転移乳がんへのDato-DXd、医師選択化療よりPFS延長(TROPION-Breast01)/ESMO2023

提供元:ケアネット

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公開日:2023/10/25

 

 化学療法の前治療歴のある手術不能または転移を有するHR陽性(+)/HER2陰性(-)の乳がん患者を対象とした第III相TROPION-Breast01試験の結果、抗TROP2抗体薬物複合体datopotamab deruxtecan(Dato-DXd)は、医師選択化学療法よりも有意に無増悪生存期間(PFS)を延長し、かつGrade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は半数以下であったことを、米国・Massachussetts General Hospital/Harvard Medical SchoolのAditya Bardia氏が欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)のPresidentialで報告した。

・対象:HR+/HER2-、1~2ラインの全身化学療法歴、内分泌療法で進行または不適、ECOG PS 0~1の手術不能または転移を有する乳がん患者 732例
・試験群:Dato-DXd(6mg/kg、3週ごと)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(Dato-DXd群:365例)
・対照群:医師が選択した化学療法(エリブリン、ビノレルビン、カペシタビン、ゲムシタビン)を進行または許容できない毒性が発現するまで継続(化学療法群:367例)
・評価項目:
[主要評価項目]盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、全生存期間(OS)
[副次評価項目]治験担当医評価によるPFS、安全性
・層別化因子:前治療のライン数、地域、CDK4/6阻害薬の治療歴の有無

 Dato-DXdは、第I相TROPION-PanTumor01試験において、手術不能または転移を有するHR+/HER2-の前治療歴のある乳がん患者において有望な活性を示している。今回は、グローバル第III相TROPION-Breast01試験の主要評価項目の1つであるPFSの結果が報告された。

 主な結果は以下のとおり。

・Dato-DXd群と化学療法群の年齢中央値は56歳(範囲:29~86)/54歳(28~86)、白人が49%/46%、アジア系が40%/41%、1ラインの前治療歴が63%/61%、CDK4/6阻害薬の治療歴ありが82%/78%、タキサン系and/orアントラサイクリン系の治療歴ありが90%/92%で、両群でバランスがとれていた。
・データカットオフ(2023年7月17日)時点の追跡期間中央値は10.8ヵ月で、Dato-DXdの93例と化学療法群の39例が治療を継続していた。
・主要評価項目であるBICRによるPFSは、Dato-DXd群6.9ヵ月(95%信頼区間[CI]:5.7~7.4)、化学療法群4.9ヵ月(95%CI:4.2~5.5)であり、Dato-DXd群で有意にPFSが改善された(HR:0.63[95%CI:0.52~0.76]、p<0.0001)。
・年齢、人種、ECOG PS、地域、前治療歴など、すべてのサブグループでDato-DXdのほうが良好なPFSを示した。
・奏効率(ORR)はDato-DXd群36.4%、化学療法群22.9%であった。
・OSは追跡期間中央値9.7ヵ月時点で未成熟であったが、Dato-DXd群で良好な傾向がみられている(ハザード比:0.84[95%CI:0.62~1.14])。OSの結果は引き続き解析を行う予定。
・Grade3以上のTRAEの発現率は、Dato-DXd群21%、化学療法群45%であった。Dato-DXd群では化学療法群よりも減量や投与中断につながるTRAEは少なかった。間質性肺疾患はDato-DXd群で9例(3%)に認められ、うち2例(1%)はGrade3以上であった。死亡は化学療法群で1例認められた。

 これらの結果より、Bardia氏は「TROPION-Breast01試験は主要評価項目を満たし、HR+/HER2-乳がん患者へのDato-DXdはPFSの有意かつ臨床的に意義のある改善を示した。サブグループにおけるPFSの改善と高いORRも得られている。OSも良好な傾向にある。安全性は管理可能で新たな安全性シグナルは確認されなかった。Dato-DXd群ではGrade3以上のTRAEの発現は化学療法群の半分以下であり、減量や投与中断も少なかった」としたうえで、「これらの結果は、Dato-DXdが転移乳がん患者に対する新たな治療オプションとなりうることを支持するものである」とまとめた。


 ディスカッサントを務めた米国・Memorial Sloan Kettering Cancer CenterのSarat Chandarlapaty氏は下記のようにコメントした。
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 この研究は、HR+で内分泌療法で進行または不適となった患者、および1回以上の全身化学療法を受けた患者を対象としているため、化学療法を受けた転移乳がん患者に対して、新しい化学療法かDato-DXdのどちらが効果的かということである。主要評価項目であるPFSはハザード比0.63で、Dato-DXd群では明確な改善があった。また、全体的には毒性が少なく、Grade3以上のTRAE、とくに血液毒性が少なかったことが報告されている。悪心と口内炎は重症ではないものの増加し、患者にとっては臨床的に重要かもしれない。

 HR+/HER2-乳がんにおいて、化学療法を1~2ライン行ったあとにDato-DXdを処方するのと、さらに化学療法を追加するのとどちらがよいか? 答えはDato-DXdとなった。しかし、私たちにはさらなる未解決の疑問がある。
1.Dato-DXd、sacituzumab govitecan、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のいずれがよいのか?
2.これら3つの抗HER2抗体薬物複合体のうち、別の薬剤で進行した後に有効性を示すものはあるか?
3.効くかもしれない分子標的薬よりも、Dato-DXdを処方したほうがよいのか?
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(ケアネット 森 幸子)