11月10日、全国がんセンター協議会加盟32施設の診断治療症例について、部位別5年生存率、10年生存率の最新データが公表され、全部位の5年生存率は68.9%、10年生存率は58.9%だった。部位別にみると、10年生存率ランキングが最も高かったのは前立腺がんで99.2%、最も低かったのは膵臓がんで6.6%だった。
がん種別に10年生存率を最新版と過去とを比較できる
本調査は国立がん研究センターの「施設をベースとしたがん登録情報の収集から活用・情報発信までの効果と効率の最大化モデル構築のための研究」研究班が、全国がんセンター協議会の協力を得て、加盟32施設の診断治療症例について部位別5年生存率、10年生存率を集計したもの。同研究班は、1997年診断症例より部位別臨床病期別5年生存率、1999年診断症例より施設別5年生存率を公表し、2012年からはグラフを描画する生存率解析システム「
KapWeb」を開設、2016年からはより長期にわたる生存率を把握するため10年生存率を公表している。
がん診療連携拠点病院の中のがんセンターなど、限られた施設のデータではあるが、10年生存率を最新版と過去とを比較できるのは現時点で本調査のみとなっている。また、がん種、病期、治療法などさまざまな条件設定での10年生存率、診断からの経過日数を指定したうえでのサバイバー生存率をグラフ描画できるのは現時点でKapWebのみとなっている。
<データベース概要>
対象施設:全国がんセンター協議会加盟32施設(2021年現在)
収集症例:1997~2013年までに全がん協加盟32施設で診断治療を行った87万6,679症例
集計対象:
[5年生存率]2011~13年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした15万1,568症例
[10年生存率]2005~08年に診断治療を行った症例のうち、集計基準を満たした12万649症例
<がん種別5年生存率>
全部位および部位別の5年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2010~12年症例の5年相対生存率。
・全部位:68.9%(68.6%)
・食道:50.1%(48.9%)
・胃:75.4%(74.9%)
・大腸:76.8%(76.5%)
・肝:38.6%(38.1%)
・胆のう・胆管:28.7%(28.9%)
・膵臓:12.1%(11.1%)
・喉頭:80.4%(82.0%)
・肺:47.5%(46.5%)
・乳(女):93.2%(93.6%)
・子宮頸:75.9%(75.7%)
・子宮体:86.2%(86.3%)
・卵巣:64.3%(65.3%)
・前立腺:100.0%(100.0%)
・腎臓など:71.0%(69.9%)
・膀胱:67.7%(68.5%)
・甲状腺:93.0%(92.6%)
<がん種別10年生存率>
全部位および部位別の10年相対生存率は以下のとおり。※( )内の数値は、前回2004~07年症例の10年相対生存率。
・全部位:58.9%(58.3%)
・食道:34.4%(31.8%)
・胃:67.3%(66.8%)
・大腸:69.7%(68.7%)
・肝:17.6%(16.1%)
・胆のう・胆管:19.8%(19.1%)
・膵臓:6.6%(6.2%)
・喉頭:64.2%(63.3%)
・肺:33.6%(32.4%)
・乳(女):87.5%(86.8%)
・子宮頸:68.2(68.7%)
・子宮体:82.3%(81.6%)
・卵巣:51.0%(48.2%)
・前立腺:99.2%(98.8%)
・腎臓など:63.3%(62.8%)
・膀胱:63.0%(61.1%)
・甲状腺:86.8%(85.7%)
5年生存率および10年生存率ともに、前回公表データと比較した場合多くの部位で生存率の上昇を認める一方、一部低下している部位も含めて、臨床的に意味のある変化は認められていない。
(ケアネット 遊佐 なつみ)