新たな観察研究の報告により、うつ病発症予防に果物や野菜の摂取が重要な役割を果たすことが示唆されている。しかし、高齢者や低中所得国(LMIC)に関する研究は不足している。オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学のAnnabel P. Matison氏らは、果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関連を明らかにするため、LMICを含むさまざまなコホート研究を分析し、その結果のメタ解析を実施した。Journal of Affective Disorders誌2024年8月15日号の報告。
対象は、LMICでの4件のコホートを含む10件のコホートより抽出した非うつ病成人地域住民7,801例(平均年齢:68.6±8.0歳、女性の割合:55.8%)。果物と野菜の摂取量は、包括的な食品摂取頻度質問票、食品質問票短縮版、食事歴などにより自己申告で収集した。抑うつ症状の評価およびうつ病の定義には、検証済みの尺度およびカットオフ値を用いた。ベースライン時における果物や野菜の摂取量とフローアップ期間中(3〜9年)のうつ病発症との関連性を評価するため、Cox回帰を用いた。分析は、コホートごとに実施し、結果をメタ解析した。
主な結果は以下のとおり。
・4万258人年のフォローアップ期間中、うつ病を発症した対象者は1,630例(21%)であった。
・果物の摂取量が多いほど、うつ病発症リスクが低下した(ハザード比[HR]:0.87、95%信頼区間[CI]:0.77〜0.99、I2=4%)。
・野菜の摂取量とうつ病発症との関連は認められなかった(HR:0.93、95%CI:0.84〜1.04、I2=0%)。このことは、各コホートで測定法が異なり、本研究のサンプルサイズがこれまでの研究と比較し小さかったため、野菜摂取との関連性が検出されなかった可能性がある。
著者らは、「うつ病予防に対し、果物摂取の有用性は裏付けられたが、野菜については有意な関連性が認められなかった。低中所得国の高齢者を対象とした大規模コホートにおいて、標準化された測定法を用い、さまざまな果物や野菜について調査する必要がある」としている。
(鷹野 敦夫)