高純度EPA製剤の有用性を検討したJELIS*(Japan EPA Lipid Intervention Study)のサブ解析が、雑誌『Stroke』のオンライン版に掲載された(1)。今回発表されたサブ解析は、脳卒中の発症抑制効果を調べたものである。結果、脳卒中の初発予防に関して、EPA投与群で8,841例中133例(1.5%)、EPA非投与群で8,862例中114例(1.3%)の発症率となり、統計学的な有意差は認められなかった。一方、脳卒中の再発予防に関しては、EPA投与群で485例中33例(6.8%)、EPA非投与群で457例中48例(10.5%)の発症率となり、相対リスクは20%減少した。
わが国では、降圧療法の普及などにより、脳卒中の死亡者数が大きく減少したことは有名である。しかし、ここ数年その減少は下げ止まり、再び上昇に転じる様相も見せている。
また脳卒中の慢性期患者は増加し、「寝たきりの原因の第一位」、「医療費第一位」という新たな問題を生み出している。そのようなことから、現在、降圧に次ぐ新たな治療手段が求められていた。
これまで、アトルバスタチンを用いたSPARCL(Stroke Prevention by Aggressive Reduction of Cholesterol Lowering)で、脳卒中の再発抑制が認められたことから、新たな脳卒中再発抑制手段としてアトルバスタチンによるLDLコレステロールの管理が期待されていた(2)。
今回発表されたJELISサブ解析の結果は、アトルバスタチンに続き、脳卒中再発予防に対する新たな手段としての「高純度EPA製剤」を提案したと言えるのではないだろうか。
*JELIS(Japan EPA Lipid Intervention Study)
日本人の高コレステロール血症18,645例(1次予防:14,931例、二次予防:3,664例)を対象とした無作為化非盲検化比較試験で、スタチン療法に加え、EPAの投与により心血管イベントの発症が抑制されるかを検討した試験。約5年間の追跡調査の結果、1次エンドポイント(主要な冠動脈イベント)はEPA投与群で有意に19%減少した(3)。既にスタチンが投与されている患者に対してもEPAを投与することにより、さらに心血管イベントを抑制できることを示した。
(1) Tanaka K et al. Stroke. 2008, [Epub]
(2) Amarenco et al. N Engl J Med. 2006; 355: 549-559
(3) Yokoyama M et al. Lancet. 2007; 369: 1090-1098
(ケアネット 鈴木 渉)