B型肝炎ウイルス(HBV)の感染既往があり、生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)を投与している慢性関節リウマチ(RA)患者のHBV再活性化率を検討したところ、5.3%に再活性化を認めたものの、重症肝炎に至った症例はなかったことが、自治医科大学の中村 潤氏らによる研究で明らかになった。このことから、生物学的DMARDsは、HBV感染既往のあるRA患者にとって、安全に使用可能な薬剤であると考えられる。International journal of rheumatic diseases誌オンライン版2014年4月4日号の報告。
HBV感染既往者へ免疫抑制剤や抗がん剤などを投与すると、HBVと宿主の免疫学的均衡が破綻し、HBV再活性化を起こすことがある。HBV再活性化により発症したB型肝炎は重症化しやすく、致死的な転帰に至る(de novo B型肝炎)。
本研究では、自治医科大学附属病院 アレルギー・リウマチ科において、2010年7月から2012年12月まで生物学的DMARDsで治療を行ったHBV感染既往のあるRA患者をレトロスペクティブに検討し、HBV再活性化率を調査した。B型肝炎コア抗原とB型肝炎表面抗原、またはそのどちらかの抗体を持つ患者を「HBV感染既往あり」とし、それらの患者のカルテからHBV-DNA値を含む臨床データを取得して分析した。
主な結果は以下のとおり。
・試験期間中、生物学的DMARDsによる治療を行ったRA患者は251例であった。
・HBVワクチン接種を行った6例、HBV表面抗原陽性の1例は試験から除外した。
・残りの244例中、57例の患者(23.4%)にHBVの感染既往を認めた。
・この57例を、2ヵ月~27ヵ月(中央値18ヵ月)追跡し、HBV-DNAの検査を2~27回(中央値7回)行った。
・HBV-DNAは、3例(5.3%)の患者(トシリズマブ投与の2例、エタネルセプト投与の1例)で検出されたが、3例ともHBV-DNA値は定量限界を下回っていた(< 2.1 log copies/mL)。
・3例とも生物学的DMARDsの投与を継続し、肝機能正常を維持したところ、HBV-DNA値は数ヵ月以内に再び陰性となった。
(ケアネット 武田 真貴子)