医師の燃え尽き防止、同僚のコーチングは役立つか?

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2024/05/22

 

 4月から医師の働き方改革がスタートし、労働時間の制約が強まるなか、医師の仕事における過度なストレスや燃え尽き症候群(バーンアウト)への対策は依然として課題であり、よりエビデンスに基づいたアプローチが求められている。医師がコーチングの訓練を受け、同僚に働きかけることで燃え尽き症候群を予防できるのかを検証した、米国・マサチューセッツ総合病院のStephanie B. Kiser氏らによる研究結果が発表された。JAMA Network Open誌2024年4月12日号掲載の報告。

 研究者らは、2021年8月5日~12月1日にMass General Physician Organization(マサチューセッツ総合内科医機構)に所属する医師のうち、希望者を対象とした単一施設無作為化臨床試験を行った。データ解析は2022年2~10月にかけて行われた。

 138人の参加者は3ヵ月間にわたってピアコーチによる6回のコーチングセッションを受ける介入群と、心身の健康に関する標準的な組織資源を使う対照群に無作為に割り付けられた。主要評価項目は、Stanford Professional Fulfillment Indexで測定した燃え尽き症候群の発生数であった。副次評価項目は職業的充実感、仕事が個人的関係に及ぼす影響、QOL、仕事への関与度、自己評価などであった。

 主な結果は以下のとおり。

・登録された医師138人のうち、67人が介入群に、71人が対照群に割り付けられた。参加者の多くが31~60歳(128人[93.0%])、女性(109人[79.0%])、既婚(108人[78.3%])、キャリア初~中期(平均12.0[SD 9.7]年)であった。
・介入群のうち、コーチとマッチングした52人が少なくとも1回のコーチングセッションを受けた。セッションの3ヵ月後には、介入群は対照群と比較して、燃え尽き症候群、対人関係の断絶、専門職としての充実感、仕事への関与度において統計的に有意な改善がみられた。
・対人関係の断絶は、介入群で平均30.1%減少し、対照群で4.1%増加した(絶対差-0.94、95%信頼区間[CI]:-1.48~-0.41、p=0.001)。
・燃え尽き症候群は、介入群で平均21.6%減少し、対照群で2.5%増加した(絶対差-0.79、95%CI:-1.27~-0.32、p=0.001)。
・専門職としての充実感は、対照群では変化がなかったのに対し、介入群では10.7%増加した(絶対差0.59、95%CI:0.01~1.16、p=0.046)。
・仕事への関与度は、介入群で6.3%増加し、対照群で2.2%減少した(絶対差0.33、95%CI:0.02~0.65、p=0.04)。
・自己評価は両群で増加したが、有意差はなかった。

 研究者らは、「専門的訓練を受けた仲間による個別コーチングが医師の燃え尽き症候群と対人離脱を減少させ、同時に専門家としての充実感と仕事への関与を向上させる効果的な戦略であることを示している」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)