進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

提供元:ケアネット

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公開日:2020/10/13

 

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。

 本試験は、わが国における多施設共同非盲検無作為化比較第II相試験のJBCRG-M04(BOOSTER)試験。主要評価項目である無作為化から治療戦略遂行不能までの期間(time to failure of strategy:TFS)については、wPTX+BV群8.87ヵ月、ET+BV群16.82ヵ月で有意に延長した(ハザード比:0.51、95%信頼区間:0.34~0.75、p<0.001)ことを、2019年のサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2019)で同氏が報告している。

・対象:ER陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法としてwPTX+BV療法を4~6サイクル施行後、SD以上の効果が認められた患者
・介入群:wPTXを休薬しET+BVに置き換え、規定イベント後にwPTX+BVを再導入する群(ET+BV群)
・対照群:wPTX+BV継続治療群(wPTX+BV群)
・評価項目
[主要評価項目]TFS
[副次評価項目]全生存期間、無増悪生存期間、安全性、PROなど
※PROの評価は、無作為化時および無作為化後2ヵ月、4ヵ月、1年、2年に、FACT-B、EQ-5D、患者用末梢神経障害質問票(PNQ)、HADS、cancer fatigue scale(CFS)を使用

 主な結果は以下のとおり。

・1次化学療法が奏効した125例について、wPTX+BV群63例、ET+BV群62例に割り付けた。
・mixed-effect models for repeated measures(MMRM)を用いた解析では、FACT-Bのtrial outcome indexに有意差が認められ(p=0.004)、PWBの平均変化は2ヵ月後(p=0.015)および4ヵ月後(p=0.028)に、ET+BV群がPTX+BV群より有意に優れていた。
・CIPNについては、1年後における重度の運動神経障害の割合がET+BV群でwPTX+BV群よりも低かった(5.1% vs. 26.1%、p=0.017)。
・CFSでも有意差が認められ(p=0.048)、そのうち精神的倦怠感のスコアの平均変化は、2ヵ月後(p=0.006)および4ヵ月後(p=0.010)でET+BV群がwPTX+BV群より有意に優れていた。

 佐治氏は、「化学療法継続で蓄積毒性が懸念される症例において、ET+BVの維持療法は健康関連QOLの点で1つの選択肢となるだろう」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)