オミクロン株BA.2、コロナ治療薬の有効性は?/NEJM

現在、オミクロン株亜種BA.2は、デンマーク、インド、フィリピンなどの地域において、オミクロン株BA.1系統から置き換わり、主流になっている。近いうちに日本国内でもBA.1からBA.2に置き換わることが予想されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、オミクロン株BA.2に対し、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでの有効性を検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年3月9日号のCORRESPONDENCEに掲載。
研究対象となった薬剤は、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。日本で承認済みの抗体薬は、イムデビマブとカシリビマブの併用(商品名:ロナプリーブ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用])となる。
今回の試験では、7種類の抗体薬(etesevimab、bamlanivimab、イムデビマブ、カシリビマブ、tixagevimab、cilgavimab、ソトロビマブ)の単剤および併用について、オミクロン株BA.2の培養細胞における感染を阻害(中和活性)するかどうかを、FRNT50(ライブウイルス焦点減少中和アッセイで50%のウイルスを中和する血清希釈)を用いて評価した。また、3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)について、IC50(50%阻害濃度)を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・etesevimab、bamlanivimabの単剤使用では、最も高いFRNT50値(>5万ng/mL)でも、オミクロン株BA.2に対する中和活性は見られなかった。併用では、最も高いFRNT50値(>1万ng/mL)でも、中和活性は見られなかった。この結果は、オミクロン株BA.1とその亜種のBA.1.1に対しても同様だった。
・イムデビマブの単剤使用では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は見られなかったが、BA.2に対して中和活性があることが確認された。
・カシリビマブの単剤使用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。
・イムデビマブとカシリビマブの併用では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は見られなかったが、BA.2に対して中和活性があることが確認された。ただし、初期のSARS-CoV-2や、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株より、FRNT50値が43.0~143.6倍高かった。
・tixagevimab、cilgavimabの単剤使用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。
・tixagevimabとcilgavimabの併用では、BA.2に対して中和活性があることが確認された。ただし、初期のSARS-CoV-2や、アルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株より、FRNT50値が1.4~8.1倍高かった。
・ソトロビマブの前駆体では、BA.1とBA.1.1に対する中和活性は低く、BA.2に対する中和活性はそれ以下で、FRNT50値が12.2〜49.7倍高かった。
・レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビルの各抗ウイルス薬では、BA.2に対し、初期のSARS-CoV-2やこれまでの変異株と同等の効果を示した。
研究チームは、本試験の結果から、抗体薬のうちイムデビマブとカシリビマブの併用、tixagevimabとcilgavimabの併用、ソトロビマブは、中和活性は認められるものの、初期の変異株よりも、オミクロン株BA.2に対する効果が劣っていると述べている。また、本試験で使用した抗ウイルス薬がBA.2に対して実際に有効かどうかは、臨床研究が必要であるとしている。
(ケアネット 古賀 公子)
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