT Val158MET多型が認知機能と関連しているかについて調べた。認知機能(言語記憶、ワーキングメモリ、運動機能、注意、実行機能、言語流暢性など)は、統合失調症認知機能簡易評価尺度日本語版(BACS-J)にて評価し、ANOVA法と重回帰分析法を用いて、COMT Val158MET多型とBACS-Jとの関連を調べた。 主な結果は以下のとおり。 ・健常対照群において、異なる3つのCOMT Val158MET遺伝子多型(val/val、val/met、met/met)の間に、実行機能スコア(ロンドン塔テストによる)の有意差がみられることが明らかになった(p=0.023)。 ・事後解析の結果、実行機能スコアについて、val/val群(18.6±2.4)と他の2群との間に、それぞれ有意差が認められた[対val/met群(17.6±2.7、p=0.027)、対met/met群(17.1±3.2、p=0.024)]。 ・重回帰分析の結果、実行機能は、Val158Met多型と有意に関連していることが明らかになった(p=0.003)。しかし、統合失調症患者において、あらゆる認知領域においてCOMTの影響を示すエビデンスはみつからなかった。 ・著者は、「これらのデータは、COMT Val158MET多型は、ドーパミン活性の最適レベルを維持するという仮説を支持するものであった。さらなる大規模かつ薬物療法有無別の患者を組み込んだ試験を行い、今回の知見を確認する必要がある」と結論している。 関連医療ニュース 統合失調症の実行機能障害に関与する遺伝子を発見:獨協医大 統合失調症の発症に、大きく関与する遺伝子変異を特定/a> 統合失調症の治療ターゲット、新たな遺伝要因を特定 (ケアネット) 原著論文はこちら Tsuchimine S et al. PLoS One. 2013 Nov 25;8(11):e76763. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 価値ある研究だが、国による医療事情の違いへの考慮が必要(解説:野間重孝氏)(2025/02/24) 統合失調症に対するアリピプラゾール併用による糖脂質代謝への影響〜メタ解析(2025/02/24) イサツキシマブ、未治療の多発性骨髄腫に適応追加/サノフィ(2025/02/24) フロスの使用に脳梗塞の予防効果?(2025/02/24) 重度の感染症による入院歴は心不全リスクを高める(2025/02/24) 冷水浸漬はある程度の効果をもたらす可能性あり(2025/02/24) アスピリンはPI3K経路に変異のある大腸がんの再発リスクを低下させる/ASCO-GI(2025/02/24) 日本人の食事関連温室効果ガス排出量と死亡リスクにU字型の関連(2025/02/24)