青少年の非精神病性の破壊的行動障害の治療において、抗精神病薬は一般的に使用されている。米国・セントルイス・ワシントン大学のGinger E. Nicol氏らは、青少年の初回抗精神病薬曝露と代謝への影響を検討するため、身体計測とインスリン感受性の標準的な評価を用いて調査を行った。JAMA psychiatry誌オンライン版2018年6月13日号の報告。
1つ以上の精神疾患および臨床的に有意な攻撃性を有すると診断され、抗精神病薬治療が考慮された、ミズーリ州セントルイスの抗精神病薬を処方されていない青少年(6~18歳)を対象とし、ランダム化臨床試験を実施した。対象は、2006年6月12日~2010年11月10日に登録され、小児の破壊的行動障害に一般的に使用される3種類の経口抗精神病薬のいずれかを投与する群にランダムに割り付けられ、12週間の評価を受けた。データ解析は、2011年1月17日~2017年8月9日に実施された。主要アウトカムは、全体脂肪率(DXA法[二重エネルギーX線吸収法]で測定)と筋肉のインスリン感受性(安定同位体でラベルされたトレーサーによる高インスリンクランプを介して測定)とした。副次的アウトカムは、腹部肥満(MRIで測定)、脂肪および肝組織のインスリン感受性(トレーサーによるクランプを介して測定)とした。
主な結果は以下のとおり。
・対象は144例(男性:98例[68.1%]、平均年齢[SD]:11.3[2.8]歳)、アフリカ系米国人が74例(51.4%)、ベースライン時の過体重または肥満患者は43例(29.9%)であった。
・アリピプラゾール群49例、オランザピン群46例、リスペリドン群49例にランダムに割り付けられ、12週間の治療が行われた。
・ベースラインから12週目までの主要アウトカムについて、DXAによる全体脂肪率は、リスペリドン群1.18%増加、オランザピン群4.12%増加、アリピプラゾール群1.66%増加であり、リスペリドン群およびアリピプラゾール群よりもオランザピン群において有意に大きかった(治療相互作用による時間:p<0.001)。
・ベースラインから12週目までのインスリン刺激による骨格筋の糖取り込み率の変化は、リスペリドン群2.30%増加、オランザピン群29.34%減少、アリピプラゾール群30.26%減少であり、薬剤間に有意な差は認められなかった(治療相互作用による時間:p<0.07)。
・インスリン感受性の主要な測定値は、プールされた試験サンプルにおいて、12週間有意に減少した。
・ベースラインから12週目までの副次的アウトカムについては、リスペリドン群またはアリピプラゾール群よりもオランザピン群において、皮下脂肪の有意な増加が認められた(治療による時間:p=0.003)。
・すべての群において、行動の改善が認められた。
著者らは「青少年に対する12週間の抗精神病薬治療中に、脂肪量およびインスリン感受性の有害な変化が認められ、オランザピンにおいて最も大きな脂肪量の増加が認められた。このような変化は、治療に起因するものであると考えられ、早期の心筋代謝性罹患率および死亡率のリスクと関連している可能性がある」とし、「青少年に対する抗精神病薬使用はリスクとベネフィットを考慮する必要がある」としている。
■関連記事
破壊的行動障害に対する非定型抗精神病薬使用
小児攻撃性に対する抗精神病薬の効果~メタ解析
第二世代抗精神病薬によるインスリン分泌障害の独立した予測因子は
(鷹野 敦夫)