オーストラリア・メルボルン大学のDaryl Efron氏らは、母親の注意欠如多動症(ADHD)の症状と、その子供の機能アウトカムとの関連について、コミュニティベースの小児サンプルを用いて調査を行った。Archives of disease in childhood誌オンライン版2018年1月9日号の報告。
本コホート研究では、メルボルンの学校に通学しているADHD児および健常対照児を対象に、複合スクリーニング(コナーズ3 ADHD指標)とケースカンファレンス(Diagnostic Interview Schedule for Children Ver.4)を用いて評価を行った。分析には、ADHD児117例、健常対照児149例が含まれた。小児の平均年齢は8.9歳。母親のADHD症状(成人ADHDの症状重症度を把握するための評価尺度:CAARS)と子供のアウトカム(ADHD重症度、QOL、学力、社会的感情機能)を測定した。
主な結果は以下のとおり。
・ADHD児を有する母親は、健常対照児の母親と比較し、臨床的にADHD症状が高かった(調整分析:18.0% vs.2.0%、p<0.001)。
・母親らの報告によると、ADHD児と健常対照児との比較において、母親のADHD症状の上昇は、子供のADHD症状の重症度の増大(p=0.01 vs.p=0.003)、低いQOL(p=0.003 vs. p=0.003)との関連が認められた。
・さらに母親のADHD症状の上昇は、健常対照児における親の感情的な問題、仲間の問題、全般的な障害スコアの増加との関連が認められた(すべてのp<0.01)。
著者らは「母親のADHD症状は、ADHD症状の重症度の増大、QOLの低下と関連していた。ADHDでない小児では、親の感情的および社会的機能とのネガティブな関連が認められた。子供の評価においては、母親のADHD症状を考慮し、成人に対応するサービスの紹介を検討する必要がある」としている。
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(鷹野 敦夫)