S-1による術後補助化学療法は胃がん、膵がんにおいて有用性が示され、日本における標準療法となっている。このS-1術後補助化学療法が胆道がんにおいても有用であるかを見たJCOG1202試験の結果を、第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)で戸高 明子氏(静岡県立静岡がんセンター 消化器内科)が発表した。
胆道がんに対してS-1術後補助化学療法が標準治療になる
[JCOG1202:ASCOT試験]
・対象:根治切除術が行われた胆道がん患者(PS0~1)
・試験群:手術単独群と術後補助化学療法群(S-1を40mg/m
2、1日2回、4週内服し2週休薬を1コースとして計4コース)に1対1で無作為に割り付け
・評価項目:
[主要評価項目]全生存期間(OS)
[副次評価項目]無再発生存期間(RFS)、完了率、安全性
S-1術後補助化学療法が胆道がんにおいても有用であるかを見たJCOG1202試験の主な結果は以下のとおり。
・2013年9月~2018年6月に国内38施設から440例が登録され、手術単独群に222例、術後補助化学療法群に218例が組み入れられた。
・主要評価項目の3年生存割合は、手術単独群67.6(61.0~73.3)%に対し、術後補助化学療法群は77.1(70.9~82.1)%、ハザード比 0.694(95%信頼区間:0.514~0.935、p=0.008)であり、術後補助化学療法群の優位性が示された。全サブグループで同様の結果となった。
・副次評価項目のRFSは、手術単独群50.9(44.1~57.2)%に対し、術後補助化学療法群は62.4(55.6~68.4)%、ハザード比 0.797(0.613~1.035)であり、術後補助化学療法群の優位性は示されなかった。
・術後補助化学療法群の完了率は72.5%、有害事象としては軽度の骨髄抑制、下痢、疲労、食欲不振、皮疹などが多く認められたが、Grade3以上は1~3%程度であり、認容性は良好であった。
戸高氏は「本結果によって、根治切除術を受けた胆道がんに対し、S-1による術後補助化学療法が標準治療になると考えられる。有効性が示されなかったRFSにおいても生存曲線の差異は認められ、長期追跡が必要だ。根治切除後も再発リスクが高い胆道がんにおいて、術後補助化学療法の有用性が立証されたのは大きな一歩であり、S-1は日本で既に多くのがん種に広く用いられており、提供体制もスムーズだろう」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)