体外受精(IVF)で授かった子供の学齢期の発達と教育の成果は、自然妊娠の子供と同等であることを、オーストラリア・メルボルン大学のAmber L. Kennedy氏らが明らかにした。著者らは、「この結果は、現在および将来の両親と臨床医に大きな安心感を与えるものである」とまとめている。PLOS Medicine誌2023年1月24日号の報告。
体外受精は生体外での一般的な受胎の方法であるが、生まれた子供への長期的な影響を理解することは重要である。研究者らは、体外受精による妊娠が小学校在学中の児童期の発達および教育の成果に及ぼす影響を、自然妊娠と比較し明らかにする目的で本研究を行った。
体外受精と発達上の脆弱性の因果関係を評価
対象者は、自然妊娠または体外受精で妊娠した単胎児で、2005年から2014年の間にオーストラリアのビクトリア州で生まれた41万2,713人の児童である。4~6歳の発達上の脆弱性(developmental vulnerability)、7~9歳の教育の成果を2つのアウトカム指標で評価した。1つ目の4~6歳の発達上の脆弱性は、オーストラリア幼児発達人口調査(AEDC)を用いて評価し(17万3,200人)、身体の健康と幸福感、社会性、感情的成熟、言語と認知スキル、コミュニケーションスキルと一般知識の5つの発達領域のうち2つ以上で10パーセンタイル未満のスコアが認められた場合と定義した。2つ目の7~9歳の教育の成果は、National Assessment Program-Literacy and Numeracy(NAPLAN)のデータを用いて評価し(34万2,311人)、5領域(文法と句読法、読み、書き、スペル、計算能力)における総合zスコアで定義した。母集団の平均因果効果を推定するために、回帰調整を伴う逆確率加重を用いた。因果推論法を用いて、対象となる無作為化臨床試験を模した方法で観察データを分析した。州全体でリンクされた母親と子供の行政データも使用された。
体外受精による妊娠が小学校在学中の児童期の発達および教育の成果に及ぼす影響を、自然妊娠と比較した主な結果は以下のとおり。
・AEDC指標において、自然妊娠の子供と比較して、4~6歳の発達上の脆弱性のリスクに対する体外受精の因果関係はなく、調整リスク差は-0.3%(95%信頼区間[CI]:-3.7%~3.1%)、調整リスク比は0.97(95%CI:0.77~1.25)であった。
・7~9歳の時点で、NAPLANの総合zスコアに体外受精の因果関係はなく、体外受精による妊娠で生まれた子供と自然妊娠で生まれた子供の調整平均差は0.030(95%CI:-0.018~0.077)であった。
(ケアネット 溝口 ありさ)