2つの新規不眠症治療薬、効果の違いは 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2014/10/15 米国・メルク社のAnthony L Gotter氏らは、睡眠導入について、標準ケアの非ベンゾジアゼピン系ガンマアミノ酪酸受容体A(GABAA)受容体モジュレーター、エスゾピクロンとデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)であるスボレキサントを比較する前臨床試験を行った。結果、DORAはノンレム睡眠とレム睡眠の両方について、同程度の割合および大きさで促進することが示されたという。結果を踏まえて著者は、DORAは睡眠障害からの回復を楽にする効能がある可能性を報告した。BMC Neuroscience誌オンライン版2014年9月22日号の掲載報告。 現行の標準的な不眠症治療薬のGABAA受容体作動薬には、睡眠を促進する効果とともに、中枢神経系の抑うつを促すことが知られている。一方DORAは、オレキシン神経ペプチドの覚醒推進効果を阻害することで眠気を引き起こす、不眠症治療の新たな作用機序を有している。研究グループはさまざまな前臨床種試験により、両者の治療メカニズムの、睡眠構造への影響を調べ、定量的脳波スペクトルプロファイルを比較した。 主な所見は以下のとおり。 ・マウス、ラット、犬、アカゲザルにおいて、DORA-22を活動期に投与することによる睡眠構造への影響を確認した。それらの影響は、覚醒活性の減弱が、ノンレム睡眠とレム睡眠両方の増加とともに認められるというものであった。 ・エスゾピクロンは、ラットとアカゲザルにおいて睡眠を促進したが、レム睡眠の抑制が示された。しかし、マウスではレム睡眠の増加が示され、犬では反対に覚醒の促進が認められた。 ・DORA-12投与では、ラットにおいてノンレム睡眠とレム睡眠の促進が同様に認められた。その大きさはほぼ同一で、正常な睡眠期においてみられた。 ・一方でエスゾピクロンは、その活動期において認められるよりも低くレム睡眠を抑制した。 ・ラットへのDORA-12において示された定量的脳波の変化は、正常な睡眠パターンに似ていたが、エスゾピクロンでは、正常な活動期または非活動期(睡眠期)スペクトラムの異なる変化がみられた。 ・両薬とも、オレキシン神経系が欠損した遺伝子組み換えラットの試験では、オレキシンとGABAモジュレートによる睡眠促進機序(GABAA受容体モジュレーターに特異的なレム睡眠抑制を除く)で部分的な重複を示した。 ・レム欠損のマウスにおいて、エスゾピクロンはさらにレム睡眠を抑制したが、DORA-22はレム睡眠を増加するなど回復を助長した。 ・以上、DORAは非レム睡眠とさらに重要とされるレム睡眠を促進することが示された。その割合および大きさは同程度で、あらゆる哺乳類の動物モデルの正常睡眠期にみられた。 ・治療メカニズムの共通点は限定的であるが、オレキシンのシグナリングは、GABAA受容体モジュレーターによって示されるレム睡眠の抑制への関与がみられなかった。 ・著者は、「DORAの作用機序は、睡眠障害を楽に回復するのに効果的な可能性がある」とまとめている。 関連医療ニュース 新規不眠症治療薬は安全に使用できるか 期待の新規不眠症治療薬、1年間の有効性・安全性は 不眠の薬物療法を減らすには 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Gotter AL, et al. BMC Neurosci. 2014; 15: 109. [Epub ahead of print] 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) 関連記事 オレキシン受容体拮抗薬を使用している日本人不眠症患者の特徴 医療一般 日本発エビデンス(2023/04/13) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 前糖尿病の肥満へのチルゼパチド、糖尿病発症リスク93%減/NEJM(2024/11/22) 生後2年間のデジタル介入で肥満リスク低下/JAMA(2024/11/22) BRCA1/2病的バリアント保持者における乳がん後の二次原発がんリスク/JCO(2024/11/22) 家庭内のインフル予防、手指衛生やマスクは効果ある?~メタ解析(2024/11/22) 統合失調症患者に対する抗精神病薬の投与経路変更の影響は〜メタ解析(2024/11/22) 「週末戦士」でも脳の健康に利点あり(2024/11/22) 減量薬のアクセス拡大が年4万人以上の米国人の命を救う可能性(2024/11/22) 抗てんかん薬の早期処方が認知症リスクの低さと関連(2024/11/22) [ あわせて読みたい ] トレンド・トーク『肺がん』(2024/06/11) Dr.大塚の人生相談(2024/02/26) 災害対策まとめページ(2024/02/05) IBD(炎症性腸疾患)特集(2023/09/01) 旬をグルメしながらCVIT誌のインパクトファクター獲得を祝福する【Dr.中川の「論文・見聞・いい気分」】第63回(2023/08/29) エキスパートが教える痛み診療のコツ(2018/10/11) 医療者向け『学校がん教育.com』(2022/12/01) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) アトピー性皮膚炎・乾癬特集まとめインデックス(2022/11/11) 診療所売買に関心がある方に!マンガ連載をまとめた冊子プレゼント【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第43回(2022/10/17)